エピローグ
SIDE--リオン
「師の記憶の中?はてそれは一体誰の事なのかな?良ければ僕にも教えてくれないかい?」
オレの言葉にやつは興味を示した。
「それは後でゆっくり話すよ、今はそれ所じゃないんだ。」
「おや、そいつは残念だね。」
拒否するオレの言葉にわざとらしく残念がっているように肩を竦めた。
「一様確認して置く。王都のあちこちに騒ぎを起こす襲撃者の仲間だな。」
オレは冷たく言い放った。
「あぁ、仲間と言えなくもないが、そいつ等はただの仲間ではない、僕の弟子達だよ。」
問にやつは何の躊躇も無くありのままに答えた。
「じゃ、炎竜王ファフニール の鱗を剥がしたのも、お前だな。」
抜き身になってるやつの刀を見た瞬間に思考している疑問をオレは口にした。
「それも知っているのかい?中々の情報通だね、君は。人は見掛けによらずだね。」
やつは少し目を見開き、笑みを浮かべながら逆に 耳が早いね と感心をした。
「そうか、ならもうこれ以上確認する必要はないな。」
オレは 薬神の脇差 を 次元宝庫 へ戻し、ゆっくりと腰に携えている剣に手を伸ばした。
「ほぉ、なんだい?君もこの緒方一刀流の継承者である僕と戦いたいのかい?だけど残念ながらこちらもこれ以上時間を取る訳にはいかないのっ」
「御託は良い。」
感心しながらも何かに焦っているように見えていてもその態度が軽かったやつの話に割り入ってオレは殺気と共にやつに言葉を掛けた。
「......」
殺気を感じ取ったかやつもあの軽い いや ちゃらい 態度をしまい、真剣な目でこっちを睨んできて、目には目を て返すようにその身から殺気が漏れ出した。
「それでこそ剣士だ。剣士としてただ一つだけ問おう。お前は‘何’を斬れる?」
谷での修業の日々に良く思い返し、今でも常に自分を問い続けた問題をやつに投げ付けた。
「面白い質問だね、以前僕も良く師匠に問われたものだよ。なら答えよ、今の僕は竜が王を斬り殺せる!」
オレの質問にやつは一瞬だけ感傷に浸た顔を見せ、また直ぐにそれらが晴れたように自信の満ちた顔で啖呵を切った。
「...竜王を...」
レイ、目の前にして構えている彼の力量をオレは計らう。やつの技量、そしてその手に持つ刀を加味すれば出来なくは無いと判断をした、故にやつの話に偽りは無いとオレは思い、思わずその言葉を繰り返すがのように囁いた。
「己を剣士と名乗り僕の相手がしたいなら君も答えて見たまえ。君は‘何’が斬れる?」
挑発的な視線でオレを見据えたやつは同じ質問を返した。
「......」
自問自答は何度も何度もやってきたが、誰かに聞かれるのは初めてでオレは少し考えこんだ。
フュ~ と静けさだけ残ってるこの場に風が過ぎる。
「何か、か。オレは‘斬りたいもの’であらば何でも切り裂いてみせる!」
いつも確定なる答えが出せずでいた自分が他人に聞かれたらすぐに答えを出すと言う事にオレは自嘲的な笑みを浮かべる。
我ながら自信過剰と思いながらも出来ると確信を持って剣を抜き、鞘から完全に抜き身になった所で横へとまるで血振りをするように勢い良く振り、そしてゆっくりと片手で握るまま剣を中段に持ち直してやつに切っ先を向けて構えた。
「言うね、最近の若者は皆口先だけが達者で困るよ。そこまで言うなら相手をしてあげるよ、君がその身の程を弁えるように、ね!」
レイも何も着いていない無い刀を血振りするように勢い良く横へ振り落とし、しかしそのまま刀の切っ先を横の地面を向けたまま変に構えせずにただ体から力を抜いて良い具合に脱力した。
お互い直ぐその場から動かず、力を溜めている。
長くて短い数秒の時間が過ぎ、ココココ~ンって何かの音が聞えてくる。
「まだ居るぞ!魔法障壁を張れ!」
ドタバタとオレの後ろにその足並みを揃えていない足音と共に一人の男は叫ぶ。
『『『バリア!』』』
その指示を受け即遂行に入る魔法師達は口を揃えて魔法の名を唱えた。
「将軍に当たるなよ。撃ち方用~意。」
障壁の魔法が無事発動しただろうかまた男は指示を出した。
ぞろぞろと片膝を地に着き、弓を構えて矢を弦に掛けて引き絞るであろう兵士達に同調し、オレもそしてやつ、レイも腰を少し落とし、足に力を入れ始める。
「打て!」
指揮を執っているその男の一言がトリガーとなり、弓矢は列を成して放たれた。
それと同時に言葉通りに引き金となったその言葉と共にオレとレイはお互いに向けて駆け出す。
流派のセオリー通りにレイは歩幅を大きくしながらも摺り足で地面を滑るように駆け抜け、オレは歩幅を小さくしながら素早く前へ二、三歩進んだ所で歩幅を大きくし、一気に加速する。
キィン!!!
オレの剣とやつの刀が切り結び、一瞬火花が飛び散る。互いの姿が交差し、甲高な金属音と共に互いの位置が入れ替わり、たったの一合でお互いはその足を止め、動きを止めた。
ガラッガラッガラッ とオレとやつの間に放たれた矢が落ち、鉄の鏃でありながらレンガで敷いている街道に刺さり、中々に深く地面に喰いこんでいる。
レンガが突き破られる音が鳴り止み、オレもゆっくりと剣を鞘に納めていった。
キン
剣を納める時に鍔と鯉口の放つ音と共にレイは怪我もないままバランスを崩し前のめりに倒れて行った。
バッタンとレイが倒れる音を聞き、オレは目を瞑り、昂ぶっている気を収めようと少し長めに息を吐き出す。
「片方が倒れたぞ!追い討ちだ、撃ち方用~意!」
レイが倒れたのを見て向こうで指揮を執っている男はまた喚き始めた。
そんな男の喚き声にオレは瞑っている目を開き、それと同時に後ろへ振り向き、オレが切り倒したレイの方にゆっくりと近付いて行った。
「「「「「「っ!!!」」」」」」
一度目をそこで弓矢を構えている連中に向けてみると、何故か全員が一瞬ピクッとして矢を載せ弦を引き絞ったまま放とうとしなかった。
今は放っていないが、それでオレは弓矢に対する警戒を緩める事が無く、そいつ等の姿を常に視界の片隅に置き、倒れているレイの側で足を止めた。
「こいつはオレが連れで行く!さらばだ!」
剣士を名乗るだけあって気絶しても刀を手放せずにいるが念の為にオレはその刀を鞘に戻し、一時的に 次元宝庫 へ放り込む。そしてレイの服の襟を掴みそのままに引き上げ、右肩で担ぎ、まだ構えを解けずにいるそいつ達に言葉を投げ捨てると同時に上へ跳び上げ、この場から離れた。
「なっ!逃がすな!放て、早く放て!」
オレが跳び上げた事に一瞬驚いたか指揮を執っている男は直ぐに反応し、早く矢を放て と兵士達を催促した。半拍子遅れに気が付いた兵士達も慌てて矢を放ったが当然その時にオレは既にその場から遠く離れて行った。
空を駆け抜ける中オレは集中し、気配を探り、王都全体の状況を見た。都全体に殺伐の気配が無く、それで事態が終息したと判断をしたオレは空中で一転し、有る場所へ向かう事にした。
大よそ半時間が過ぎ、全力で空を駆け抜けたオレは足を地に着く。
『おぉ、誰かと思えば、小僧じゃないか?』
着地したオレの前にいる巨体、古竜べオルフだ。
彼がオレを迎えに来たじゃない、その巨体である通りにその気配はこの他にも竜が生息しているこの山の中でも隠し切れずにいて、オレは自分からべオルフを探し当てその目の前に下りてきたのだ。
「あぁ、相変わらず元気にしているのだな。約束通りにあんたの息子の鱗を剥がしたやつを連れて来た。」
べオルフと挨拶を交わし、担いでいるレイを下ろした。
『...そやつが、か?』
降ろされたレイをべオルフはその力強い目で睨みを利かせた、しかし当然まだ気絶したままのレイはべオルフが放つ威圧を感じ取る事無かった。
「あぁ、こいつ自身に確認したから先ず間違いは無いだろう。それであんたの息子は何処なんだ、べオルフ?」
レイから視線を切り、オレは周りを見回した。別に目を頼る必要は無いが、何分さっき空中に居る時気配を探ってもこの山に前に一度会った事のあるファフニールを見つける事が出来なかった。だから知っている筈のべオルフに聞く事にした。
『あやつは少し出掛けて行ってな、もうそろそろ帰ってくる頃だろう。』
相変わらずレイをべオルフはただ睨む。
「そうか。うん?」
『む...』
オレが頷く瞬間に空から何かの気配をオレは感じ、思わず空を見上げた。同じようにそれを感じ取ったのだろうかべオルフもオレと同じ、空を見上げた。
案の定、少し離れている所にその何か、で言うか炎竜王ファフニールが舞い降りた。地に足を着けて間も無くファフニールはこっちに近寄って来た。
その後にファフニールから確認を取り、レイをどうするかを決め、オレはべオルフとの約束を果す事が出来た。




