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過ぎたるは及ばざるが如し、ってこういうこと?

「皆さん、階段ってスペースだけを取る邪魔者ですよね?」

ジャンヌさん、あなたは何を仰っているのですか?

心の中でツッコミを入れるが、当の本人は真顔のまま続ける。

「家において、階段は邪魔です」

絶対の自信を込めた口調でそう言うと、ジャンヌさんはリビング中央へ歩いていった。

そこには二階の梁を支える一本の大きな柱――立派な大黒柱がそびえ立っている。

見たところ、どこにでもありそうな木の柱だ。

「この柱は家を支える大黒柱だが、同時に上下階を行き来するための昇降装置でもある」

「……昇降装置?」

私たちは思わず顔を見合わせる。この人は何を言っているのだろう?

その横で、ジャンヌさんは柱に人差し指を添え、そのまま上へ一度だけスワイプする。

柱の表面に淡い光の筋が走ったかと思うと――

ジャンヌさんの姿が、音もなく掻き消えた。

「え」

私と舞衣さんの声が重なる。

「ジャンヌさん!?」

ハルちゃんが慌ててさっきまで立っていた場所へ駆け寄る。

「上です」

頭上から聞こえた声に顔を上げると、二階の吹き抜けからジャンヌさんが平然とこちらを見下ろしていた。

「クラヴィスを嵌めた方の指で同じく柱を一度上に弾いて下さい」

恐れを知らないのか、舞衣がジャンヌさんに言われた通り実践すると、同じく一瞬で消える。

「えっ、まじ!?」

2階に舞衣の興奮したような声が響く。

「お二方も」

ジャンヌさんが急かす。

ハルちゃんと顔を見合わせて一緒に頷く。ここまで来れば腹を括るしかない。

二人で、上に一度スワイプする。

指先から微かな温もりが走る。

視界が一瞬だけ白く霞み、次に目を開いたときには、私たちはもう二階に立っていた。

ジャンヌさんと舞衣が、まるで最初からそこにいたかのように私たちを待っている。

「わぁ〜」

ハルちゃんが惚けたように感嘆する。

「これもヴィト公社製ですか?」

「いや、これは高度魔術硏究院の公開技術だ」

私が尋ねると、驚きの回答が返ってくる。

「えっ、この技術が公開されてるんですか?」

「ああ。公開しても模倣できる者がほとんどいないほど高度な魔術だからな」

階段をなくすために、瞬間移動のような技術を使う。

……その発想、ちょっと技術の使い方を間違えていないだろうか。

私が一人悶々と悩んでいても、住宅ツアーは続く。

「この階には各自の個室がある。家具・寝具は、各自の大きさに合わせてある。その他は窓の景色以外、全室共通使用だ」

ドアの横に『細川』の札がかかっている部屋をのぞく。

「入ってみろ」

ズカズカと中に踏み入るジャンヌさん。部屋の主である舞衣も遠慮なくドアをくぐる。

ハルちゃんと一瞬顔を見合わせるが、肩をすくめて

「失礼します」

二人で軽くお辞儀しながら入室。

中に入ると、見た目よりだいぶ広い。高身長の舞衣でも天井は余裕のある高さだ。

「いや、広いなぁ」

舞衣が感嘆の声を上げる。

実際に思ったより広く感じる。2階全体を使っているのではと錯覚するほど広い。

「まぁ、空間的な広さは2階全体と同じだからな」

「ふへぇ?」

ジャンヌの唐突な爆弾発言で間抜けな声が出てしまった。

「ドアの方に高度魔術研究院の最先端魔術が仕込まれている。各々の部屋も同じくらいの広さはあるが、干渉はできない仕様だ。安心しろ」

「干渉しない?何が?」

よく分かっていないハルちゃんの頭の上にハテナが浮かんでいるのが見える見える。

「私も原理はハッキリ分からない。もし、知りたいなら高度魔術硏究院の奴らに訊いてくれ」

ただの家がオーバーテクノロジー満載なのはなんか尺に落ちないが、不意に、目をやった窓からドームのような構造物が見えた。

「あれは何やろ?」

同じく外を眺めていた舞衣が目を顰める。

ジャンヌさんは手元のDカードをチラリと見ると、盛大なため息をついた。

「あのバカ呑兵衛どもが」

「「「?」」」

「見に行くか?家の紹介は大体終わったからな」

3人で顔を見合わせる。

「家の探検は後でしましょう!」

ハイ!と元気よく手を上げながら提案するハルちゃん。

「そうしよう!」

舞衣も賛同したので、特に反対する気もなかった私も頷いた。


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