表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/62

絶対に寝てはいけないタイプの説明会

「今回の中長期遠征に参加していただき、誠にありがとうございます皆さんに先程サインしていただいたNDAに則り、今からの説明および熊本ダンジョン内で見聞きすること、そしてダンジョン内の各自の活動内容はすべて極秘扱いとなります」

父さんの説得を受けた次の日の朝、私は九品寺にあるいつの間にできた自衛隊の基地で説明を受けていた。

周りには大学の研究チームと他大学の教授や研究所のお偉いさん、重武装の自衛隊隊員がパイプ椅子に座り、自衛隊のお偉いさんの話に耳を傾けていた。

「自己紹介が前後しましたが、私は菊池陸将補、第8師団師団長であります」

がたいの良い筋骨隆々の人が丁重にお辞儀する様子はある意味可愛いが、それは置いておこう。

「今回の遠征は、1〜2週間の滞在を予定しております。延長する可能性は十分ございますが、その場合は先に通達をし、帰還したい場合はお止めしません」

菊池師団長は手元の紙に目をやりながら説明を続けた。

「今回の主な目的は、“魔素”の調査およびカルタリアの言語、文化、技術、そして社会の調査であります。向こうの住民は非常に協力的であり、以前の調査から非常に高度な社会を形成していることは確認済みです」

私は会場内に入場時に渡された分厚い資料に目を通しながら耳を傾けた。

周りでも紙にペンを走らせる音や紙をめくる音が聞こえてくる。

「この交流時に注意していただきたいのは、こちらの技術を簡単かつ不用意に開示しないことです。向こう側は我々に好意的ではありますが、開示してこちらの技術レベルを推測されて何が起きるか分かりません」

菊池師団長の目が非常に鋭くなった。

「向こうの住民との交流は良いですが、我々の技術が向こう側に大きな変化を齎す可能性もありますので慎重に行動ください」

まぁ、当然のことだな。某“ス○ー・トレック”という欧米のドラマでも似たことをしていたから、似たようなことをしているのだろう。

「逆も然りで、向こうで経験すること、見聞きすること、習ったことはパラダイムシフトのようなことを起こすかもしれません。ですので、国の公表があるまでは必ず自分の中に留めておくようお願いします」

菊池師団長が側に立っていた自衛官を呼んだ。

「こちらは竹本隊長です。今回の遠征を主導する隊員です。熊本ダンジョンに最初に突入した隊の指揮官であり、全ての遠征を主導しているベテラン隊員です」

呼ばれた竹本何某がビシッと敬礼をしていた。

「資料にありますように、熊本ダンジョン内の都市はカルタリアと呼ばれており、高度な技術、文化、そして社会を持つ都市国家です。現在の所、非常に治安も良く、危険性は少ないです。ただ、皆さんの安全のために必ず竹本隊長の指示に従ってください」

さすがは自衛官、キリッとした顔付きで微動だにせず立っていた。

「これから、竹本より注意点を説明させるので傾注を」

指名された竹本が菊池師団長に礼をした後、いくつかの注意点を述べた。

一つ、ダンジョンに入るとこちら側への連絡は困難なこと。

二つ、カルタリアの周りには平原が広がっているらしく、非常に弱いものの、モンスターが出現するため、単独行動は避けて、常に注意すること。

三つ、カルタリアには独自の貨幣制度があり、今回はそこそこの長期間滞在する。集められる貨幣には限度があり、借金などは絶対しないこと。

四つ、万が一のことを考え、こちら側から食料品も持ち込むが、向こうの食品などで体調を崩した場合は、すぐさま連絡すること。

五つ、各自毎日行動記録を必ずつけること。問題が起きた際に、その行動記録から原因を早く究明できるため、包み隠さず記録し、厳守すること。

六つ、こちらの文化や常識を押し付けないこと。郷に入っては郷に従え。これを守れない場合は即刻帰還して貰う。

七つ、カルタリア内部にある迷宮は基本立ち入れないだろうが、自衛隊も危険度を把握していないため、絶対に入らないこと。

他にも細々と注意点を説明していたが、この七つだけは絶対に守ってほしいとのことだ。

これらを聞いているだけでもなんだか心が躍ってきた。本当にファンタジーみたいだなぁ。天海さんが生きていたら、狂喜乱舞していただろう姿が脳裏にありありと浮かぶ。

竹本さんの説明後、菊池師団長が1時間後に出発するため、それまでに準備を整えることを全員に伝えると、解散となった。

会場にいた人たちは立ち上がってストレッチをしたり、話し合ったりしていた。

横に座っていた同僚の研究員も緊張した面持ちでコソッと話しかけてきた。

「なんだか、現実味がなくて緊張してきたんですけど牧田さんは?」

「そうですね」

私が愛想良く相槌を打っていると、今回大学から派遣されるグループの団長が集合をかけた。

「知らない方もいるかもしれないので、軽く自己紹介します。今回、大学の派遣団団長を任されました。准教授の佐伯です。医学部の准教授を務めています。自衛隊の衛生班を除き、皆さんの健康と安全を可能な限り確保するよう努力しますので協力よろしくお願いします」

佐伯准教授は頭頂部が少し薄く、丸メガネをかけた小太りの男だが、物腰が柔らかく親しみやすい人だ。

「基本、行動は縛らない予定ですが、責任問題に発展するような行動や他の参加者や住民に迷惑を掛けたり、危害を加えたり、信頼を損ねる行動は一切許さないので、そこは皆さん賢い大人ですのでよろしくお願いします」

佐伯准教授が真剣な眼差しで周りに言い聞かせた。

「あとは先ほど自衛隊の方が説明されたことを守れば、ユニークな経験を楽しみましょう。肩をずっと張るのも疲れますからね」

佐伯准教授が戯けたように言うと、周りのみんなも軽く笑った。

大学はいい人選をしたな。佐伯准教授は、大学生からも人気の高い先生だと聞いていた。

事実、大学派遣団は打ち解けた良い雰囲気で、みんなが和気藹々と話し合っているし、件の佐伯准教授はにこやかに周りの人たちと話しながら常に周りの様子を確認している。

ダンジョンにどんなサプライズが待っているのだろうと私は今か今かと待っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ