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【未来視】でジャンヌ・ダルクを火刑から救った俺、歴史から消されたが最強の観測能力で世界を奪い返す ~奪取の因果:ラスト・ディシジョン~  作者: ガドウ@歴史改変チート


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第二十二話:裏切りの確定

静寂が、戦場を支配していた。

 あれほどの狂騒と略奪の嵐が吹き荒れた後とは思えないほど、空気は冷たく澄んでいる。


「……随分と、減ったな」


廉が周囲を見渡し、短く呟く。

 視界に残っているプレイヤーは、もはや数えるほどしかいない。


愉悦を湛えたリリィ。

 無機質な、無言の少女。

 満身創痍の大柄な男。


そして――。


「……生き残ったのは、私たち三人……ですね」


ジャンヌが、隣に立つアルトを含めて小さく言った。

 廉、ジャンヌ、アルト。この地獄を共闘で潜り抜けてきた三人。


だが。


「いいえ。すでに、違いますよ」


アルトが、感情の起伏を一切排した声でそれを否定した。

 その一言で、周囲の空気が一瞬にして凍りつく。


「……やはり、ここで動くか」


廉は、あえて振り向かずに低く応じた。

 背後に立つ男の殺気を感じる。もはや、確認の必要などなかった。


「――ずっとその機会を狙っていたのでしょうね」


ジャンヌもまた、静かに前を見据えたまま言った。

 彼女の声に、以前のような戸惑いや震えはない。


アルトは、わずかに、満足げな笑みを浮かべた。


「ええ」


あっさりと、そして残酷に。


「ここが、論理的な 最適解 です」


沈黙。


「……理由は、今更聞くほどのことでもねえだろうが。一応言ってみろ」


廉が問うと、アルトは教鞭を執るように指を一本立てた。


「単純な話ですよ」


男が一歩、二人の方へ歩み寄る。


「あなたたちが、この場で最も 削られている 。そして、唯一無二の価値を持つ核を持っている。これ以上、何を待つ必要があるのですか」


ジャンヌの拳が、白くなるほど強く握られる。


「……それで、私たちを殺して……」


「 核 を奪い、私がこの世界の理を手にする。ここで幕を引くのが、最も生存効率が高い」


その言葉は、純粋な合理性の結実。

 そして、修復不可能な 敵 としての宣言。


「……アルトさん。それが、あなたの出した答えなのですね」


「はい。迷いはありません。最初から、そのつもりで手を貸していたのですから」


その一言で、脆い信頼の上に成り立っていた共闘は完全に崩壊した。


「……そうかよ。清々しいほどのクズ野郎だ」


廉が、ゆっくりとジャンヌを守るように前に出る。


「分かりやすくて助かるぜ。これで心置きなくなぎ倒せる」


アルトも、洗練された動作で構えを取った。


「ええ。私も、あなたたちの執念深さは高く評価しています」


男の瞳に、わずかな緊張が宿る。だが、そこには一片の躊躇もない。


「――取りますよ。君たちの未来を」


刹那。

 空間が、剃刀で切り裂かれたように鋭く歪んだ。


「――っ!」


ジャンヌが即座に反応する。だが。


(……速い! 今までの戦闘とは、出力が根本から違う!)


温存されていた全戦力。完全に、二人を抹殺しに来ている。


「――無に帰しなさい」


アルトの手が、一直線にジャンヌの核へと伸びる。

 虚飾のない、最短かつ最速の軌道。


「ジャンヌ!!」


「はい!!」


ジャンヌが未来の断片を掴み、回避の筋を読み取る。だが。


「遅い。その先はすでに演算済みです」


アルトが冷酷に告げる。

 回避したはずの地点に、すでに男の指先が先回りしている。


(……完全に、読まれてる……!)


共闘の過程で、彼女の特性を完全に対策されていた。


「……っ!」


ジャンヌの動きが、計算された絶望によって僅かに遅延する。

 その隙。アルトの手が、核の光に届く――。


その直前だった。


「――そこ。割り込み禁止だよ」


軽やかな、場にそぐわない声。

 空間が物理的に捻じ曲がり、アルトの掌が強制的に目標から逸らされた。


「……は?」


アルトが、初めて計算外の事態に表情を崩す。

 視線の先には。


「……リリィ。何のつもりですか、これは」


アルトが低く問い詰める。

 リリィは、退屈そうに肩をすくめて見せた。


「んー。今はまだ、そっちじゃないかなって思っただけ」


軽い。だが、その一言には絶対的な 拒絶 が込められていた。


「……まさか、あなたまで彼らを助けるつもりですか。横取りするつもりなら、私と争うことになりますよ」


「うん。いいよ、それでも」


リリィが、即答する。

 ジャンヌは、荒い息を吐きながらその光景を注視した。


「……また、ぐちゃぐちゃですね……」


三つ巴。いや、四つ巴。

 だが、その混沌に終止符を打つべく、上空から冷徹な波動が降り注ぐ。


「――排除対象、更新」


空気を震わせる、無機質な響き。

 空間の頂点に。


正しい九条廉 。


ヤツは、まだ消えずにそこに君臨していた。


「――全員、抹消対象。領域の再構成を開始する」


その一言で、場の温度が数百度下がったかのような錯覚に陥る。


「……マジかよ」


廉が吐き捨てるように言った。

(全員まとめて、ゴミ箱に捨てる気か……!)


アルトが、わずかに眉をひそめて上空を睨む。


「……最上位存在の介入。これは想定外ですね」


「だろうな。あんたの演算も、あいつの前じゃただのガラクタだ」


廉が皮肉を飛ばす。


「どうするんだよ、裏切り者さんよ」


一瞬の沈黙。その火花散る判断の秒読みの中で。

 アルトが、不本意そうに応えた。


「……一時協力です。再度、ね」


ジャンヌが目を見開く。


「……え!? 今、私たちを殺そうとしたのに?」


「今は、あの 上位存在 の排除を優先すべきです。それが現時点で唯一の生存ルートだ」


どこまでも、吐き気がするほどの合理性。


「……信用なんて、死んでもできるかよ」


廉が言う。


「できませんし、してほしくもありません。ですが」


アルトの瞳が、青白く、鋭く輝く。


「この状況を打破する選択肢は、これ以外に存在しない。違うか」


沈黙。

 リリィが、子供のように楽しそうに笑い声を上げた。


「いいね。面白くなってきた!」


「全員で、神様殺しのボス戦? 最高じゃん」


その言葉。

 それが、この歪みきった戦場の唯一の合意点となった。


「……チッ」


廉が忌々しげに舌打ちし、だが、誰よりも早く獲物を睨みつけた。


「最悪だな。反吐が出るぜ」


構える。


「ジャンヌ」


「はい!」


「一回だけだ。一回だけ、あいつを信じるんじゃなくて、あいつの 計算 だけを利用しろ」


その真意を汲み取り、ジャンヌが力強く頷いた。


「……分かりました。全力を出します!」


アルトも、静かに因果の糸を紡ぎ始める。


「短期決戦で沈めますよ」


リリィも、無邪気な殺意を全開にする。


「オッケー。暴れちゃおう」


空間が、絶望的なまでに歪み始めた。

  正しい九条廉 が、審判を下すように静かに手を上げる。


「――排除開始。存在を、因果の彼方へ」


その一言で、すべてが決定的な崩壊を始めた。


裏切りは、確定した。

 信頼は、塵となって消えた。


だが、それでも。

 彼らは共に戦う。ただ、自分が生き残るという我欲のために。


「……来るぞ。振り落とされるなよ!」


廉の咆哮。

 ジャンヌの覚悟。

 アルトの策略。

 リリィの狂気。


戦いは、ついに最終局面へと突入した。

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