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【未来視】でジャンヌ・ダルクを火刑から救った俺、歴史から消されたが最強の観測能力で世界を奪い返す ~奪取の因果:ラスト・ディシジョン~  作者: ガドウ@歴史改変チート


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第二十話:狩場の開幕

空気が、それまでとは決定的に変質した。


「……ここが」


ジャンヌが、圧倒されるように息を呑む。

 目の前に広がるのは、境界の曖昧な広大な空間。

 だが、単なる広さではない。


「……多いな。笑えない数だぜ」


廉が、右目を鋭く細めて低く言った。

 視界の至る所に、蠢く 気配 。

 一つや二つではない。数十――いや、それ以上の略奪者たちがこの場所に集結していた。


「はい」


アルトが、冷徹な響きで静かに頷く。


「ここが、 第二核領域 。新たな理が産声を上げようとしている中心地です」


その言葉の意味は明確であった。

 プレイヤーたちが、本能的に、あるいは計算によって集まってしまう 収束点 。


「……つまり」


ジャンヌが、震える拳を握りしめながら呟く。


「ここで、すべてが決まるのですね」


「ああ」


廉が答える。


「最悪の、奪い合いだ」


その断定と同時であった。


「――いたぞ、核持ちだ!!」


遠くで野蛮な叫び声が上がり、直後に凄まじい衝突音が響いた。


ドォンッ!!


空間を震わせる爆音。すでに戦いの火蓋は各所で切られている。


「……早いですね。皆、飢えているようだ」


アルトが、周囲の因果の流れを見渡す。


「想定よりも、群がる速度が上がっている」


「当然だ」


廉が、戦場特有の殺気を孕んだ声で言う。


「全員、同じこと考えてやがる。座して死ぬより、奪って生き残る道を選んだ連中だ」


核を取りに来ている。ならば――。


「……九条さん、どう動きますか」


ジャンヌが問い、アルトが一歩前へ踏み出す。


「予定通りです。我々が ルール を支配します」


アルトの瞳に、計算された光が宿る。


「まずは、彼らを 誘導 します」


「……誘導だと?」


「はい。バラバラな戦場を、強制的に絞り込む」


アルトが虚空へ手をかざした。

 未来の糸が、男の指先によってわずかに、だが確実に揺らされる。


「衝突するラインを操作し、特定の座標へとプレイヤーを集約させる」


廉の目が、疑念とともに細くなる。


「……そんな真似、本当にできるのかよ」


「完全ではありませんが。情報の 偏り を意図的に作れば、彼らは勝手に群がります」


ジャンヌが、その恐るべき意図を理解する。


「……罠、ですね。蜘蛛の巣のような」


「ええ。これこそが、私の設計する 狩場 の形成です」


沈黙。

 極めて危険な策だ。一歩間違えれば、自分たちがその中心で圧殺される。

 だが。


(効率は、これ以上ないほどいい。各個撃破なんてやってる時間はねえ)


「やるぞ。蜘蛛の巣のど真ん中で暴れてやる」


廉が決断を下した。


「はい!」


ジャンヌが頷き、アルトが両手を広げる。


「では――開始しましょうか」


その瞬間、空間が微細に歪んだ。

 見えない因果の流れが、アルトの演算によって動き出す。

 無秩序だった戦いのベクトルが、重力に引かれるように一点に集まり始めた。


「……来るぞ。第一陣だ」


廉が呟いた直後。


「――見つけたぞ!! 死ねぇ!!」


一人目のプレイヤーが、音を置き去りにする速度で肉薄してきた。


「核持ちか! 寄越せ、それは俺のものだ!」


「来た!」


ジャンヌが反射的に剣を構える。だが。


「まだです」


アルトが制止した。


「今はまだ、引きつけてください。戦場を飽和させるのが先決だ」


「……分かった。我慢比べだな」


廉が前に出る。迎撃ではない。敵の攻撃を 誘導 するための最小限の挙動。

 突きを、ギリギリの紙一重で回避する。


「チッ、逃げるか腰抜けが!」


敵が猛追する。そこへ、別の気配が割り込んできた。


「――そっちか! 核を独り占めはさせないよ!」


二人目が参戦。別方向からの強襲。


(来てる……確実に、網にかかってる……!)


廉の視界に、密集した未来の糸が絡み合う。


「もう少し……座標を固定します……」


アルトが、深く目を閉じ、膨大な情報を処理していく。

 計算。集約。そして、臨界点。


「――今です。解き放ちなさい」


その瞬間。

 三人目、四人目、五人目。

 アルトの誘導に従い、異なる方向から来た掠奪者たちが一気に一点へと雪崩れ込んだ。


「……は?」


廉が、思わず舌を巻く。


「多すぎだろ……これじゃただの乱闘だ!」


だが、アルトは冷酷に笑った。


「これこそが 狩場 の本質。我々が制御可能な混沌です」


次の瞬間、集められた全員が激突した。


「――っ!!」


衝撃。未来が、激しい火花を散らして爆発する。

 誰が誰を狙い、誰が味方なのか。もはや誰にも分からない。


「核だ! 核はどこだ!!」

「奪え! 邪魔をする奴は全員殺せ!!」

「退け、俺が先だ!!」


憎悪と欲望の叫びが重なり合う。

 ジャンヌが、暴風のような殺気の中で歯を食いしばった。


「九条さん!!」


「ああ、分かってる!!」


廉が、狂った未来の濁流の中で叫ぶ。


(ここからだ……。敵同士で削り合わせて、俺たちは 核 の出力を一点に絞る!)


一対一の決闘ではない。読めないほどの混沌。

 だが。


「逆に、読ませない強みがある」


ジャンヌが、震える手で未来を掴み取った。

 最小限。ただ一点。


「――そこです!!」


混沌の中で隙を見せた一人のプレイヤー。その動きが、ジャンヌの意志によって強制的に停止させられる。


その隙を。

 廉が、己の未来を重ねて追撃した。


「取るぞ!! 逃がさねえ!」


連携。初めて、三人の力が完全な歯車として噛み合った瞬間。


「――奪い取ります!!」


ジャンヌの手が、敵の胸元に届く。

 触れる。一瞬。

 まばゆい光が、空間を白く染めた。


「――っ!!」


相手の持つ可能性、蓄積された未来が、根こそぎ削り取られる。


「……マジかよ……俺の、未来が……!」


そのプレイヤーが、顔色を失い後退する。


「……奪った……。本当に、奪えました……!」


ジャンヌが、自らの感覚に息を呑む。

 成功だ。だが、喜びに浸る暇などない。


「――甘いよ、小娘」


背後。死角からの声。

 振り向く。遅い。


「――もらうよ」


別の掠奪者の手が、ジャンヌの保持する核へと伸びる。


(……不味い、間に合わな――)


その瞬間。


「そこだ」


アルトの声が響き、空間が物理的にズレた。

 伸びてきた手が、幻影を掴むように空を切る。


「……助かりました……!」


ジャンヌが、冷や汗を流しながら息を吐く。

 だが。

 終わらない。

 次。

 次。

 次。

 怒涛の波のように、プレイヤーたちが際限なく押し寄せてくる。


「……クソ、キリがねえな!」


廉が叫び、迫る敵をなぎ払う。


「ええ。ですから」


アルトが、至極冷静に答えた。その瞳が、獲物を定める蛇のように鋭くなる。


「ここからが本番です。一人ずつ、確実に 削り 落とします」


ジャンヌが、強く頷いた。


「……はい。奪わせはしません」


一人ずつ。確実に。

 奪う。そして、数を減らす。


「――次だ、来い!!」


廉の咆哮。

 戦いは止まらず、混沌はより一層の加速を見せる。


だが、その狂騒の中で。

 誰も気づいていなかった。

 少し離れた高み。

 暗い影の中から、冷徹な視線が戦場を見下ろしていることに。


「……始まったね。いい見世物だ」


カイン。その不敵な笑みの隣に立つのは。


「――観測を継続。想定内の淘汰を確認」


無機質な声。 正しい九条廉 。


この戦いは、単なる奪い合いではない。

 選別。淘汰。そして――。


「……どこまで残れるかな。生き残る資格があるのは、果たして誰だい?」


カインが、楽しげに笑う。


地上では。

 未来が、無慈悲に奪われ続けている。


「――奪う!!」


ジャンヌの声。廉の怒号。アルトの冷徹な計算。

 そして、欲望に塗れた無数のプレイヤーたち。


ここは、狩場。

 そして同時に――弱者が ふるい落とされる 屠殺場。


物語は、一気に加速の度合いを強めていく。

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