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おひさ〜

「久しぶりにゃ」

ミーシャが竹本の前で変身しながら声をかけてきた。

「あぁ、久しぶり。元気だったか?」

後ろで学者さんや一部隊員たちが騒ぐのが聞こえたが、一旦無視だ。

「うむ、暇じゃったぞ」

ミーシャが正直に答えていると、横から呆れた顔をしたツヴァイが現れた。

「あのですね、ミーシャもっと礼儀を持てと何度言わせれば」

「う?負け犬がなんかキャンキャン吠えている声が聞こえる様な」

ミーシャが耳を掻きながら煽ると、こめかみをピクピクさせていたツヴァイが深く、深く深く深呼吸した。

やっぱりミーシャはクソガキだな、そしてツヴァイは本当に我慢強い奴だ。

「隊長?」

牧が後ろから声をかけてくる。

振り返るとそこには好奇に満ちた目をする学者や隊員たちが待っていた。

「あぁ、皆さん。こちらが案内を担当してくれるミーシャさんとツヴァイさんです。」

竹本が紹介すると、ミーシャとツヴァイが学者や隊員たちに一礼した。

「本来は、皆さんにこのDカードを取ってもらいたいのですが、大所帯ですから、迷宮に潜る隊員のみ今回は取得して、他は今から手渡す翻訳機を使ってもらうことになっているので悪しからず」

そういうと、ミーシャとツヴァイが背負っていたリュックを下ろすと、中から翻訳機を取り出し、渡し始めた。

「ポケットに入れるだけで翻訳してくれるそうです」

牧が説明すると、学者さんたちが我先と翻訳機を手にすると、ポケットに入れる。

その間に、竹本は特戦群の隊員たちにスライムの倒し方を教え、みんなにDカードを取得したことを確認した。

「それでは、改めましてダンジョン都市 “カルタリア”へようこそ。今回、案内するツヴァイとミーシャです」

ツヴァイが一礼すると、ミーシャがよろしくにゃと言いながらヒラヒラと手を振った。

学者さんたちが今にも質問しそうなのを見て、竹本は手を挙げて制止した。

「この寒い中で、質問を訊いたりするのは酷なので中に入ってから暖かい場所で行いましょう」

その学者さんたちは提案に渋々とした様子ながらも引き下がった。

「何か変わったことは?」

城壁に向かって歩きながら、竹本はツヴァイに訊いた。

「いや、特に何も。皆さんが引き上げてもっと探索者たちが来ると身構えていたのですが、全く来なかったのは予想外でした」

「そうにゃ。今日は泊まっていけばいいにゃ」

「ハハハハハ、今日は無理だな」

竹本が笑いながら返すと

「む、今日は無理っていうことは、次は泊りができるっていうこと。言質は取った」

「いや、取ってないからな」

そんな漫才みたいなやり取りをしている最中、後ろでは学者さんたちがツヴァイの話を熱心に聞きながらメモ帳にペンを走らせていた。

まるで、世界的スターの囲み取材のような密度と熱気がある。

「今日は迷宮に潜るのにゃ?」

「あぁ、私含め隊員の一部が入る予定なのだが」

それを聞いたミーシャが思案顔になった。

「どうかしたか?」

不安になって尋ねると

「いや、冗談抜きで泊まらないと行けないかもしれないにゃ」

なんか不穏な感じになってきた。

「それも迷宮ユスカルに入るのには探索許可証が必要なの。その許可証を取得するための試験があるのだが、体力は問題ないと思うの。ただ迷宮についての基礎知識やモンスターへの対処法とかの座学は必須にゃ。あと、迷宮は魔素がここより濃い。体には害はないけど魔素に慣れていなければ魔素酔いを起こす可能性が高いから本来は2,3日の滞在で順応して入る方がいいのだけども、うーん」

そうなのか?

ツヴァイにも確認すると、

「あぁ、そうですね。上からの探索者は魔素へ慣れてないのでいきなり迷宮に入ると魔素酔いを起こす可能性は高いですね。もしも迷宮探索を行いたいのであればミーシャが言うように何泊かして順応して行った方が良いと思いますよ」

「魔素酔いってなんですか?」

横で聞いていたどこかの教授が口を挟んだ。

「うーん、ひどいお酒に酔うみたいな感じですね。酩酊、判断力の低下、急激な眠気とかが一気に来る感じです。迷宮は一階層ごとに魔素が濃くなっていくのですが迷宮の様な危険地帯で魔素酔いになると非常に危険なのでその前の階層で順応が大切なのですよ」

「ダンジョンにお住まいの人でもなるのですね」

その教授が興味深そうに相槌を打ちながらメモを取る。

「稀に、どこかの馬鹿みたいに面白半分で一気に深い階層を潜ってしまうとなるのですよ」

「うむ。幼い頃はよく酔っていたにゃ」

ツヴァイがどっかの誰かさんを煽っているみたいだが、当の本人であるミーシャはまるで懐かしい経験かの如く鷹揚に頷いていた。

「困ったなぁ、どうする?」

竹本が城島3曹に訊くと、彼も険しい顔をしていた。

「ちょっと上と相談しても?」

竹本が頷くと、牧にDカードで連絡を入れてもらった。もちろんあのエレベーターホールから地上までは手書きメモ伝令スタイルだ。

待っていても時間がもったいないので一同は再び歩みを進める。


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