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あらあら

女性陣はその後、家の外に招集された。

しっとりとした美しい銀髪を持った糸目なアールヴのお姉さんがほんわかとした雰囲気を纏いながら、一人一人に軽く挨拶をする。

「こんにちは〜」

声色もポワポワとした感じで、優しく包み込んでくれそうな気持ちにしてくれる。

「これで皆さんですか〜?」

数えてみるとたったの7人。

今回この遠征に参加している人数は140人ほどだったはず。

女性の割合はたったの5%。

内訳は女性自衛官4名、残りは政府職員が一人、准教授が一人、そして私だ。

「あらあら、大分数が少ないのですね〜。男ばかりの環境は絶対億劫になると思うので、私たちと出掛けましょう!」

お姉さんは、「皆さんの平和は私が守らなきゃ」と呟きながらふんす、と小さく拳を握っていた。

私たちがどうしようか顔を見合わせていると、お姉さんがアッと口を押さえた。

ほんのり赤面しながら喉を鳴らして小さくお辞儀をする。

「申し訳ありません。私はエレノアと申します。ぜひ、えーちゃんと呼んでくださいね〜」

みんなが日本人らしく『よろしくお願いします』って答える。

それを見てコロコロと笑うえーちゃん。

私はこのお姉さんを、絶対にえーちゃんと呼ぶことを決めた。決定事項だ。

「七人しかいませんし、お互いのことを知っておいた方が安心ですものね〜。自己紹介をしましょう」

手をパッと合わせて嬉しそうに提案するお姉さん。誰も反論できるはずもなく、自然とこの中で唯一スーツ姿の人に視線が集中した。

圧倒的な数の視線を感じたのか、その人は小さく溜息をついて一歩前に踏み出した。

「外務省から出向しております特務外交官の梶原由花です。どれくらいの滞在になるかは分かりませんが、この期間は皆さんと助け合って過ごせればと思います。よろしくお願いいたします」

公務員らしく堅く、形式張った言い回しだが、そんな事務的に近い挨拶にもパチパチと暖かい拍手を送るえーちゃん。

鉄仮面のはずの特務外交官でも顔がほんの少し緩む。

その流れのまま、反時計回りに自己紹介が続いた。この感じ、私が最後だ。

四人の女性自衛官はそれぞれ、堀、小清水、細川、そして宮元と名乗った。

全員が全員筋肉マッチョというわけではなかった。特に宮元さんは私と同じぐらいの身長で体も細い。管理栄養士らしい。

一番の筋肉マッチョは、名前に反して細川さんだった。

東京から来た部隊所属で、身長は一九二センチ。

一五三センチの私が横に並ぶと、セントバーナードの横にトイプードルが立っているような縮尺になる。

太ももは私の首より太く、肩幅も広い。まるでボディビルダーのような体格だ。

……なのに口を開けば、

「まじ、ここ、やばくない?」

と完全にギャル。

筋肉マッチョな黒ギャル。頭の痛くなるような属性、てんこ盛りだ。

堀さんと小清水さんはそこまではゴツくも、高身長というわけではなかったが、二人とも真面目そうな人たちだ。

「櫛田遙香です。芸術大学の准教授で、バイオリンを中心に弦楽器の授業、そして音楽全般を研究しております。ぜひ、こちらの音楽を見聞きそして学びたいなぁと思っております。よろしくお願いします」

隣でぺこりと頭を下げてお辞儀する櫛田さん。櫛田さんは私より頭一つ小さく、どことは言わないが、ぺったんこだ。

中学生くらいにしか見えない櫛田さんは、弱冠14歳で世界三大ヴァイオリンコンクールに出場し、大人部門で優勝を総なめにした異質の天才だ。

テレビでも何度も見たことがある世界的演奏家。

正直、なんでこんな人がここにいるのか分からない。

そんな櫛田さんは先月やっと正真正銘の大人、20歳になったばかりだ。

ネットの一部界隈が盛り上がったとか、盛り上がらなかったとか。

実際に目の前にすると、とても二十歳には見えない。

母性本能がくすぐられたのか、えーちゃんが櫛田さんに向けて暖かい目を向け、手をワキワキさせている。

こんな天才の後に平凡な私の自己紹介は恥ずかしいが、さっさと済ませよう。

「こんにちは。肥後大学で化合物研究をしています。牧田唯香です。研究以外でしたら、料理が趣味です。ご飯やおやつはお任せください」

温かい笑い声が湧き上がった。よし、掴みはバッチリだ。

「あと、もし男性陣がお酒で絡んで来るようでしたら私を呼んでください。私に勝てる男はいませんので」

私が自信を持って胸をどんと叩くと、オーッという声と拍手が湧いた。

私は少し前、ルース連邦に観光に行った時、寄った酒場で呑兵衛どもに絡まれた。

鬱陶しかったが、酒を奢ると言われたので程々に付き合っていたが、気が付くと机の上には大量のグラスと、酔いつぶれて机に突っ伏した男ども。

私だけがケロッとして、マスターに美味しいお酒のおかわりをしていたが、途中で「駄目」と言われた。

その日から、酒場では「鉄薔薇」と呼ばれるようになった。

名誉なのかは分からない。……たぶん、誉め言葉ではない。

そんな昔話はさておき。

「よろしくお願いします」と私がペコリと頭を下げると、みんなが暖かく拍手を送ってくれた。

「みんな、全員素敵な人たちね〜」

えーちゃんが感慨深そうに頷いていると、不意に背後から声がかかった。


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