襲撃の終結に向けて
SIDE--レイ
魔将と名乗るだけあってヘリウスと僕の力が拮抗して互いを押し切る事も押し返す事も出来ず、彼は弓を引き絞った。
「ガァ!」
不可解にも彼は奇声を上げた。
僕は直ぐ彼の胸口に少しだけ露見するナイフの切っ先に気付き、そこから血が滲み出した。
また奇妙な事に百戦錬磨であった彼はナイフに刺されただけで動けずに次第にその力を失くしたように倒れて行った。
倒れていくヘリウスからそのナイフは引き抜かれ、その後ろに誰の姿も無く、引き抜かれたナイフも直ぐにその姿を消し、血だけが垂れ落ちて地面を染めて行った。
僕は警戒した。
ハーフエルフで半分はエルフの血を引継いだが故に魔力に対し人並み以上に敏感で、長年の鍛練と実戦で気配を探るのも得意分野である僕だが、垂れ落ちている血から見れば僕の目の前に確かに誰かいる筈だが何も感じない。
それ所か何も遮蔽物の無い場所でその姿すら確認出来ていないのだ。
誰かそこにいる と勘が僕に告げる、十分な警戒を敷き僕は腰を少し落とし、最速となる斬撃である抜刀斬が出来るように刀を鞘に納め、構えを取った。
「何者だ!姿を見せろ!」
僕は叫ぶ、しかし見ての通り誰も居なかったように返事がないまま僕の声だけが反響した。
そこでようやくヘリウスが倒された事に気付いた王城の番兵は慌て出し、一人が中に入って救援を求めに行って、もう一人は依然として門の前に居て身を構えた。そんなやつ等の動きが僕の視界の隅に入り、しかし注意する必要を感じずに僕はそれを無視した。
「出てこないのなら!」
返事を待っても来ないと判断した僕は何も無い所から垂れ落ちた血を見て居るのであろうそいつの位置を想定し、短く一歩で力強く踏み込む。
重心を踏み込んだ足に移しながら刀を鞘の中で滑らせ加速し、体の回転を加えて最速な一撃を放つ。
気配が感じずにそいつの正確の居場所が判らないが と僕は心の中に囁きながら横一文字を刻むような斬撃が空を斬った。
「手応えありだね、姿が見えなくでも刃が届くなら次は首を狙おうかな?いい加減姿見せろ!」
斬れる と手応えを感じた瞬間に僕はそう思い、ゆっくりと警戒を緩めずに構えを解き、踏み込んだ足を元の場所に戻しながら体を起こし、殺気を放ち威嚇してそのまま刀につけた血を振り落とした。
「やれやれ、まさか見破られるやつがいるとは、そいつにお前の姿を見せてやりたまえ。」
空から聞いた事のある声が聞こえて来た。
ローブを纏い、その上更に頭にフートを被せた人物が宙に浮き、見上げる僕の上を通り、倒れたヘリウスの上を通ってその少し後ろの上に停止し、顔をこちらに向けた。
そいつが停止すると同時に何も無かった僕の前に誰かが姿を現した。
ボロ臭い貧相な服に悪趣味な首輪が着けていて、四肢に黒鉄の枷が着けていながらそこから伸び出る鎖が途切れて、ほぼ束縛としての意味を成さない様な状態だ。
さっき僕が斬った場所だろうか、そのボロい服の襟口より少し下が切り裂かれ、その下の皮膚も深い切り傷があった。
「何だ、君だったんだね。一様弁解を聞こう。」
今僕の前にいるやつじゃなく空に浮いているそいつに僕は心当たりがあり、さっきの声から間違っていないと言う確信もあって僕は口を開けた。
「さて、弁解とは?」
空に浮いているそいつは惚ける。
「惚けるのも大概しなよ、若いの。依頼主だから僕の試合に対して水を差した事を今は我慢している、だけどあまり我慢が強い方じゃないのでね。これ以上僕の機嫌を悪くするような事がないようにね。」
僕は警告を告げながら殺気をそいつらに飛ばす。
「そうピリピリしないてくれ、取り敢えず自我紹介をしよう。私はサーベン、そしてそこの彼はルサカだ。名高き緒方一刀流の師範がお目に掛かれて光栄だ。」
フートを深く被って下からもその顔が見えず、その隙間からやつが笑みを浮かべている事だけが見えたのだ。
「御託はいい、要件だけを手短に。」
僕はやつを催促した。
「歳の割にせっかちだな……まぁいい、私はただ礼を言いに来ただけた。」
やつはそうっと口を開く。
「礼、だと?」
僕は疑問を感じた。
「はい、お陰様でそこのを無事回収する事が出来た。感謝する。」
やつは地に足をついているやつを指した。
「これも仕事だ、礼をする必要は無い。」
僕は素っ気なく返事した。
今もやつから殺意が感じ取れる、だから警戒を解けないでいるのだ。
「まぁ、ついでと言っじゃなんですが、お仲間の命が危ないですよ。では私達はこれで。」
気軽そうにやつは言う、僕の反応も見ずに地面にいるやつの元へ移動した。
「なっ、待て!それはどういう事、だ……」
僕はこの場から去ろうとしてるそいつに呼びかけた、しかしやつは僕の声を聞き流した様で返事も無くもう一人と共に姿を消しだ。
「逃げたか、クソゥ!」
やつが最後に言った言葉が気になり、僕は慌て出した。直ぐに弟子達の状態を確認したくここから一番近いルーアス商会へ向かうと振り返り、走り出そうとした。
しかし僕の行く先を阻もうと‘雷’が僕の前を通った。
SIDEーークリスティーナ
『ウォーターフォール』
ぷファー
水が上空から溢れて滝の様に地に注ぎ込んだ。
バリアを張っていたから直撃を受けずにわたしは少しの衝撃だけで済んだ。
雨が止んだ様に水が溢れ無くなり、地面の水も水溜りが出来ずに排水口へ流れた。
誰だ とわたしは思い空を見上げた。
空に一人魔法師の様なローブを纏った人物が通りかかり、直ぐに一筋の光 いや 雷がその人物を貫き、その人物は飛べなくなった鳥の様に落ちて来た。
わたしは直ぐにその人物に走り寄り、その容態を確認した。
その人物が麻痺してると以前お祖父様から得た知識で直ぐに判り、一先ず命の別状は無いと判断し、この場に倒れた他の人の容態を確認した。
その途中、わたしがこの場に着いた時に襲撃者と戦っている男が意識を取り戻した。
その人に手伝わせて先に襲撃者の容態を確認した後に束縛し、彼が見張りとしてこの場に残り、足が速いわたしが救援を求めにこの場から離れた。
SIDEーーレクス
『サンダーソード』
ドガッン
黄色い雷が天から落ちて来た。
最初から俺を狙った魔法じゃなくバリアも展開しているから衝撃が少なかった。
最初この場に到着する時に襲撃者に対抗した奴等も俺と同じく目標にされず、バリアも常時展開してるから衝撃を受けただけで全員意識を保っている。
救援じゃなく新手か と俺は最初に判断し、直ぐ空を見上げて魔法を放った奴を探した。
案の定、空に一人魔法師用のローブを身に纏い、更に顔を隠そうととその上でフートを被って急いでこの場から離れようとした。
刀では届かないと俺は思い、魔法で奴を撃ち墜とそうと魔力を集めた。
しかし俺が魔法を放つ前に何かが飛んで来て奴貫いた……と思ったら、その何かが奴の左肩を貫き、刺さったまま城壁に刺し込んで、奴を城壁に吊らした。
驚きの連続だ、が未だにそれを感じる暇が無く俺は兵士達を指揮し、魔法の奇襲をモロに食らい、深手を負った襲撃者達を拘束し、一様命を留めようと応急処置を施した。
そして城壁に吊らされている奴も念の為に束縛した。
この場の事態は終息し始めた事に俺はホッとした。




