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ヒロインの姉に転生したので!  作者: ユナユナ
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第十一話 決着


「ワシがこの屋敷に来た理由を問うか、小娘。

なかなか胆力がある。実力は伴ってないが」


ひと言余計だが?!

褒めて落とすタイプってほんと無理!

メンタルが死ぬわ!


「公爵家たる我が家に侵入しといて、大した理由も無い方がいい度胸してるけどね」


足ガクブルだわ。

力の差もあるし。けれど、こいつは婚約者と違って殴れる!

頑張れ、私。話し合いより物理の方がまだマシでしょ。


「ふむ。筋は通すべきか。ワシの訪問、…別邸への襲撃はお前の父君の許可を得たもの。通報はできん」


「はっ?、父様が…」


「金さえ払えば子を危険に晒すことも厭わぬ親元に生まれたことを哀れには思うがな」


…お、?は。

父様??

家族を引き裂くだけでは飽き足らず、金で切り捨てたか。

あいつ、ホンマに攻略対象だったのか?クズすぎるんだが。絶対数年後の学園編で覚えてろよ。  


「ワシはシズイさまを新たなる族長として連れ戻す為に来た」


「私を?父が居るはずです。それに掟では命令以外で里を離れた者は死罪だと」


「…その様子では手紙を読んでおられないな」


「二百年ずっと手紙は受け取ってましたから。内容もほぼ同じだったので、途中から即刻燃やしていたもので」


「族長はもう長くない。早々に代替わりが必要なのだ」


「父が…、いえ、私は戻るつもりはありません。別の者が代わればよいのです」


「そうはいかん。里の中で一番強い者が継がんといかん。それが代替わりの儀式の条件だ」


やけに条件のある儀式だな。呪いの一種か?

魔法契約ならそんな条件多くないはずだけど。


「私がそれを遂行する道理は無いです」


「…その為のケトルじゃ。ワシとともに来なければケトルの命は無い」


ケトルに巻き付く蔦がキチキチと音を立てる。

絞め殺すつもりか。


「ケトル…!!」


シズイ先生の悲痛な声。こんな声でケトルの名を呼ぶ彼の声を聞くのは初めてだ。


人質が一人。こっちは戦力のシズイ先生。私はまだお荷物ぎみ。

こんな時にどうするかなんて前世でも習ってない。

悪友なら切り抜けられるかもしれないけど、私には難しい。無理だって言いたい。

正直、シズイ先生を渡してしまえばこの場が収まるなら渡すべきではある。


でも、人間を見下す奴が里内部の情報を知った人間を生かす可能性は、低い。

なら、そんな可能性に掛けるより、は。  


私が言葉を発するより早く、シズイ先生が魔法を紡いだ。


「"吹雪の理"」


一段低い声。本気で怒ってる。

吹雪で視認性が低下し、人間の私の視界はすでに白しか映さない。


「撹乱か。しかし、甘い」


おそらく、吹雪の出現と同時に突進したシズイ先生と、カスミさんが衝突したのだろう。凄まじい音が響いている。

多分、視界不良にして、自分を充てがうことで、ケトルにさく意識を減らした??

でも、人質とカスミさんが認識してるから、それは短い時間しか持たない。

ケトルを助けるなら今しかない。


記憶を頼りにケトルが捕らわれている場所まで走る。

見えた。先程より青白い顔のケトルが寝てる。

てか、なんで寝てるんだよ。

大惨事なんだが。いいかげん、起きなさい!


「切り裂け、"氷槍"!

そして、起きろ!私の魔法、精度が無いから至近距離でも植物だけ切るか怪しいんだからね?!」


精度が無いから胴体は真っ二つにならないよ、そこは安心してね。という副音声もいれたが、それは声には出さない。


植物の花部分を槍が貫くと同時に、複数の槍を出現させ、拘束部分に撃ち抜く。


「あ、やべ、」


ここで失敗するのが、リーフィリア・クロヴィース。公式で一人では何も出来ない女の子と呼ばれているだけある。


「標準、ずれーーー」


ケトルの目がカッと見開かれ、身動ぎでズレた槍に拘束部分を合わせた。


「お、千切れたね。流石、私」


「俺が合わせたんだが?嬢ちゃん、起き抜けに命刈り取る系女子か?」


「そんな属性無いよ?!ミスだよ。本当にごめん!!」


「対象を眠らせる要の花を最初にやったのはいい判断だったな。拘束部分を先にやられてたら今ごろ血だらけだ」


「禍々しいから、先にやったけど、そんな重要だったの?!」


「おい⋯まあ、血まみれじゃねえから、シズイに加勢⋯、いや、その必要もねえな」


ケトルという人質が居なくなったことによって、枷の外れたシズイ先生はカスミさんを吹き飛ばした。壁に激突し血を吐いたカスミさんは、立ち上がることもなく、その場に崩れ落ちる。


「決着着いたみたいだな。それ、どうすんだ」


ケトルは動かないカスミさんを指差す。


「うーん、父様が招いている以上、招待客扱いだから帰すしかないけど、家の警備を拘束したし総管理局まで持っていけばワンチャンしょっ引けそうだけどね」


その場合、シズイ先生との関係まで喋らなきゃいけないし、シズイ先生が家庭教師じゃなくなるかもしれない。

それは御免被りたい。


「それでも、軽い刑罰程度でしょう。闇魔法で脳を弄って私とケトルが死んだことにして帰すのが得策かと」


「そんなこと出来るの?」


「記憶の書き換えは私でも失敗して廃人を作ってしまう可能性がありますし、今回はやりません。やるのは洗脳。なんでも私の言うことを聞くというルールを脳に追加してやるだけなら、普段の行動も変わりませんし、負担も少ないでしょう」


うん?今回は??

記憶の書き換えも洗脳も同レベルに怖いが??


「まあ、何かの法律に引っかからないなら、いんじゃない?」


「おい、人間の法律だとーー」


「この方はエルフです。エルフのルールは強者絶対。何も問題ありません」


ケトル、何か言いかけてなかった?

不安だけど、他に方法無いしな。

仕方ない、のか。


「シズイ先生やケトルが狙われなくなるならそれで良いと思うよ」


「ありがとうございます。ケトルもそれで良いですか?」


「あー、倫理的には良くねえが、そもそも俺がヘマしたのが原因だし、俺は何も言えねえ」


「ケトル、囚われのお姫様ポジションだったもんね」


「その節は大変手間をかけさせて、済まなかったな。不甲斐ない所を見せちまった。嬢ちゃんも大変だっただろ。こんなムサイ男が捕まってるのは見苦しかっただろうし」


「ううん、ケトルはイケオジだし、囚われてると結構良い絵面になってたよ!!ビューティー?キュートアグレッション?ってやつなのかな??」


「絶対違うし、慰めにしては下手すぎるぞ、嬢ちゃん!」


良かった。捕まってた後遺症とかも無さそう。

それにしても、イケオジが囚われてるのはあんな状況じゃなきゃトキメイてたな。

なんかさ、強い男が捕まってるのがいいんだよなぁ。


「リーフィリアさん、魔法の処置が終わりました」


「え、もう?!流石、先生です」


ごめんなさい。先生が仕事してる時に頭の中で癖について考えてました。


「それと、私もお暇を頂きたく、」


「え、」


「身内が雇い主の身すら危険に晒す事件を起こしてしまいました。私に貴方を教える権利はありません」


「それは先生のせいじゃないですし、洗脳してくれたから次は起こらないんですよね」


「絶対に次は無いとは言えません。カスミ爺の証言を無視して私を探しに来ないとも限りませんから」


「そんな⋯」


「それに私はケトルの憎い村の、族長の血を引いています」


「俺は別に構わないぞ。憎いのは母を殺し、俺を冷遇した里の連中だ。あんたは俺がいた頃の村には居なかっただろ。里の一員という記号だけであんたを判断してるわけじゃねぇよ」


「⋯⋯」


シズイ先生は奥歯を噛み締めてる。言いたいけど、言えないって顔。ケトルは寝ていたから、お母さんが死んだ時な先生が里にいた事を知らないし、先生が伯父だってことも知らない。


先生は奥歯に力を入れるだけで、何も語ろうとしない。

先生はケトルに嫌われたくなくて喋りたくないのかも。大切な妹の忘れ形見だもの。


「私も師匠が変わるのは遠慮したいし、シズイ先生がいい。だから留まってほしい。勿論、シズイ先生さえよければ、だけど。」


「私は、」


「今すぐに答えを出さなくてもいい。今日は皆疲れてるしお開きにしよう。でも、『今日は何もなかった』。いいね?」


シズイ先生とケトルが頷いたのを確認して、呼び鈴を鳴らしメイドを呼ぶ。破損した物は指導に熱が入ったことにして、片付けを依頼した。私?もちろん、始末書書かされましたよ?

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