13
翌日から、リリアーナは庭に出るようになった。
理由は単純だった。地下室にいるより、庭の方が虫が多い。それだけだった。
最初の朝、リリアーナは庭の隅にしゃがんで、土を少しだけ掘った。
芋虫がいた。
白くて、丸々として、土の中でのんびりと丸まっていた。リリアーナはそれをそっとつまみ上げて、しばらく眺めた。
アリより、ずっと大きかった。
口に入れた。
濃い。
濃くて、なめらかで……これは、クリームだ。生クリームをそのまま口に入れたような、でももっと深みがある。カスタードに近いかもしれない。甘くて、ほんのり温かくて……。
リリアーナは少しの間、口の中の感覚を確かめた。
それからもう一匹、土の中を探した。
また、いた。
また、食べた。
また、濃かった。
リリアーナは土の上に座り込んで、しばらくの間、夢中になった。
その日の午後、マルタが洗濯物の山を持ってきた。
「お嬢様、これをお願いできますか」
「わかりました」
洗濯物を抱えて、井戸へ向かった。
いつもなら、ここで頭がぼんやりしていた。重い洗濯物を抱えて歩くと、足元がふらついた。でも今日は違った。
足元が、しっかりしていた。
頭が、澄んでいた。
体の芯に、かすかな力が満ちているような感覚があった。
リリアーナは洗濯物を井戸の縁に置いて、少し考えた。
芋虫のおかげだろうか。
おそらく、そうだった。
数日が経った。
リリアーナの食事は相変わらずだった。
イザベラが気まぐれに食べかけを持ってくる日もあれば、何も来ない日もある。マルタが雑用の合間に、古いパンを一切れ置いていく日もある。
でも以前と、少し違った。
たちくらみが、起きなくなった。
重い本を抱えて脚立に上っても、頭が澄んでいた。薪を割っても、腕が疲れるだけで目眩はしなかった。廊下を雑巾がけしながら歩いても、足元がしっかりしていた。
虫を食べると、力が湧いた。
不思議だったが、事実だった。
リリアーナは毎朝、庭に出るようになった。
ある朝、草むらでバッタを見つけた。
緑色の、ぴょんぴょんと跳ねるやつだ。リリアーナは少し追いかけて、手で捕まえた。
口に入れた。
かたい。最初はかたい。でも噛むと……香ばしい。ナッツみたいな香りがする。クルミに近いかもしれない。いや、もう少し軽い。アーモンドかな。サクサクして、後から香ばしさが広がって……悪くない。むしろ、かなりいい。
リリアーナはもう一匹、草むらを探した。
また捕まえた。
また食べた。
やっぱり香ばしかった。
また別の朝、花壇の縁を歩いていたダンゴムシを見つけた。
丸まっていた。小さくて、灰色で、つやつやとしていた。
少し躊躇った。
でも口に入れた。
……土っぽい。最初は土っぽい。でも後から、なんだろう、きのこ? きのこに近い、深い香りが残る。
クワガタほどではないけれど、土の香りが強い。これは……好みが分かれるかもしれない。私はあまり得意ではないかも。
リリアーナは少し考えて、結論を出した。
ダンゴムシは、あまり得意ではない。
でも食べられないことはない。
蝶々を食べたのは、うっかりだった。
庭の花壇に止まっていた蝶々を、リリアーナはなんとなく追いかけた。遊びのつもりで、そういう気分だった。
捕まえた。
手の中に、蝶々がいた。
羽がふわふわと動いた。
食べてみようか、とリリアーナは思った。
そっと口に入れた。
……薄い。羽がふわふわして、最初は口の中でどこにいるかわからない。でも噛むと、ほんのり花の香りがする。何の花を食べていたのかな。
甘い花だったのかも。後味が、かすかに甘い。羽の食感は……ないに等しい。
これは食事というより、口直しに近いかもしれない。食後にいいかも。
リリアーナは手についた鱗粉を見た。
きらきらと、光っていた。
綺麗だと思った。
食べてしまって、少し申し訳なかった。




