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陽平の覚悟

 陽平はコンロの前に立ち、筍ご飯の炊き上がりを待っているところだった。他の九品は既に食卓に運ばれてあり、あとは筍ご飯を残すばかりである。配膳を頼んでいた和樹もやることを終え、少し退屈そうな顔でスマホをいじりながら横の踏み台の上に座っている。陽平は意を決して、和樹にずっと気になっていたことを訊いてみることにした。

「ねぇ、和樹?」

「ん?」

 和樹がスマホから視線を上げる。

「あのさ……、この筍って実家に頼んで送ってもらったんだろ?」

「そうだよ」

「何て言って送ってもらったの?」

 別に大ごとだとは思ってはいなかったが、伝票の宛名を見てしまってから、それがずっと気にかかっていたのだった。

「あっ、」

 陽平の質問に答えずに、和樹が何かを思い出した顔をする。

「陽平さん、さっきからそれ気にしてたんでしょ? 一瞬暗い顔してた時があったから」

「ま、まぁ……。そこまで不安に思ってたりとかはしてなかったけど、気にはしてた」

 料理中にそれを和樹に鋭く見抜かれ、その時は適当に繕ったのだった。

「やっぱりー。何か嫌なことあったんだろうなぁ、って顔してたもん。ダメだよ、ちゃんと言いたいことは言わなきゃ」

 日頃は散々に和樹のことを言いたい放題言っているが、やっぱりこういう所はちゃんと見ていると思う。

「ま、でも、気軽に訊ける話でもないもんね。ゴメンね、俺からちゃんと説明しとくべきだった」

「大丈夫だよ、そんな深刻に考えてないから」

 その言葉に、陽平は和樹の成長を感じ取っていた。少ししょげている和樹の頭を、いつものように軽く撫でる。

「ただ、この件でお前が変に疑われたり、立場が悪くなったりするのが心配だっただけ」

「相変わらず、そーゆーとこ優しいなぁ」

「それで好きになってくれたんでしょ?」

「まぁ、それはそうだね」

 今度は和樹が陽平の頭を愛でるようにそっと撫でた。

「その辺は心配しなくて大丈夫だよ。実家に頼んだ時は『料理上手な先輩がいて、その人に持っていきたい』って話しただけだし。住所は元々知ってるしね」

「そっか……」

 和樹なりに、自分達のことを気遣ってくれていたのだ。それを知って、陽平は自分でも驚くほど嬉しかった。

「ねぇ、陽平さん……」

「ん?」

 和樹のただならぬ雰囲気に、穏やかだった陽平の顔が少し強張る。

「今すぐって訳にはいかなんだけどさ……、今回のことで思ったんだけど、いつかのタイミングで、ちゃんと家族にも本当のことを話しておきたいと思うんだ。……その時は、陽平さんにも、お手伝いお願いしていい?」

 あまりの衝撃に、陽平がその場で固まる。まさか、和樹からそんなことを言われることになると、思ってもいなかった。和樹が心配そうに、潤んだ目で陽平を見ている。陽平はその目をしっかりと見据えた。

「……うん、もちろん。何があっても、ちゃんと和樹を守るから」

「ありがとう。陽平さんならそう言ってくれると思った」

 和樹が力強く陽平を抱き締める。

 この先に待ち受けているのは、けして楽な道ではないだろう。

 だが、陽平はそれでも躊躇なく進んでいくと心に決めていた。どのような結果になろうとも、進んでいけると確信していた。

 和樹の隣で、日々美味しい物を分かち合いながら――。

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