酒好きを酒で釣るとこうなる
ツヴァイがコンコンとミーシャとジャンヌさんに説教して、佐伯准教授が見回る中、焚き火で寛ぐドヴェルグの一人と目が合った。
「おう、食ってみねぇか?」
火で炙っていた肉を差し出してきた。
「えぇ?良いんですか?」
「あぁ、まだ時間がかかりそうだからな」
確かに。そう納得すると、そのドヴェルグの隣に座った。
「俺はクラインだ」
「牧田唯香、唯香って呼んで」
握手を交わした後、クラインから串肉を受け取った。
「まぁ、まず食え」
「じゃあ、いただきます」
口に含んだお肉は塩で味付けられたシンプルなものだった。
炭火の香りがほんのりする鶏っぽい風味で、肉汁が体を温めてくれた。
「美味しいです」
「だろう」
クラインがニシシと嬉しそうに頷く。
私がじっくりと味わっている横で、クラインは懐から取り出したフラスクから何かを飲んでいた。
フワッと香る仄かなアルコールの香り。
間違いない。こいつら、シラフじゃねえ!心の中で叫んだが、顔には出さず、串肉を楽しんだ。
「オメェらは上から来たってな。どんな感じなんだ上は?」
クラインは私が食べ終えるのを見て訊ねてきた。
「ん?う〜ん、そうね。結構違うね。季節もそうだし、建物も乗り物も違うね」
「ほぅ。魔素もほぼないって聞くけど本当なのか?」
「うん、聞いたことはないね」
串肉を頬張りながらクラインは眉を顰めた。
「魔法が使えないのは不便そうだな」
「うーん。まだ、魔法ありの生活をしてないから分からないけど、上の世界は意外と便利な世の中だよ」
私の返答に、まぁ、そんなものかと軽い感じでクラインは納得した。
すると、背後で急に雄叫びが上がった。
何事かと周りを見回すと、他にドヴェルグと仲良くなった同僚の一人、確か小西くんと言ったはず、が酒を飲み交わしている最中だった。
おい、まだ昼間だし、公式な遠征だぞ。
心の中でツッコミを入れている束の間、
「かぁー!この酒強くて、うめぇぞ!!」
片手に串肉、もう片手には酒が注がれたぐい呑。
小西の手にはどこから持ち込んだ一升の焼酎瓶。
聞きつけた他のドヴェルグたちが興味津々そうに周りに集まってきていた。
「おい、あまり騒ぐな」
離れたところで寛いでいたシュミット親方が注意すると、盛り上がっていたドヴェルグたちが軽く謝罪して解散した。
ただ、私は見逃さない。注意する直前に親方の目が焼酎瓶に釘付けになっていたことを。
「もしかして、皆さんかなりお酒好きですか?」
シュミット親方同様、小西の焼酎瓶を凝視していたクラインに訊くと、
「うん?あぁ、まぁ、そうだな。毎日飲んではいるな」
クラインが頭を掻きながら答えた。
「今晩、我々の持ってきたお酒とそちらのお酒を飲み比べるのはどうですか?」
私がそう提案すると、クラインの顔がパッと明るくなった。
「そりゃあ良い考えだ。ちょっと待て、親方に聞いてくる」
クラインはいそいそと立ち上がると、親方のもとに半分スキップ、半分早歩きで向かった。
私も、提案した身として、竹本隊長と佐伯准教授に許可を取りに足を進めた。
今日の夜ご飯は賑やかになりそうだ。




