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34:鬼

 「班長、これは……」


 「あぁ、ダンジョンに似ている」


 特殊作戦軍副隊長の指揮の下、探査、捜索に優れた者を集めた探索班が組まれ、僅かな光を頼りに洞窟の捜索が行われている。


 「班長はダンジョン探索のご経験が?」


 「実家がウェルフォルンでな」


 「あぁ! ダンジョン都市で有名な」


 「若い頃は低層で小遣い稼ぎをしたものだ」


 「羨ましい。私は若気の至りで、碌に整備されていない山奥のダンジョンに入り、ワームの大群に襲われて偉い目にあいましたよ」


 「はっは。良く生きてたものだな。ウェルフォルンのダンジョンは、帰還予定時間が大幅に過ぎると中層までは捜索隊が出る仕組みでな。無茶をしては怒られたよ」


 「流石はルネタイト公国有数のダンジョン都市ですな」


 「しかし、ダンジョンにしては道幅が広すぎる。ここは一体……」


 「班長! 前方より気配が……」


 薄暗い通路を5人のパーティーが進んでいく中で、明かりが要らないほど通路に明るさが出てきた最中。奥のほうから人影が迫り寄ってくるのが分かる。薄暗い所為か、体は黒く、何か武器の様な物を所持しているようにも見える。大きさは未だ距離がある為全貌が掴めない。


 「戦闘準備。最悪殿は俺が勤める」


 「敵は一体です。一度仕掛けてみては?」


 「ダンジョンの怖さを知らんな? 外の魔物と一緒に考えると死ぬぞ?」


 ダンジョンの下りがあった為か、どこか説得力のある班長の言葉に皆それに従うが、どこか浮き足立つ雰囲気ではあった。


 遠くより、のっそりっと動きがゆっくりにも関わらず、迫り来る威圧感が隊員達を襲う。先ほどまで襲撃を示唆していた隊員もうっすら冷や汗を垂らしている。先ず、魔物には危険度を現すランクが付けられており、それを目安に冒険者達が狩りを行う。報酬もランクに応じて変わり、高ランクであれば報酬も大きくなる。


 現在隊員達の目の前に現れた魔物はランクAの鬼人族の特徴と合致していた。額からは角を生やし、二本足で歩く。黒い肉体には血管が浮き上がっているように、赤いラインが網状に広がっている。


 「貴様ら何者だ」


 「人の言葉を話すだと!!」


 「魔物が喋る!?」


 「なっ……!」


 「何者かと聞いている!」


 「お前ら行け! ここは引き受ける。隊長に知らせろ!」


 「で、ですが……」

 

 「構うな!」


 班長の檄により、辛うじて体を動かす事が出来た残りの隊員は、脇目も振らず入口に向かって走り始めた。対峙する二人はそのまま互いに目を合わせ、様子を窺うように構える。が、魔物のランクを知っているものならば、1人で殿を務める意味がどれ程無意味かが分かる。Aランクの魔物はどれも、1個体で国の訓練された兵士100人は軽く相手に出来る程の力があるのだから。こうして対峙しながら生きている事が奇跡なのである。


 「それで、質問に答える気になったか?」


 「俺たちは鉱夫だ。たまたまここに繋がっちまった」


 班長は駄目元で、ブラフを放つ。


 「嘘だな。目線がずれたぞ」


 「ッチ」


 「もう良いか?」


 「クソッ! うがぁあああああああああああ」


 鬼人のプレッシャーに耐え切れず、咆哮をあげ、自棄を起こす事しか彼には出来なかった。剣を振り上げての特攻を仕掛けるも、バランスを崩して転倒。直ぐ起き上がろうとはして、手を地面に着いて支えようとしたところで、自らの手首から先がない事に気がつくのだった。


 

次の更新は23日くらいにでも。

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