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【未来視】でジャンヌ・ダルクを火刑から救った俺、歴史から消されたが最強の観測能力で世界を奪い返す ~奪取の因果:ラスト・ディシジョン~  作者: ガドウ@歴史改変チート


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第十七話:共闘の条件

吹き荒れていた未来の残滓が収まり、風が止んでいた。


「……静かすぎるな」


廉が周囲を警戒しながら見渡す。

 リリィとの戦闘の余韻さえ、すでにこの無機質な空間には残っていない。


「嵐の前の静けさ……そんな感じがしますね」


ジャンヌが、剣の柄を握り直しながら小さく言った。

 その直後だった。


「――その認識、正しいよ。君たちは直感が鋭いね」


聞き慣れない、冷静な声。

 二人は同時に弾かれたように振り向いた。

 そこに立っていたのは、一人の男だった。


細身で長身。落ち着いた仕立ての外套を纏った、知的な雰囲気の男。

 だが、その瞳だけは――。

 冷徹に周囲の因果を 計算している 。


「……誰だ。リリィの仲間か?」


廉が険しい表情で問う。

 男は、紳士的に軽く一礼してみせた。


「 プレイヤー ですよ。君たちと同じ、ね」


男はあっさりと、淀みなく名乗った。


「名は――アルト。以後お見知りおきを」


ジャンヌが、わずかに重心を下げて警戒を強める。


「……何の用ですか。核を狙いに来た、というわけではないようですが」


アルトは、口元に薄い笑みを浮かべた。


「提案ですよ」


その一言で、場の空気が鋭く変質する。


「私と 共闘 しませんか?」


沈黙。

 廉は即答せず、アルトの言葉の裏にある意図を探る。


(……やはり、この展開になるか。プレイヤーが増えれば、徒党を組む奴が出てくるのは自明だ)


「……理由は。あんたほどのプレイヤーが、わざわざ俺たちを選ぶメリットを教えろ」


アルトは指を三本、順に立ててみせた。


「理由は三つあります。極めて論理的なものです」


落ち着いた、反論を許さない声。


「一つ。君たちは 核 を持っている。これはこの世界で最も強力な交渉材料だ」


ジャンヌの指先に、わずかに緊張が走る。


「二つ。その核を狙っているプレイヤーが、すでに複数、このエリアに収束し始めている」


廉の眉が動いた。


(……やはりな。リリィだけじゃねえ。情報の早い奴らが群がってきてやがる)


「三つ。今の君たち単独では、生存率が著しく低い。そしてそれは、私にとっても好ましくない状況だ」


沈黙。

 あまりにも合理的で、感情の入り込む余地のない分析。


「……つまり」


廉が、相手の目を射抜くように言った。


「自分が生き残る確率を上げたいから、俺たちの盾になりにきた……ってことか」


「ええ。君たちも同じはずですよ。一人で死ぬより、三人で抗う方が賢明だ」


ジャンヌが、不安げに廉を見つめる。


「……九条さん、どうしますか」


その瞳には迷いがあった。

 だが、分かっている。この状況下で、戦力が増えることの重要性を。


「……条件を聞こう。タダで組むようなお人好しじゃねえだろ」


アルトの口角が、わずかに吊り上がった。


「交渉成立ですね。賢い判断だ」


その余裕に、廉は内心で舌打ちする。


(……食えない野郎だ。最初からこうなることを 計算 してやがったな)


「まず一つ目」


アルトが再び指を立てる。


「情報の共有だ。敵の位置、特性、そしてこの領域の法則について」


「どこまでだ。腹の底まで見せるつもりはねえぞ」


「戦闘に必要な範囲で構いませんよ。命を預け合う最低限のラインです」


曖昧な提案だ。だが、完全に素性を晒すよりは現実的だ。


「次。戦闘時の役割分担だ」


アルトが淡々と続ける。


「私は 読み に特化した能力を持っている。戦況の予測は私に任せてもらいたい」


廉の目が細くなる。


「……未来視か?」


「近いですが、少し違います。情報の演算と言った方が正しい」


アルトは曖昧に微笑み、詳細をはぐらかした。


「説明は、後ほど。まだ完全に信用してもらえるとは思っていませんから」


信用など微塵もない。

 だが――。


(……利用価値はある。この演算能力、うまく使えば化けるぜ)


「最後だ。これが最も重要だ」


アルトの声が、わずかに低く沈んだ。


「 裏切りは自由 。これを共通認識としたい」


ジャンヌが、ハッと息を呑んだ。


「……え? そんな……」


「当然でしょう。この世界に、絶対の信頼などという幻想は存在しない」


アルトは、あまりにも平然と言ってのけた。


「利害が一致しなくなれば、その瞬間に契約は破棄。それが一番、長生きできるコツですよ」


あまりに正直すぎる、冷酷な真理。


「……正直な野郎だ。詐欺師の方がまだ愛想があるぜ」


廉が皮肉を込めて応じる。


「ええ。その方が結果的に、互いへの警戒を怠らずに済む」


沈黙。

 ジャンヌが小さく、覚悟を決めたように囁く。


「……九条さん、私は……彼を信じるのではなく、この状況を信じるべきだと思います」


廉は少しだけ目を閉じ、決断を下した。


「……いいだろう。手を組んでやる」


ジャンヌが、わずかに驚きながらも頷く。


「ただし」


廉が、アルトの顔の前に指を突きつけた。


「 核 には手を出すな。もし指一本でも触れようとしたら、その瞬間に契約破棄だ。あんたの未来を根こそぎ奪ってやる」


アルトは、すぐに頷いて見せた。


「現時点では、ね」


その一言に、廉の目が再び鋭利な刃物のように鋭くなる。


「……おい、今何と言った」


「冗談ですよ。それほど警戒されると、やりがいがありますね」


アルトが笑う。

 だが、冗談ではないことなど、ここにいる全員が理解していた。


(コイツ……確実に最後は奪いに来るつもりだ。だが、今はそれでいい)


「……決まりだな。一時的な契約だ」


アルトが、細長い手を差し出した。

 廉は一瞬の躊躇の後、その冷たい手を握った。


「よろしく、アルト」


ジャンヌも、小さく頭を下げる。


「……よろしくお願いします」


その瞬間、空気がわずかに変質した。

 三人。

 だが、そこには温かい 仲間 という絆など存在しない。


「では。早速ですが」


アルトが即座に、鋭い口調で告げた。


「最初の情報を。おしゃべりの時間は終わりのようです」


アルトの目が、空の一点を射抜く。


「すでに、来ています」


「……何がだ」


廉が問うと、アルトは歪み始めた空を指差した。

 そこには、三つの異なる 歪み が胎動していた。


「プレイヤー、三。同時にエントリーしました」


ジャンヌが、息を呑んで拳を固める。


「……三人も……同時に……」


「ええ。しかも」


アルトが一拍置き、残酷な確信を告げる。


「強い。リリィと同等、あるいはそれ以上の異常個体です」


その言葉が終わるのと同時に、空間が物理的に裂けた。


「――見つけた。噂の核持ちは君たちか」


傲慢な、若い男の声。


「やっと見つけた。退屈しのぎにはなりそうだ」


もう一つの、飢えた女の声。


「奪う価値、ありそうだね。壊れる前に渡してよ」


さらに、幼い子供のような、底冷えする声。

 三つの圧倒的な気配。三人の 奪う側 のプレイヤー。


「……来やがったな」


廉が、不敵に笑みを浮かべながら低く言った。

 ジャンヌもまた、その瞳に一点の曇りもなく構える。


「……やるしかありませんね。私たちの未来を守るために」


アルトが、静かな興奮を湛えて言った。


「ええ。ここが最初の 正念場 です。見せてください、君たちの価値を」


三対三。

 だが、それは単純な数的均衡ではない。

 信頼ゼロの共闘。裏切り前提の総力戦。


「……行くぞ! 未来を奪い返せ!」


廉の号令とともに、戦いの幕が上がった。

 集団戦。

 未来の奪い合いは、さらに激化し、混沌の深淵へと突き進んでいく。

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