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【未来視】でジャンヌ・ダルクを火刑から救った俺、歴史から消されたが最強の観測能力で世界を奪い返す ~奪取の因果:ラスト・ディシジョン~  作者: ガドウ@歴史改変チート


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第三話:もう一人の俺が、正しさを執行する

白い世界に 鮮やかな色彩が奔流となって流れ込む。


崩壊したはずの空間は 再び 歴史 という名の牢獄へと再構築されていった。

 足元に広がる石畳。

 古びた中世の街並み。

 遠くから聞こえてくる人々のざわめき。


だが 何かが決定的に狂っている。


(……微妙にズレてやがる)


廉はゆっくりと立ち上がり 周囲の解像度を確かめるように目を細めた。


「ジャンヌ、大丈夫か」


「はい……ここは、一体……?」


「わからん。だが――」


周囲を見回した廉は 即座にその異常の正体に気づいた。

 道行く通行人たちは 物珍しそうにジャンヌへ視線を向ける。

 だが その隣に立つ廉には 誰一人として視線を向けようとしない。


まるで 最初からそこに誰もいないかのように。


「……俺がいないことになってるな、この世界では」


「そんな……!」


ジャンヌが 縋り付くように廉の手を強く握りしめる。


「私は見えています! ここにいます!」


「ああ。お前に見えてるなら それで十分だ」


その時であった。

 背後から 聞き覚えのある声が投げかけられる。


「――対象ジャンヌ・ダルクを確認」


自分の声だ。

 だが そこには一切の熱も 迷いも含まれていない。


廉が振り返った先に立っていたのは 目を疑うような光景であった。


「……は?」


自分だ。

 汚れ一つない白いスーツに身を包み 無機質な表情を浮かべた 自分自身 がそこにいた。

 その瞳には 人間らしい揺らぎなど欠片も存在しない。


「九条廉……さま?」


ジャンヌが困惑し 二人の廉を交互に見つめる。


「違う」


廉は吐き捨てるように即答した。


「あれは俺じゃない。あれは 正しい俺 だ」


秩序の側に立つ 機構の一部。


「対象ジャンヌ・ダルク」


もう一人の自分は 淡々と宣告を下す。


「あなたは既に死亡しているべき存在です。生存は許容されません」


その声には 殺意さえも宿っていない。ただの処理。


「これより 歴史の修正を開始します」


ジャンヌが小さく息を呑んだ。


「……また 殺されるんですか」


その震える言葉を遮るように 廉は静かに一歩前へと踏み出す。


「やらせねえよ」


だが。

 もう一人の自分は 正面に立つ廉を視界にさえ入れていなかった。

 完全に無視し その存在を演算から除外している。


(……やっぱりか)


存在していないものは 認識されない。

 それが この世界の鉄のルール。


「対象の抵抗を確認。排除プロトコルを起動」


瞬間 空間が無慈悲に引き裂かれた。

 白い仮面が 再びその異様な姿を現す。


『――排除』


(……チッ、来るか)


右目に 最悪の結末が流れ込む。


――ジャンヌ死亡

――回避不能


「ジャンヌ、下がれ!」


「はい!」


ジャンヌが地を蹴り 後方へ跳ぶ。

 だが その回避行動の先さえも。


(ダメだ 全部塞がれてる)


四方を死に囲まれている。

 逃げ場はない。

 完全な詰みだ。


「九条さん……!」


ジャンヌが振り返る。

 その瞳に浮かんでいるのは 死への恐怖ではない。

 一点の曇りもない 信頼 であった。


(……そうか。なら やるしかねえな)


廉は 深く溜まった息を吐き出した。


「ジャンヌ」


「はい!」


「もう一回やるぞ。今度はただ壊すだけじゃない」


彼女の特異な力を 導火線にする。


「俺が未来を見る」


右目が 焦がれるような光を放った。


「お前が その未来を全部ぶっ壊せ」


ジャンヌが 力強く頷いた。


「はい!」


もう一人の自分が腕を振り上げ 白い仮面が同時に踏み込んでくる。

 廉の脳内に 膨大な死のパターンが濁流となって押し寄せた。


死。

 死。

 死。


だが その絶望的な羅列の中に。


「……あった」


たった一つだけ。

 決定的に性質の違う未来が 混じっていた。


それは。

 俺がいない未来 。

 言い換えれば。

 観測されていない 空白だ。


「ジャンヌ、左前だ!」


「はい!」


二人の鼓動が重なり 同時に地面を蹴り飛ばした。


次の瞬間 確定していた未来が派手に砕け散る。

 ジャンヌの掌が 虚空の理を叩き割った。


「――壊します!」


分厚いガラスが砕けるような 甲高い音が響き渡る。

 そこに在るはずだった 死 が霧散していく。


「な……!? 因果の破壊だと……?」


もう一人の自分が 初めてその端正な顔を歪めた。


「理解できねえだろ。こっちはマニュアル通りじゃねえんだよ」


廉は不敵に笑い 言い放った。


「未来ってのはな 最初から決まってるもんじゃねえ」


ジャンヌが その隣で言葉を重ねる。


「選ぶものです!」


二人の声が重なった瞬間 世界が大きく鳴動した。


「――エラー」


もう一人の自分の声が わずかにノイズを帯びる。


「観測不能領域の拡大を確認。再計算不能」


廉は 確かな手応えを感じ取った。


「行けるな」


「はい!」


二人は同時に駆け出した。

 もう一人の自分が 慌てて手を伸ばしてくる。


「逃走は無意味です」


だが。

 その指先が届くことはない。

 未来が存在しない領域では 届く という結果さえも生成されないのだから。


「どこへ行くつもりだ」


背後から 冷徹な問いが飛んでくる。

 廉は振り返ることなく ただ一言だけを返した。


「決まってんだろ」


ジャンヌと手を繋ぎ そのまま未知の深淵へと踏み込む。


「俺たちが生きられる未来へ行く」


背後で世界が音を立てて崩れ 再構築を繰り返す。

 その果てにあるのは 誰にも観測されていない 可能性 の原野。


ジャンヌが 隣で小さく呟いた。


「……九条さん」


「なんだ」


「私 もう怖くありません」


廉は 不器用に少しだけ笑った。


「そうか」


そして 真っ直ぐに前を見据えた。


「じゃあ次は――」


新たな戦いの予感を その胸に宿しながら。


「勝ちに行くぞ」

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