22:目指す道とは
紅白の鉢巻を巻いたゴブリン達が逸し乱れぬ隊列で、訓練用の先の丸い長槍を構える。エリカがゴブリン達に号令を出すたびに陣形が変わり、敵役のゴブリン達が簡単に取り囲まれてしまった。
「凄い練度だ。消火栓の消防訓練を思い出すなぁ」
「マスター、お見えになったのですか」
「生で見ると迫力が違うね! モニター越しでは良く見てたんだけど、見学しにきちゃった。邪魔かな?」
「邪魔なだなんてとんでもない。兵の士気が上がります! みんな、マスターが働き振りをご覧になられるぞ」
うおおおっと湧き上がる観衆を前に怯みそうになるが、ぐっと踏ん張る。訓練を行っているゴブリンは他のゴブリンよりも体が二回りも大きく、名称もゴブリン・ソルジャーに変わっていた。
エリカと違うところと言えば種族名が違う為か、顔はゴブリンのままであるが、レベルとステータスは伸びてきている。スキルもソルジャーに進化しただけあって、槍術や剣術などレベルは低いが、全員が何らかの戦闘系スキルを所持していた。そのなかでも目を引いたのが「隠密」のスキルと「気配感知」のスキルをもった個体だ。数を数えたら指折り程度だが、斥候や暗殺といった、少数部隊の併設も考え、エリカにその旨を伝えた。
ダンジョンの薄暗い洞窟の中、ただでさえ気配がわかり辛い状況での隠密は効力が高いだろう。敵リーダーもしくは、回復役のヒーラーを一撃で仕留められれば相手パーティーの戦力はガタ落ちだろう。
「って俺はゲーム感覚で対人戦の対策してるけど、別の世界とはいえ人間とは争いたくないね」
「ここまで戦術的に育てられたゴブリンというのも自然界では見られませんので、発見された場合、人間達からはかなり脅威に感じられる筈です」
「そうなると、冒険者だけでなく、軍隊も出てきてガチな戦争になってしまうんじゃないか? 中途半端な戦力ではジリ貧だな。今の経理状況ならば、外からの利益がなくてもやっていけるからまだいいな」
「ここまで自給自足なダンジョンもまた珍しいです。大概のマスターは細かい計算や作業を嫌いますので……」
「そもそもダンジョンマスターって人間なの?」
「マスターの場合、人間からの転生は非常に珍しいです。他のマスターも生命体であるには違いありませんが、ダンジョンの本能である、外からの捕食を前提に活動します」
「ゲームのコンピューターみたいに、予め決められたプログラムで動いているって感じか」
「イメージとしてはそのようなところです。より細かく、適切な指示が設定されていればダンジョンは大きく成長するでしょう」
「成る程。思考を持たないダンジョンが多いということか」




