リオンの相手とレクスの相手
SIDE-ーリオン
「じゃ、俺は先に行く。」
そう短く言い捨てて、レクスはこの場から離れ、出口に向かって走り出した。
「それじゃ、リオン、わたしももう行くわ。」
丁度レクスが既に兵舎を出て、目的地へ向かっている事を気配で感じ取ったオレにクリスは言葉を掛けた。
「あぁ、気を付けてな。」
オレは返事し、クリスは頷き、そのままこの場を後にした。
レクスの様に猛ダッシュじゃなく駆け足でここから離れて行くクリスを見送り、少ししたら気配で彼女も兵舎から出て走り出した事が分かった。
「オレも行くか。」
そう独り言を呟いて、オレは少し腰を落とし、軽く構えた。
クリスはルーアス商会の本店に向かっている、レクスは南の関所、そしてオレは北の関所だ。
気配を探って、その目的地である北の関所の方向を確認し、オレは短く息を吸い、足に力を入れて跳びあげた。
秘技 雷走
最高点に至るのを待たずでまだ勢いが消えない内にオレは気を足の方に集中し、纏わせて空を蹴り、加速し、またその勢いに乗って何度も空を蹴ってドンドン北の関所に近付きながら上に登っていく。
こんな風に十回程加速して、そろそろいいかなとオレは思いながら、もう一度さっき以上に力を込めて空を蹴り、最初に比べて既に数倍近い速度で上昇して行き、まだほんの少ししか上がっていない所でオレは体をねじり、半回転して角度を調整し、頭の方を北の関所に向けて体を少しシャガミ、さっきまでの加速の勢いを殺さず、方向だけを変えその勢いに乗って強く空を蹴り、目的地に向かって一直線に飛んでいった。
途中にオレはまた何度も空を蹴って加速を計り、技の名の通りに雷になってオレは一瞬の内、北の関所のほぼ真上にまで来て、もう直ぐ地面と激突になるその瞬間にオレはもう一度体をねじり、前へ回転して、きちんと足で着地した。
ドン
オレの着地で地面に小さなクレーターが出来、土煙と共にデカイ音を轟かせた。そのクレーターが出来る瞬間にオレはさっき加速させた勢いをそのまま地面に流し、その反動を利用してまた体を加速させ、その場から姿を消した。
「な、なんだ!?」
「おい!敵から目を背くな!」
一人の兵士はオレの着地する音に連れられ振り返ったがまた直ぐにもう一人の兵士に怒鳴られ、正面に向きなおした。
その間にオレは更に加速して襲撃者の二人に物凄い勢いで近付き、襲撃者の男と女が気付きもしない内に手で手刀を作り、後ろから二人の頸部を強打した。
「っ!?」
「ぅ!!」
悲鳴も上げられないまま兵士達と対峙してる襲撃者の二人は気を失い、倒れ込み、オレもそれを見るまでも無く足を止めた。
「さて、クリスとレクスの方はどうなのかな。」
片が付けたからオレはその場で立ち尽くしたように弟子の二人の気配を探った。
「今だ!そいつらを捕らえろ!」
兵士の一人は叫んだ。
「「おぉ!」」
他の二人はそれに同調したように、直ぐに動かして倒れている二人の襲撃者を縄で縛り付けた。
SIDE--レクス
兵舎から出た後、俺は俺の目的地に向かって走り出し、その目的にしてる場所は南の関所だ。
兵舎を出る前にリオンは俺と妹のクリスに色々と言い聞かせた、その中に幾つかの言い付けは絶対守るようにと再三に言い聞かされた。
きちんとそれらを俺は思い返しながら前の俺を遥かに超える速力で大通りを辿り、身体強化の魔法が無くとも二、三分で着くだろうと予想を立てた。
二分くらい経過してようやく南の関所が見え始め、そこに数人の兵士が二人の男を囲んでいるのが見えた。
「全員バリアを使え!やつ等を閉じこむんだ!」
兵士の一人、恐らくこの南の関所に居る部隊の中の隊長だろう人物は他の兵達に伝わるように大声を上げた。
「「「「「「はい!『バリア!』」」」」」」
その隊長の指示に従い、他の六人もの兵士は口を揃えて魔法の名称を口にした。
透明な色の バリア が同時に兵士達の前方に展開し、見事に二人を閉じ込める事に成功した。
「舐められたものだなこれくらいで私達を捕らえようとは。行くぞ、デゥエ。」
バリア越しに囲まれた二人の内男の方が女の方に話しかけた。その声を聞えなかったけど。
男の言葉に女の方は直ぐに頷き、腰を少し落とした。その動きに連動してるように男も腰を落とし、少し溜めを入れて二人共一気に兵士の内、その正面の一人に向かって突っ込み、そのバリアに体当たりした。
「くぅ!」
体当たりを受け、その余りの衝撃が兵士を数歩後ろへ下らせた。その一時に出来た穴からあの二人は素早く抜け出してそれぞれ右と左へ向かい、直ぐ隣に居る兵士に斬りかかろうとした。
「これはやばいな。」
そう俺は呟き、身体強化の魔法を自身に掛け、目一杯の力で地を蹴り、一気に二人との距離を縮めた。
より近い左にいる男に近付き、俺は鞘と刀の柄に手を添えた。
「「なっ!」」
その時にようやく男と女は俺に気付き、流石に戦い慣れてる様で男と女は直ぐに驚きを押さえ、既に振り上がった刀を止め、女は直ぐにこっちに向かって来て、男は俺の上からの斬撃を防ごうと刀を横向きにした。
予定通りだ。
と俺は心の中で囁きながら両手に力を入れ、柄と鞘を握り、柄を握る手の手首に少し余裕を持たせ、鞘を引いて刀を抜き、そのまま振り上げる。
男は直ぐに目で俺の刀を追い、それと同時に姿勢を少し高くして完全に上から斬りおとす斬撃を受ける為の姿勢を取った。それを見て俺は直ぐに反応し、斬りおとすじゃなく素早く刀を右手と共に右へ半円を描き、刃を上に向けるように下ろし、そのままその勢いを利用して右下から左上へ切り上げる。
キン
刃と刃がぶつかり、その衝撃を受け男の刀は弾かれ、一瞬の隙が出来た。
「ふん!」
その隙を突いて俺は左手の持つ鞘を逆手で握ってるまま力強く鳴らす鼻の音と共に男の腹に打ち込んだ。
「かはっ!」
その一撃で男を後ろに吹っ飛び、そのままさっき男が斬ろうとした兵士とぶつかり、俺は直ぐにまた刀を構えて向かってくる女の方に切っ先を向けた。俺に切っ先を向けられたその瞬間に女は素早く反応して進もうとする足を止め、後ろへ跳んだ。
「なんだ!?おい!今だ、早くやつを取り押さえろ!」
兵士が男の下敷きになった所で長い一瞬が過ぎ、あの隊長は直ぐに何かに気付き、倒れてた男を見て驚く前にそいつを取り押さえろと他の兵士に指示した。
「「「「は、はい!」」」」
かなり訓練されてくる故だろうか他の兵士達も驚く前に直ぐに指示通りに行動し、下敷きになってる兵士を助けながら男を取り押さえた。
「この状況になってもまだやるつもりか?」
切っ先を逸らさずに俺はちらりと兵士達の方を覗き、兵士達が手際良く男を縛り上げた光景を見て鞘を腰に着けながら向こうに居る女に質問した。
「......」
女は黙ったまま何の返事も返さずに刀をより強く握り締めた。
「おい、どうなんだ?返事くらいしろってうぉ!?」
俺は黙り込んでいる女に向かって叫ぶ、しかしその途中で女の姿が揺れて、一瞬で俺に近付いて来た。
「くっそ!なっ!なんだ!?」
俺は慌てて刀で横薙ぎした、確かに斬ったが何の手応えも無く、斬られた女の姿も霞んで目の前から消えてなくなった。
「いやぁ!」
キン
姿を見失った女がまた直ぐに俺に近付き、掛け声と共に刀で振り落とした。何とか反応して、俺は辛うじて刀で女の一撃を防げ、刀と刀が拮抗した。
「くっ!分が悪いっ、はっ!」
拮抗する中、俺は素振りする時の感覚を思い返し、全身に力を入れて振り払う。流石に女は力負けして吹っ飛ぶ前に自ら力を流そうと後ろに跳び、軽く着地してまた直ぐにこっちに向かって突っ込んでくる。姿を消す技を警戒して俺は先制攻撃を仕掛けようと空いた左手を女の方に向かって突き出した。
『グレイヴ』
そう俺の声に連動して女の足元の地面から土の楔が突き出し、早くも俺の魔法に気付いた女は横へ体を転がして避け直ぐにまたこっちに向かって突っ込んで来る。
「ゼッ『ウオール』」
魔法が足止めすらならなかった所為で俺は舌打ちして、直ぐに突き出してる左手を上へ振り上げ、別の魔法を発動させ、俺の声に反応し俺の前の地面が変形し、一秒も満たない内に女の視界から余裕に俺を覆い隠す程デカイ土の壁が出来た。しかしそれが視界に入っても女は足を止めず、走る音が同じく女の姿確認出来ない俺の耳に届いた。
「はっ!」
その掛け声と共に誰かの刀が土の壁を右から左へ一閃し、支えが無くなった上半分の壁は向こうへ倒れて行く...筈だが直ぐに女はそれをバラバラに切り裂き、土塊になり地面と激突して大きく土煙を上げると同時に女はその中から跳び出し、一直線に俺に向かってくる。
「マジかよ!?くぅ『バリア!』」
土の壁すらいとも簡単に切り裂かれた事に驚かされた俺は慌てて障壁の魔法を発動した。
キン
金属がぶつかったような音と共に女の刀が俺のバリアと激突し、拮抗している。これを機に俺は刀を構える、その俺の動きにいち早く気付いたように女は刀を引いて、直ぐ体の向きを変えずに右へ(俺から見る)一歩移動した。
何となく何しようとしてるのか理解出来た俺は素振りをする時の滑るような足捌きで左後ろに一歩下り、また俺の正面を女に向ける。素早く対応してくる俺の動きも女は戸惑う事無く直ぐにもう一度右へ一歩踏み込み、それに連動して俺は更に左後ろへと下ったのだが、右へ移動する女の姿はさっきのように消えてなくなった。
「フェイント!?」
誘いだと気付く俺は直ぐに左の方に視線を先に向き、案の定そこに女の姿あって、既に俺のバリアが覆っていない場所に居て刀で突きして来て、しかしその瞬間だった。
『雷庭の剣』
誰かの声が響き、雷がこの南の関所に落ちた。




