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姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています  作者: もちもちほっぺ


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グルメの幅が広がるにつれて、リリアーナは少しずつ変化していた。


髪が、変わり始めていた。

ぱさぱさで砂のような色だった髪に、かすかな艶が生まれ始めた。

まだわずかで、よほど近くで見なければわからない程度だったが、リリアーナ自身には感じられた。梳かす時の指通りが、少し変わった。


肌も、変わり始めていた。

灰色がかっていた顔色が、わずかに違って見えた。頬に、血の気が戻り始めているような。


でも一番変わったのは、体の内側だった。

力が、あった。

以前は一日の雑用を終えると、地下室に倒れ込むように帰っていた。今は疲れても、疲れきるまでではなかった。

たちくらみが起きない。頭がぼんやりしない。足元がふらつかない。


虫を食べると、力が湧いた。

なぜかはわからなかった。

ただ、ありがたかった。


ある夕方、マルタがいつもより重い荷物を持ってきた。


「お嬢様、これを地下の倉庫まで運んでいただけますか。男手が足りなくて」


木箱だった。両手で抱えてちょうどいいくらいの大きさで、中身は詰まっていた。

以前のリリアーナなら、途中でへたり込んでいたかもしれなかった。


でも今日は、運べた。

階段も、降りられた。

倉庫に置いて、戻ってきた。

マルタが少し目を細めた。


「……お嬢様、最近顔色がよろしいですね」


「そうですか」


「何か召し上がってますか」


リリアーナは少し考えた。


「庭のものを、少し」


マルタはそれ以上聞かなかった。


「そうですか」と言って、出ていった。

リリアーナは庭に出た。

夕暮れの光の中で、草むらにバッタが一匹いた。

捕まえて、口に入れた。


やっぱり香ばしい。夕方のバッタは、朝より少し温かい気がする。日差しを浴びていたからかもしれない。悪くない。むしろ、朝より好きかも。


リリアーナは草むらにしゃがんで、夕暮れの庭を眺めた。

乾いた土が、斜めの光を受けてうっすらと金色に見えた。


庭師が遠くで水をやっていた。でも土はなかなか、水を吸わない。

リリアーナはしゃがんだまま、土に指を触れた。

ぱさぱさとした、乾いた感触が返ってきた。


何かが足りないような気がした。

何が足りないのかは、わからなかった。

ただ、この土がいつかちゃんと作物を育てる日が来ればいいと、リリアーナは思った。


草むらで、またバッタが鳴いた。





イザベラが夜会から帰ってきたのは、深夜のことだった。

馬車の音がして、玄関の扉が開く音がして、それから屋敷が静かになった。


翌朝、イザベラは朝食に現れなかった。

昼になっても、部屋から出てこなかった。

侍女が食事を運んでいくのが廊下越しに聞こえた。扉が開いて、閉まった。それだけだった。


リリアーナには、何があったかだいたいわかった。

うまくいかなかったのだろう。王子との距離が縮まらなかったのだろう。あれだけ準備して、あれだけ期待して、それでも。


廊下を通り過ぎる時、イザベラの部屋の扉はいつも閉まっていた。

リリアーナに食べかけを持ってくることも、しばらくなかった。


数日が経った。

イザベラは少しずつ部屋から出るようになったが、機嫌は戻っていなかった。食堂で顔を合わせても、リリアーナを見ない。廊下ですれ違っても、何も言わない。


意地悪をされないのは楽だったが、食事が来なかった。

マルタも忙しそうにしていて、雑用の押し付けが減っていた。雑用が減るのはありがたいはずなのに、雑用がなければ食事の駆け引きもない。

リリアーナは庭に出た。


草むらにしゃがんで、土を少し掘った。

芋虫がいた。

丸々と太った、白くて大きな芋虫だった。今日は特別に大きかった。手のひらで転がすと、のんびりと丸まった。

口に入れた。


濃い。今日は特に濃い。カスタードよりもっと深みがある。どこか甘い木の根の香りがして……これは当たりだ。今週で一番の当たりかもしれない。もう一匹いないかな。


夢中になっていた。

だから、気づかなかった。


砂利を踏む足音が、近づいてきていたことに。


足音が、すぐそこで止まった。

リリアーナは顔を上げた。

振り向いた。

男が立っていた。


濃紺の上着。切れ長の目。まっすぐな背筋。

クライド・アルスターだった。

二人の目が、合った。


クライドの目が、リリアーナの口元に向いた。

芋虫の後半分が、口の外でうねうねと動いていた。


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