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【未来視】でジャンヌ・ダルクを火刑から救った俺、歴史から消されたが最強の観測能力で世界を奪い返す ~奪取の因果:ラスト・ディシジョン~  作者: ガドウ@歴史改変チート


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第七話:選んだ代償

空が 落ちてくる。

 そう錯覚するほどの圧力が 頭上から無慈悲に叩きつけられた。


「――排除開始」


正しい九条廉 の声。

 その一言が放たれた瞬間 世界のルールは強制的に書き換えられた。


ドンッ!!


鼓膜を揺らす衝撃。

 石畳が円形に陥没し ジャンヌの身体が無残に吹き飛んだ。


「――っ!!」


「ジャンヌ!!」


廉が地を蹴り 駆け出す。

 だが その刹那。


(……速すぎる!)


未来が 追いつかない。

 視界には映っている。だが 身体が対応を拒絶している。


『――確定』


虚空から 白い仮面が次々と出現した。

 数が違いすぎる。

 一体や二体ではない。

 十。二十。

 それは瞬く間に増殖し 広場を埋め尽くしていく。


「……ふざけんな」


廉の奥歯が軋んだ。


(こんなもの 避けきれるわけがねえ)


脳内を埋め尽くす 死のログ。

 回避不能。

 完全な 詰み 。


「九条さん……!」


ボロボロになりながらも ジャンヌが立ち上がる。

 その顔に 恐怖の色はない。

 だが。


(無理だ。今のままじゃ 死ぬ)


廉は冷徹に理解していた。

 これは 勝てる戦い ではない。


「撤退だ!」


「えっ……!」


「今は勝てねえ! 引くぞ!」


ジャンヌが わずかに息を呑んだ。

 その一瞬の迷い。

 過酷な戦場において それは致命的な隙となった。


『――命中』


見えない断頭の刃が 容赦なく振り下ろされる。


「――っ!!」


ジャンヌの身体が 激しくのけぞった。

 石畳の上に 鮮烈な赤が舞う。


「ジャンヌ!!」


廉の声が 悲鳴となって裂けた。


(クソ……クソッ!!)


未来は視えていた。

 視えていながら 間に合わなかった 。

 その残酷な現実が 廉の喉を強く締め付ける。


「……九条、さん……」


膝をつき ジャンヌがよろめく。


「ごめんなさい……私が……」


「謝るな!!」


廉は咆哮した。


「まだ終わってねえ!!」


だが 吠える言葉とは裏腹に。

 現実は着実に 終わり へと向かっていた。


『――排除完了』


白い仮面たちが 包囲網を縮める。

 逃げ場はない。

 選択肢さえも残されていない。

 完全なる絶望。


「……そうかよ」


廉は 静かに熱を帯びた息を吐き出した。

 濁った瞳に どす黒い怒りが宿る。


「なら――」


右目が 爆ぜるように発光した。

 未来が 脳髄に強引に流れ込んでくる。

 限界を突破し 思考回路が焼き切れるほどの負荷。


(どこだ……どこにある……!)


暗黒の未来図を 狂ったように指先で手繰る。

 勝てる未来を。

 たった一つ 針の穴を通すような奇跡を。


「……あった」


微かな 生存の可能性。

 確率は限りなくゼロに近い。だが 確かにそこに存在している。


「ジャンヌ!」


「……はい……」


応える声は弱々しい。

 それでも 彼女は瞳の光を失っていなかった。


「俺を見ろ」


ジャンヌが顔を上げ 廉を真っ直ぐに捉える。


「次で決めるぞ」


「……はい」


「俺が 不可能な未来 を作る」


廉は 奥歯が砕けるほどに食いしばった。


「お前が それを奪い取れ」


ジャンヌが 小さく 確かな意思を込めて頷く。


「……任せてください」


その瞬間 白い仮面が一斉に踏み込んできた。

 絶命の未来が 目前まで迫る。

 だが。


「今だ!!」


廉が地を蹴った。

 本来の摂理ではあり得ない 異質な軌道。

 未来を ねじ曲げる 超越的な挙動。

 その過酷な代償として。

 廉の右目から 鮮血が溢れ出した。


「――っ!!」


視界が赤く染まり 未来のログが崩壊していく。

 だが。


(これでいい……。道は開いた!)


刹那。

 存在してはいけない未来 が現実の隙間に生まれた。


「ジャンヌ!!」


「――はい!!」


ジャンヌが 最後の力を振り絞って跳躍する。

 その拳に 全ての想いを乗せた光が宿る。


「――奪います!!」


空間を抉る一撃。


バキンッ!!


世界が 悲鳴を上げて割れた。

 白い仮面の一部が その衝撃に巻き込まれ消滅する。


だが。

 それでも足りない。

 敵の数が あまりにも多すぎた。


「……くそ……が……」


廉の膝が折れ 視界が急速に闇へと沈んでいく。


「九条さん!!」


ジャンヌの叫びが 遠く霞む。


『――排除継続』


無慈悲な追撃。

 ついに 幕が下りようとしたその時であった。


「……そこまでだ」


静謐な声が 戦場に染み渡る。

 世界が 完全に停止した。

 白い仮面たちの動きが 物理的に凍りついたのだ。


空気が 絶対零度へと急降下する。


「……え……?」


ジャンヌが顔を上げ そこに立つ影を見据えた。

 もう一人のジャンヌ。

 選ばれなかった未来 が 冷徹な佇まいでそこにいた。


「……あなた……」


彼女は ゆっくりと二人に歩み寄る。


「これ以上は 壊れるだけです」


「……どういう、つもりだ……」


廉が かすれた声を搾り出す。


「あなたたちは まだ弱すぎる」


その指摘は 冷酷なまでに事実であった。


「このまま戦えば。二人とも 跡形もなく消えることになる」


沈黙。

 廉は拳を地面に叩きつけた。

 否定できない己の無力さが 胸を焦がす。


「……撤退です」


少女が告げた。

 ジャンヌが 廉の顔を覗き込む。

 迷い。葛藤。そして。


「……分かりました」


彼女は 小さく だが強く決断を下した。

 廉も 苦い沈黙の末に拳を握り直す。


「……クソッ」


言いたいことは山ほどあった。だが 今はそれどころではない。

 負けたのだ。完膚なきまでに。


「行きます」


少女が虚空に手を差し出し 空間が歪んだ。

 未知の領域への道が 口を開く。


「九条さん」


ジャンヌが廉の肩を貸し 支える。


「……まだ 終わってはいませんから」


その力強い言葉に 廉はわずかに口角を上げた。


「ああ」


血に塗れた身体を引き摺り 立ち上がる。


「分かってるよ」


そして 背後に立ち尽くす 正しい九条廉 を振り返った。

 あちらには感情などない。ただ 装置としてそこにあるだけ。

 だが。


「覚えとけよ」


廉は ありったけの憎悪を込めて吐き捨てた。


「次は 必ず勝つ」


その言葉を残し 三人は歪みの向こうへと姿を消した。


残されたのは 死の静寂。


「……学習を確認」


正しい九条廉 が 淡々と呟く。


「次回 排除成功率を再定義。追跡を継続する」


空間が閉じ 世界は何事もなかったかのように平穏を取り戻した。

 だが 確かに。

 何かが 取り返しのつかないほどに変質していた。

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