初日終了~テスト勉強?
食堂をでた後、椎名が「のぞみちゃんって、佐藤くんの妹さん?」と聞いてきた。
だから豊は「そうだよ」とこたえた。
のぞみの名前が出てきたから、ついでだし、豊は音子に聞いてみた。
「のぞみちゃんの前世が三毛猫らしいんだけど、音子には分かるか?」
音子でも、そんな事分かる訳ないとは思っていたが、とりあえず豊は聞いた。
すると予想どおり「前世なんて知らないのさ。」と、音子から返事が返ってきた。
どうでもいい話だと思ったので、その話はそれで終わった。
昼休みの後は、体育の授業だった。
流石に女子の着替えにまではついて行けないので、豊は後の事を椎名に頼んだ。
「椎名、音子の事頼む。」
すると椎名は、笑顔で「うんw」とこたえ「音子ちゃんいこw」と、音子の手を引いた。
手を繋がれて嬉しいようで、音子は大きく手を振って、椎名と共に更衣室へと向かった。
体育の授業は、音子の独壇場だった。
走るスピードは並じゃなかった。
豊は心の中で「あまりめだつなよ!」と、音子に念をおくった。
当然だが、全く効果はなかった。
まあとりあえず、四足で走らなくて良かったと、豊は前向きに考えた。
6時間目は、理科の実験だった。
人々は忙しい時、猫の手も借りたいとか言うけれど、理科の実験には、音子の手はいらなかった。
危うく頭が雷様になるところを、椎名のファインプレーでかろうじて回避できた。
音子との実験は命がけだと豊は思った。
こうしてなんとか、初日の授業は全て終了した。
さて、帰宅は二人一緒に帰った。
音子を一人で帰らせるなんて、危険極まりないからだ。
だけど、一緒に帰って大丈夫なのだろうかと豊は思った。
だいたい、幸恵のマンションで暮らす理由って、男と一緒に暮らしてるなんて事がばれるとマズイからでは無かっただろうか。
それは豊が勝手に思っていた事だが、今の現状もあまり変わっているように感じない。
他に2人いるとは言え、男と一緒にくらしているのだから。
まあ部屋も別だし、マンションが同じでも部屋が違う事はあるだろうし、状況はかなりマシなのだけれど。
豊は少し腑に落ちなかったが、幸恵がそれで良いなら、別にどうでも良いと結論をだした。
部屋に入ると、幸恵が満面の笑みで豊と音子を迎えた。
豊はその笑顔に、不覚にも萌えてしまった。
音子もそうだが、幸恵の顔も、豊にとっては当然凄く好みの顔である。
正直、音子がもう少し普通で、猫じゃなければ、幸恵が怪しい呪文を言わなければ、二人は正に豊にとって、理想の女の子だった。
二人合わせて2で割れば、良い感じになるのでは、なんて事を豊は思った。
豊は一旦部屋に荷物を置いて、着替えてからリビングに戻ってくると、音子が嬉しそうに学校での出来事を幸恵に話していた。
「先生はみんな、生徒をイジメるのが好きなのさ。ちょっと喋っただけで怒るのさ。」
音子の言葉どおり、音子は何度も先生に怒られていた。
「人間はおかしいのさ。なんでわざわざ毒煙が出るものを使うのさ。」
酸性のブリーチとアルカリ性洗剤を混ぜていた。
「4時間目は地獄なのさ。断食させられたのさ。」
音子は朝から、全力でカロリー消費していた。
そんな音子の話を、これまた嬉しそうに幸恵は聞いていた。
豊はそんな二人を、ボーっと眺めていた。
可愛い女の子の、楽しそうな姿を見ているだけで、豊は幸せだった。
チラッとテレビを見てみると、アイドルグループが楽しそうに歌っている。
勉強ばかりしていた豊には、それが誰なのか分からないし興味もない。
「だから」なのか、それとも「だけど」なのか、豊は目の前の二人を見ている方が良かった。
でも、いくら心が和むと言っても、ずっと見てるわけにはいかない。
やらなければならない事は沢山あるのだ。
豊は一人リビングを出て、トレーニングルームで汗を流した。
30分ほど頑張った。
豊にしてはよくやった。
フラフラだったが、夕飯前には、宿題と明日の予習も済ませた。
夕飯時間になっても、音子と幸恵はまだ話をしていた。
よくもまあ話す事があるものだと豊は思った。
夕飯を済ませて、豊はようやく音子と二人になった。
学校がいくら楽しくても、本当の目的を忘れる音子ではなかった。
豊の部屋で、パソコンを使って、見た事のある景色を探した。
ベクトル線上に戻って発着地点を探す作業は、安田町、すなわちこの町から再開した。
結局、あの猫ウイルスのメッセージは、音子と明子を、豊と幸恵を出会わせる役にはたったが、本当に待っていたのは誰だったのだろうかと、そんな話もした。
この日は早めに切り上げて、この町の発着地点を見つけて、ラインを引くことで作業は終わった。
理由は、音子が学校に通い始めた事に関係している。
そう、勉強である。
宿題ももちろんやらなければならないし、もうすぐ定期試験もある。
豊は先ほど、幸恵に一応確認をとっていた。
宿題や試験についてだ。
「そのあたりはおまかせしますぅ。やりたく無ければしなくても良いしぃ、試験の時は休んでもらってもかまいません。」
幸恵はそう言っていた。
だけど、その話を聞いていた明子の表情を見る限り、悪い点数をとるくらいなら休んでくれと言いたげであった。
宿題も、できればやって欲しいのだろう。
豊には、幸恵がどういった人なのかはわからないが、相当な金持ちのお嬢様に感じている。
そういう人は、やはり最低限、しっかりしていないとマズイ事もあるのではないだろうか。
豊の想像ではあるが、此処は豊の世界である。
この時の明子は、正に豊の思う通りの気持ちだった。
そんなわけで豊は、音子に宿題をやらせようとした。
だけど、音子に勉強に対する知識は全くと言っていいほどなかった。
予想どおり、バカだったのである。
だから豊は、自分のやった宿題を、とりあえず写させた。
次に、テスト勉強である。
が、豊は今までテストだからといって、特に勉強をする事はなかった。
何故なら、毎日勉強していたから。
当然、テスト範囲が何処だとか、考えた事も無いし知りもしない。
故に、誰かに聞く必要があった。
そこで何故か思いついたのが、椎名であった。
普段なら迷わず三杯であったが、一々何か言われそうだし、せっかくゲットしたメールアドレスを、使わないまま放っておくのももったいない。
豊はちょっとドキドキしながら椎名にメールを送った。
すぐに返事が返ってきた。
タイトルは「メールキタ - .∵・(゜∀゜)・∵. - ッ!!」だったわけだが、豊には意味不明だった。
もちろんこれは、豊からのメールに喜びを表しているわけだが、そんな風に考えられる豊ではなかった。
テスト範囲を確認すると、豊は「ありがとう」と一言メールを返すと、早速音子の勉強に取り掛かった。
「まず社会は、テスト範囲全てを、丸暗記しよう。」
豊は、音子の記憶力だけは優れている事を知っていたので、とにかく覚えさせる事にした。
「数学は、教科書の基本問題を、少しアレンジしたものを丸暗記しよう。」
数学は、教科書の基本問題の数字を、少しだけ変えたような問題が出る事が多い。
「英語も、教科書で使われているものを全て暗記だ。使われている単語と意味も。」
英語の先生は、教科書の英文をそのまま使ってくる人だった。
こんな感じで、豊は「これを覚えればいけると思われるポイント」を抜きだし、音子に覚えさせていった。
一息ついた時には、登校初日は終了していた。




