オーダーメイドインテリア
「「お〜」」
やっぱり、和風の家っていうのはなんだか心が洗われるっていうか、落ち着く。
竹本隊長たちの家と少し違って、こっちは内装が少し明るめだし、採光のためのガラス窓も多めだ。
リビング・ダイニングとなる所には、象牙色の大理石のような石材や木材などの素材が小高く積まれていた。
「では、これよりみなさんに合わせた内装をします」
素材を確認していたジャンヌさんが手をはたきながら腰を下ろす。
この人は今から内装をするのになぜ座るんだろう?
そう思っていると、瞑想しているかのように胡座をかきながら呼吸のリズムを一定にしだした。
左手には家に入った時に行った身体測定の記録が、右手は素材の山に向けられている。
「フーッ」
ゆっくりと息を吐くと右手が淡い光を帯びはじめた。
積まれていた木材が、一枚、また一枚と重力を忘れたように浮かび上がる。
次の瞬間、その木材はグニャリと曲がった。
私たちが息を呑んで見守っていると、柔らかな粘土のように形を変えた木材が他の木材と溶接されたかのようにくっつく。
目の前にできたのは、
「椅子?」
ポツリとハルがこぼす。
そう、丸みを帯びた肘掛け付きの椅子だ。
肘掛けと背もたれが融合している様式で、座り心地にも気を遣っているのか、モカグレー色のファブリック素材のクッションで仕上げてある。
目の前にフワリと降りてきた椅子の一つに舞衣が近づくと、椅子が自動的に高さを合わせて座りやすいように回転した。
私の見間違いでなければ、舞衣が腰を下ろした瞬間、背もたれも座面幅も奥行きも体格に合わせて変化していた。
同じ規格品にしか見えないのに、まるで舞衣専用に作られた椅子みたいだ。
椅子に気を取られていたらいつの間にか木目の美しいダイニングテーブルまで出来上がっていた。
明らかに人の力では持ち上がりそうもない乳白色の石材も、空に音もなく舞うと、一瞬で艶のある濡羽色の石に様変わりする。
空中へ浮かんだ石材は、何の抵抗もないかのようにバターでも切るように真っ二つに分かれた。
スパッと半分に切られた片方は、壁側にすでに設置されている収納棚や換気らしき設備の下に、音も無く着地。
もう片方もその向かい側へ静かに着地した。
二つの石材は突然、まるで水でできたかのように波打つ。
石面が凪のように落ち着くと、そこには蛇口付きの流し台、調理スペース、コンロ台、引き出し式の収納棚も多数見える、まるで最新式のセパレート型キッチンのような台所が鎮座していた。
私が「ほへぇ……」と呆けている間にも、ソファやベッド、本棚に衣装棚まで次々と出来上がっていく。
目の前に積まれていた素材は、一切無駄になることなく使い切られ、普通なら必ず出るはずの廃材も1つとして残らない。そんな異質でクリーンな内装工事は、わずか一時間で終わった。
汗を拭うと、ジャンヌさんは思い切り伸びをして立ち上がった。
そんな彼女に私は敬意と「お疲れ様」の意を込めて水筒を渡した。
「かたじけない」
水をゴキュゴキュ飲んで、プハーッとする姿は仕事終わりの人みたいでシンパシーが芽生える。
さっきまで、魔法みたいな――いや、実際に魔法の職人芸を見せていた人物とは思えない。
隣では、ハルちゃんと舞衣も
「凄かったね」
「まじ、エルフやばぁ…」
ってコソコソと話している。
「よし、大方終わったから家のツアーと洒落込もう」
水筒を私に返しながら、そう言うジャンヌさんの耳はぴこぴこと跳ねている。
二人の称賛が聞こえて嬉しいのだろう。
耳は正直なのに、顔だけは相変わらず鉄壁のポーカーフェイスだった。




