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ヒロインの姉に転生したので!  作者: ユナユナ
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第十二話 リーフィリアという存在

シズイ先生は渋々ではあるが、残ることを約束してくれた。あれ以来、ケトルともギクシャクはするものの徐々に元の関係に戻りつつある。私の魔法の上達こそイマイチであるものの、仲間探しは順調といえるかもしれない。

しかし、これはクロヴィース家内部の仲間。学園にはいない。


「学園内の仲間を今から探すべきかな?でも、学園で欲しい情報が無いんだよな」


私の目標は、幸せに生きること。

人並みに死にたくなくて、幸せであればいい。

それでシズイ先生とケトルと一緒にいたい。

出来るなら兄様とミルフィリアと、⋯暮らしたい。

せっかく家族に生まれたんだから。

父様は、うん。分かんない。あんな冷たい目で見てくる人と仲良くなれる日が来るのかな。

この世界は魔族という敵が居るらしいけど、前線に出るつもりもない。そもそも、魔族自体、父様が攻略対象自体に魔王を討伐され弱体化している。

父様が魔王にでもならない限り、全盛期の力を取り戻すこともない。

魔族について、というより魔族の力を強める魔王について調べた方がいいのかもしれない。その出現条件や特性が鍵になりそうだ。


「今はクレナイとの関係と。

⋯⋯ミルフィリアを父様から奪還出来ないかな」


学園に入学する頃には手放すだろうけど、それまで母様の真似事をさせられる妹の心はきっと壊れてしまう。ゲームで見たミルフィリアは本当に1作目の主人公である母様にそっくりだった。笑い方もドジの仕方も料理が出来ないところも何もかも。

ミルフィリアはあんなに活発な笑い方をしない。花が綻ぶように笑う。ミルフィリアはパタパタ走ってズッコケたりしない。コケても回転して着地できる。料理も得意だ。


「父様を暗殺⋯は倫理的にアウトな上、リスクが高すぎる」


正攻法で行くなら代替わりしかない。

今のクロヴィース家の最高権力は父様。

アルト・クロヴィース。

後継はグレイス・クロヴィース。


「兄様は自らの影響力を強めるため、すでに動いているけど、それも何年かかかる」


邪道で行くならクロヴィース家の権力を失墜させること。家が取り潰しにならない程度の醜聞を広める、とか。そうなったら父様もミルフィリアに構っている時間は減る。家の危機に長が引きこもっていいはずがない。


「けど、私の頭だとちょっと失墜までは難しいかな」


私は頭がいい方ではない。力量は成人女性の範囲に留まるが、仕事でも特に判断が早い方ではなかった。


私には何も⋯ 


『そう、私には何も無い』


私の声だけど、私じゃない。

見慣れた景色が歪み、宇宙みたいに真っ暗な空間に放り出される。

目の前でぷかぷか浮かんでいるのは私。

白銀の髪をもつ少女。眉毛はカタカナのノの形を描いて自信なさげなリーフィリア・クロヴィース。


「貴方はだれ⋯?」


思わずそう聞いてしまうのは私がリーフィリアだから。 


『リーフィリア・クロヴィース。お兄様の妹だよ』


返ってくる答えは予想していたもの。彼女こそが本物のリーフィリアなのだろうか。


「ミルフィリアの姉でもあるでしょ」


『でも、私に、私たちに、ミルフィリアの姉たる資格はない。頼りにならない、助け出せもしない。そんな私たちが姉であるはずがない』


「私は助けたい⋯よ。自分の生きる世界は幸せでありたいから」 


『私より貴方は勇敢なのかも。でも、リーフィリアなばかりに何も出来ない。ごめんなさい、私のせいで。私が悪いせいで。だめな子でごめんなさい』  


うわ言のようにごめんなさいと繰り返すリーフィリアは私よりも気弱で、ゲーム越しに見るよりもずっと情けない女の子。


「リーフィリア、」


『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』


「、」


『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい


お兄様、助けて』






「リーフィリアさん?!」  


先生の呼ぶ声がする。助けて。私はこの空間にいたくない。

私は必死にその声に向かって走り出した。

光が大きくなって私の体を覆う。


「どうしたんですか、そんなに焦って?

悪い夢でも見てたんですか?」


先生、シズイ先生がいる。

それにここは私の自室だ。   


「えっと、はい。夢見が悪かったみたいです」


「魔法使いの夢が悪いのは何かの前兆かもしれません。気をつけたほうがいいですよ」


「そ、そうなんですね、気をつけま、上からタライが」


「うッ!」


シズイ先生の頭には相変わらず何が降ってくる。

見慣れた光景だ。


でも、

寒気が止まらない。

まるで幽霊にでも会った後みたいに、身体が芯から冷たくて、空気だけが生温かい。 


「リーフィリアさん?顔色が…」


優しくて大好きな先生。

でも、声が遠い。貴方じゃない。

貴方は私の絶対じゃないし、貴方は私を絶対にじてくれない。


思考が何かおかしい。

頭がぐるぐるする。

あのひとは、あのひとはどこ…?


私は立ち上がり、先生の声を無視する。


「兄様、…どこにいるの?」


私の足は自然と駆け出していた。

ミルフィリアの不幸な姿を見たくない。助けられない自分を知りたくない。でも、助けたくて。

3人で生きたくて。

それでも私にその技量はなくて、


足がもつれる。

無様に地面に倒れた私は呻く。


「リーフィリア…大丈夫?」


声変わり前の高い声が目の前から聞こえる。


愚かな私を見捨てない絶対の人。

私は兄様に抱きつく。

だってそれが一番安心だから。


「リーフィリア?

…仕方の無い子だね。愚かで弱い君。ボクだけが君を導ける。導き手のいないと歩くことすら叶わない君を。だから安心してね」


うん。兄様、大好き。

でも、どうしてお目目が赤く光っているの?




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