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【未来視】でジャンヌ・ダルクを火刑から救った俺、歴史から消されたが最強の観測能力で世界を奪い返す ~奪取の因果:ラスト・ディシジョン~  作者: ガドウ@歴史改変チート


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第二十五話:最終決戦

空間が、完全に閉ざされた。

 この断絶された世界の果てに、もはや逃げ場など存在しない。


「――最終戦闘、開始。最適個体の確定プロセスへ移行する」


その一言で、均衡は一気に崩れ去った。


「――っ!!」


最初に動いたのは、リリィだった。

 狂気じみた速度。迷いなど、その少女の辞書には存在しない。


「もらうよ。それが一番手っ取り早い」


一直線。狙いはただ一つ。ジャンヌが抱く 核 。


「来ます、九条さん!!」


「分かってる、させねえよ!!」


廉が即座に割り込み、右目で未来の糸を強引に手繰り寄せる。

 だが。


「遅い。君の動き、もう飽きちゃった」


リリィの速度が、廉の予測を上回る。

 歪んだ空間を滑るようにすり抜け、その手がジャンヌの胸元へ届く。


(……不味い、届く――!!)


その刹那。

「――そこだッ!!」


廉が、文字通り己の因果を削りながら、無理やり未来をねじ曲げた。

 代償。右目の奥が焼けるように熱くなり、視界が真っ赤な鮮血に染まる。

 だが、その強引な介入が軌道をズラした。

 リリィの手が、数ミリの差で空を切る。


「……またそれ? ほんとしつこいんだから」


リリィが不満げに口を尖らせ、残酷な笑みを浮かべる。


「ほんと、反吐が出るくらいしぶといね」


「うるせえ。てめえの思い通りにはさせねえよ」


廉が吐き捨てる。その背後。


「――排除。領域の浄化を優先する」


正しい九条廉 が、ついにその重い腰を上げた。

 空間そのものが圧縮される。全方位からの不可視の圧力。逃げ場など、最初から設定されていない。


「――っ!!」


ジャンヌが、圧倒的な 格 の差に耐えきれず膝をつく。


「……無理……身体が、動かない……!」


「立て!! ここで終わったら、アルトの野郎に笑われるぞ!!」


廉の怒号。

(ここで終わって堪るかよ……!)


その時。意外な動きを見せたのはリリィだった。


「……邪魔。あんた、うるさいよ」


対象変更。リリィの殺意が、ジャンヌではなく 正しい九条廉 へと向けられる。


「――そっちが先。一番強いのを喰うのが、一番楽しい」


迷わず突っ込む。蓄積された未来を食らい、暴走気味の出力を叩きつける。

 だが。


「無意味。存在の位階が違いすぎる」


冷淡な一言。

 リリィの動きが、糸の切れた人形のように静止した。


「……は?」


未来が、成立すらしない。攻撃という事象そのものが抹消される。


「――排除」


無機質な白光。

 リリィの身体が、紙屑のように無造作に弾き飛ばされた。


「……っ!!」


地面に叩きつけられ、激しく転がるリリィ。


「……あは、こんなの……」


初めて見せる、明確な劣勢。全身から可能性の残滓が漏れ出し、輪郭が揺らぐ。


「……つまんないな。全然、笑えない」


ゆらりと立ち上がる少女。その瞳には、底知れない苛立ちと渇き。


「……でもさ」


彼女は、血の混じった唾を吐き捨てて笑った。


「ここで終わるの、もっとつまんないんだよね」


ジャンヌが、その異様な気迫に息を呑む。


「……あなた……」


リリィが、こちらを振り返った。その瞳は、いつになく真剣だった。


「貸し、一つ。絶対返してよね」


理解する暇もなかった。

「――全部、あげる」


リリィが、己のすべてを解き放った。

 奪ってきた未来。ストックしてきた無数の命。そのすべてを燃料に、自爆に近い出力を一点に集中させる。


「――っ!!」


空間が、悲鳴を上げるように激しく歪曲した。

  正しい九条廉 の動きが、その混沌に飲み込まれ、一瞬だけ停止する。


「……今だよ。逃したら、次は無いから」


掠れた、最後の声。

 廉は目を見開いた。


(……この女、最初から……)


「ジャンヌ!! 今だッ!!」


「はい!!」


ジャンヌが、己の中に眠る全未来を掴み取った。

 もう、一歩も引かない。


「――奪い返します!!」


一直線の突撃。迷いを捨て、光の矢となって 正しい九条廉 の懐へ。


その瞬間。リリィの身体が、砂の城のように崩れ始めた。


「……あーあ。やっぱ、使い切るとこうなっちゃうんだ」


消えゆく意識の中、彼女は愉しげに笑った。


「……でも。最後だけは、面白かったかな」


そして。

 略奪に生きた少女は、その存在を完全に消失させた。


「……っ……!」


ジャンヌの瞳に、熱いものが溢れる。

 だが、止まらない。止まってはいけない。


「――行きます!!」


死を覚悟した一撃。その指先が、上位存在の因果に触れる。


「――干渉を確認」


正しい九条廉 が、淡々と呟く。


「だが、不完全。出力が足りない」


反撃の挙動。

「――排除。不純な意志を抹消する」


振り下ろされる手。

(間に合わない――!!)


その時。

「――そこだぁぁぁ!!」


廉が、右目の視力を、そして己の 存在 そのものを代償に、あり得ない角度から因果を蹴り上げた。

 強制的な割り込み。あり得ないタイミングでの干渉。


「……がっ……あ……!!」


代償の激痛が廉を襲う。だが、その一瞬の ズレ が、ジャンヌに奇跡をもたらした。


ジャンヌの手が、深く、完全に、 正しい九条廉 の核へと食い込む。


「――奪った!!」


閃光。

  正しい九条廉 の動きが、初めて完全に停止した。


沈黙。

 そして、ひび割れるような音とともに。


「……なるほど。到達、したか……。不確定要素の勝利を、承認する」


小さく、満足げな呟きを残し。

 ヤツの身体が、粒子となって崩れ始めた。

 完全な消滅ではない。だが、その 機能 は永遠に沈黙する。


静寂。

 荒々しい呼吸の音だけが、白く染まった世界に響く。


「……はぁ……はぁ……」


ジャンヌが、その場に力なく崩れ落ちた。


「……終わった……の、ですか……?」


廉も、血に濡れた顔で膝をつく。


「……ああ。ひとまず、最悪な奴らは片付いた」


長い、長い息を吐く。

 だが。

 まだ、すべてが終わったわけではない。


目の前には、浮遊する巨大な 核 。

 そして、突きつけられた二つの道。


「……九条さん」


ジャンヌが、複雑な光を放つ核を見つめる。

 そこには、これまで失われた者たちの未来が、静かに、そして重く宿っている。


「……私たちは、どうすればいいのでしょうか」


沈黙。

 廉は、焼けつくような右目を押さえながら。


「……決めるのは、お前だ」


ジャンヌが、驚愕に目を見開く。


「……え? 九条さんは……」


「そいつは、お前が掴み取ったもんだ。お前の意志が、一番重い」


廉は、視線を逸らさずに静かに続けた。


「俺は、お前が選ぶ道を肯定する。それだけだ」


それは、究極の信頼であり、無慈悲なまでの役割の譲渡。


ジャンヌが、震える指先で核に触れようとする。


統合 して、すべての理となるか。

 拒絶 して、無力な一人の人間に戻るか。


「……私は……」


物語は、ついに最後にして最大の 選択 へと収束する。

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