26:ベルネッタ・エーリス
堅苦しい話が続いて恐縮です。
「リヒード隊長。バルセルド共和国の商隊の連中は諦めたようですね」
「あぁ、奴らも損はしたくないだろう。多少の損ならまだしも、命がけとなっては流石に欲深い豪商の国の商人といえど危険は犯すまい」
「ですが、私は軍に入って、盗賊まがいな事をするとは思いませんでしたよ」
「君は配属したてか。この部隊があったからこそ、我が領主様はあそこまで大きくなったのだ。この部隊に配属されたことは力を認められたという事だ。誇りに思っていい」
彼らは、ルネタイト公国ベルネッタ・エーリス侯爵専属の軍隊で、ランドハルド王国国力を経済面から殺ごうと目下作戦行動中である。盗賊に扮し、バルセルド共和国とランドハルド王国を分団し、揺さぶりをかける。
現在二カ国は休戦状態にあるが、戦国時代において条約など口約束ほどに軽いものだ。現に彼らはルネタイト公国であるという証拠を残しておらず、追求しても、「いや、うちと山賊は関係ないから。うちを山賊呼ばわりとはけしからん! そのような挑発行為断固として認めん。戦争じゃ!」と分けのわからん理屈で戦争を吹っかけてくる。
今までの貴族社会では武をもって武を制す。仁義や義理を慎ましく、礼儀正しく戦争を行っていたのをベルネッタ侯爵がその常識を覆すことになった。彼の育ちは貧しい没落寸前の貴族エーリス家の生まれであり、貴族でありながら、質素な暮らしをしていた。おまけに土地柄か、穀物の収穫も少なく、幼少時のベルネッタ少年の目には食料の備蓄や、予算を必死で計算する父の姿が焼きついていた。
ベルネッタ侯爵が16歳になった頃、食料を備蓄していた倉庫を盗賊に襲われた事件があった。その年は流石に領民も我慢出来ず、もう一歩で暴動になるところまでとなったが、ベルネッタの父ベルエルドは広場で首を吊り自害した。自分で作ったのであろう立て札には、「我に全ての責任あり」とかかれていた。領主が食料を抑えていると思っていた領民もばつが悪くなり、暴動まで発展せず、結果家族を守った形となった。
その後、17歳で領主となったベルネッタは、食料問題の抜本的解決に乗り出した。自分の領地が少ないならば、他から奪えばいい。どうせ奪わなくとも命を落とすのだから、勝負に出て損はないだろう。そう方針転換してから行動は早かった。食料の大切さは、父の命を持って重く感じていたベルネッタは、手始めに家来達を盗賊として、敵国の村々の食料庫だけをを襲わせた。そして、補給が行われても再び奪う。補給が切れたところで行商人に扮し、食料を安く売りながら「貴方達は見捨てられた」「文句を言った方がいい」などデマや煽動を行うなどのマッチポンプを政略的に行い、暴動を引き起こさせる。
こうして彼は30という若さで侯爵まで上り詰めた。そして現在、ルネタイト国王の命により、ランドハルド王国侵略を任されていた。
明日も更新します。




