大きいは正義!
「壊してください!」
「何度言えばわかる! 神聖な場所だ!」
「宴会場ですよね? こんなでっかいものは不要だと何度言えばわかるんですか?」
「みんなで天気を気にせず飲み明かす神聖な施設は、これ以外にない!」
「宴会場に神聖さは必要ありません!」
ツヴァイとシュミット親方が向かい合い、やいのやいのと言い争っている。
「で、デケェ……」
舞衣が思わず声を漏らす。
東京ドームと同じくらいの大きさをした、上部がガラス張りの巨大なドーム。
それが街中にデーン! と鎮座している。
あまりにも場違いで、あまりにも存在感がある。
「こ、これが酒場……?」
ハルちゃんもホヘェッと首を限界まで上げながら呟いた。
うん。
ここまでドヴェルグたちが暴走するとは、露ほども知らなかった。
「「この酒場は――」」
ツヴァイとシュミット親方の声が重なる。
「――いる!」
「――いらないです!」
互いの言葉を遮った二人の間で、バチバチと火花が散る。
シュミット親方に話を聞いてみるとこんな感じだ。
Q:まず、どうしてこんな大きさが必要なのか?
A:「飲む奴がいっぱいいる。狭めぇところで飲んでも楽しかねぇだろ?」
Q : 飲酒に大きさは関係あるか?
A : 「そりゃあ、広けりゃ広いほど良いに決まってるだろ?」
Q : なぜ酒場が神聖なんですか?
A:「酒を造る奴、酒を運ぶ奴、酒を売る奴、酒を飲む奴。全員がここで笑える。こんな場所を神聖と言わずして何と言う?」
「確かに…」
「舞衣さん?」
「ん?…あ、あぁすまん。つい」
呑兵衛が横にも居た。こりゃどうしようもない。
「ツヴァイさん。諦めましょう」
「ハァ〜。シュミット親方、この件は後で建築ギルドに一報を入れておきます。良いですね?」
「ふん。好きにしろ。どうせ、あいつらも飲みに来る」
「そ、そうだった…」
勝ち誇った顔を浮かべる親方。逆に絶望して頭を抱えるツヴァイ。
「まぁ、日中はスポーツなどできるようにして、夜は酒場にすれば妥協できるのでは?」
私は、ツヴァイに助け舟を出す。
「スポーツ?」
ツヴァイが顔を上げる。
「はい。これだけ広いなら、昼間は運動場として使えるでしょう。バスケットボールやバレーボール……あとは、こちらの世界に似た競技があるなら、それにも使えると思います」
改めて巨大なドームを見上げる。
東京ドームほどの大きさがあるのなら、単なる酒場として使うには確かに贅沢すぎる。
しかし、逆に言えば――。
「昼間は市民の運動施設。夜は宴会場。祭りや式典にも使えるようにすれば、用途はかなり増えると思います」
「ほう……」
ツヴァイが顎に手を当てて考え込む。
「つまり、酒場としてはデカすぎるが、複合施設として考えれば……」
「そういうことです」
「スポーツ……」
隣で舞衣がぼそりと呟く。
「バスケとか、できるん?」
「できますよ。たぶん」
「たぶん?」
「あれば、良し。なければ教えたら良いのでは?」
舞衣の目が輝いた。
嫌な予感がする。
「親方!」
突然、舞衣がシュミット親方へ向き直る。
「ここ、昼間はスポーツ施設にしましょう!」
「おう!」
「即答ですか!?」
「酒が飲める場所で、昼間に運動までできるんだろ? 最高じゃねぇか!」
「いや、そこは普通逆では?」
シュミット親方は豪快に笑いながら、巨大なドームを見上げる。
「決まりだな!」
「決まってません!」
ツヴァイが頭を抱える。
「親方、あなたは少し黙っていてください!」
「なんでだ? 良い案じゃねぇか」
「あなたが酒場を巨大化させた張本人だからです!」
「なら、もっとデカくするか?」
「話を聞いてください!」
「「もっとデカく!?」」
私と舞衣の声が重なった。
「いや、そこは大きくしなくていいです!」
思わず即座に突っ込んでしまった。
この世界の建築は色んな意味で大変だ。




