遊覧飛行
ナフスからの光景は、一言でいえば壮観だった。
現実世界で一部の人がヘリコプターで上空から観光するらしいが、その理由を少なからず理解できた。
この都市は聖樹から伸びる巨大な根によって、綺麗に4等分に分割されている。
白いキャンバスに浮かび上がる無数の家々。ただ、雑居のように乱雑な感じではなく、区画整理された整然とした街並みだ。
大体の区画の中央には小さな公園のような広場があって、その広場では冬着を着た子供たちが雪合戦をしていた。
区画の間を走る道は、すべて見た感じ主要道路につながっているみたいだ。
その主要道路は舗装された広々とした並木道で、街の中央に向かって走っている。目を引くのは、道の中央に川が流れており、多くの橋が架かっていることだ。
ツヴァイ曰く、時折降下するナフス以外は、基本的には歩行者専用の道路らしい。
確かに見ると、車らしい影は全く見えない。代わりに、色とりどりのテントやパラソルがモザイクのように広げられていて、多くの人影が出入りしている。
恐らく商店街とかがあるのだろう。時間があれば寄ってみたいものだ。
ただ、今日一番の衝撃は、地上ではなく空中にあった。
「あれらは浮島ですね。一部の人たちは飛ぶのが好きなのでここにも家とかがあります」
聖樹のドデカい枝の周りには大小の岩が浮いていて、大きめの岩は大型客船ほどの大きさらしい。
そういえば、報告書には彼らが変身して空を飛ぶと書いてあった気がする。
ならば空中の住宅街も不思議ではないのかもしれない。
ただ、雪が真下に落ちている様子はないので、風は吹いているうえに、そこそこ大きいアパートみたいな構造物が載っていても、転覆したり家屋自体が崩れ散る様子もない。
それにしても、十分に大きいはずの浮島も聖樹と比べると小さく見える。
「皆さんは、スキルでもない限り飛行は出来ないので訪れる場合はナフスをご利用下さい」
自分は高所恐怖症ではないが、初見では多少ちびりそう。
ナフスが壁、いや、小さい山といっても差し支えない高さ、太さの根を越した。
その先には多少の凹凸はあるものの、だだっ広い空間が広がっていた。
クリームだけを塗った四分円のケーキみたいな場所の中央あたりに人影らしき点が白に映えていた。
ナフスが高度を下げながら近づくと、豊かな髭を持った寸胴の小人たちが焚き火で暖を取っていた。
身長ほどあるハンマーを磨いたり、口に咥えたパイプを吹いたり、なんならジョッキを飲みながら、思い思いのことをしていた。
「大分、身長が低いですね」
佐伯准教授が窓から覗きながら彼らを凝視していた。
「えぇ、彼らはドヴェルグ。つい最近、アールヴと一緒に“向こうの街”から来ました」
ツヴァイが教えてくれると、横で話を聞いていた竹本隊長がびっくりした表情で
「えぇ!もう出来たんですか?」
なんでこんなにびっくりしているのかはわからないが、本当に新情報なのだろう。
「向こうの街はまだまだ建設中ですが、皆さんとの交流のために一部が来ている感じですね」
ツヴァイがそういうと、ナフスがいつの間にか着陸したのか、天蓋が静かに開いた。




