数日後に
SIDEーーリオン
レクスとの稽古が終わってオレとクリスが屋敷戻ってから十日の時間が過ぎた。
あの日屋敷へ戻ったが、玄関から中へ入る前に前同様マリアさんが''迎え''に来た。
そして顔を合わせてから、久々に鍛練と言える鍛練をしてスッキリしたオレと稽古の後に休んだにも関わらず疲れた顔をするクリスを見て、嬉しそうに目を細めでいながら手で口元を隠し、そんなマリアさんから笑い声が聞こえた。
その後の話にオレは付いて行けず、終いにはクリスとマリアさんが口論してるようになり、それでも楽しそうにしてるマリアさんを見てオレは初めてオレとクリスがあの人にからかわれて居る事に気付いた。
しかしクリスは知らないのかそれとも知っていて敢えてそれに付き合って居るのが分からないが、そんなやり取りが絶えずに続いた。
最後の最後に隣で静観に徹したオレのお腹が情け無い声を上げ、二人どもさっきまでのやり取りを辞めて夕食にしようと言う話になった。
そしてまた話がトントン拍子に進み、いつの間にか二人とも先に中へ入って行った。
最初から最後まで話に付いて行かなかったオレはその場に立ち尽くし、数拍子遅れで中へ入った。
その後、食堂でその日の朝でやった事は屋敷の中の誰かに見られた事が判り、そして何故かオレがクリスを攫ったなんて事になり屋敷中の噂になっていた。
そう言った噂は女性にとってとっでもよろしく無い事はオレも知っている、クリスのような未だ相手の決まっていない女性には特にな。
だからオレはもうそんな事をしないとジュリオさんとマリアさんに約束した。マリアさんは信用してくれたみたいだが、ジュリオさんからは絶対にその様な事をしないようにと念を押された。
それで結局あの日以降オレとクリスは朝と夜の屋敷と王都の間の行き来は全部馬車に乗ることになった。
そうなってからの数日は最初の日より遅くはなったが、それ程のものでもないから稽古に大した支障は起きていなかった。
この十日間、二人ども稽古に真剣に取り組んでいた。
クリスは毎回事のように力を使い果たし、レクスに至っては最初の二、三日でクリスと同じものでは効率が悪いと判断したオレは彼の木刀を少しずつ重くして、それでもきちんとやり遂げて来た。
そんな努力して来た二人は確実にその成果を上げてくれた。
クリスはもう最初の時とは違い、今は最初にオレが見せたお手本と同じように数分のズレもなく素振りが出来るようになった。
そしてレクスの方は最初からある程度の体作りをした事があるが、今はそれとは比べられ無い程ものに鍛え上げ、もうそろそろ次の段階に進んでも良い頃合いじゃないか とオレは思うくらいだ。
そんな人に教える事にも少し楽しく感じながらオレも時に二人と鍛練を共にして、そして時々ベオルフの依頼の為に情報収集をした。
まぁ、当たりが無くて今は いや 今も手掛かり無しだ。
時が過ぎて、昨日の夜に何かを忘れたような感じがして、今朝それが何なのかようやく思い出したのだ。
お金が無い、前にスミスさんに金を払うと言ったが、生憎今は一銭たりとも持ち合わせていないのだ。
何とか金を手に入る方法は無いか とレクスに聞いたら方法を教えてくれた。
そして今レクスとクリスは鍛練中で、オレの方はお金を手に入れる為、ある所に向っているのだ。
王都の大通りを進み城門とそう離れない所がオレが目指してる場所 ルーアス商会 だ。
レクスの話ではなんでも王国一の商会らしく、その支店は王国全土に広がってる程だ。
その歴史は 魔法革命 以前まで遡れるくらいに長く続いたもので、魔法革命 が齎した変化を商機に変え、一気に力を付いて王国の中の指折りの商会になったらしい。そして近年、数年に渡った激しい同業者争いの中で生き残り、今は名実共に王国一となったのだ。
この商会の扱うものの中小さいものは宝石やアクセサリーから携帯し易い魔道具まで、大きなものは家具や家庭用魔道具から屋敷などのものまで、正しくありとあらゆるものを扱っているのだ。
しかも商品を売るだけでなく、色んな素材やものの買取もやっていて、時々貴重なものや希有なものを懸賞金などを掛ける事もあるらしく、今のオレも正にそれ狙いだ。
聖天の谷 で集められるもので大丈夫だろうか?マギウスさんの記憶の中ではかなり貴重なものの部類に入る筈だが?
と 今の時代に対し知ってるもの殆ど無いオレがそう考えてるうちに目的地に辿り着いた。
実用を求めたシンプルな作りをしていて、飾りつけも殆ど無いようなものに等しく、左右対称な構造で隣の民家や他の店から大きく区別が付いたような高く作り上げた建物で、その真ん中に ルーアス商会 と大きく書かれていた。目的のかの商会だ。
オレはその ルーアス商会 の正面に立ち尽くし、そのてっぺんまで見上げ 此処だな と確認をするように自分自身に言い、ドアが開けばなしにしているから直接中へ入った。
「いらっしゃいませ!」
「おっ、おぉ。」
中に入りその中に置いてある眩暈がするくらい多量なものにポカンとしてるオレに直ぐ横から声が響き、オレは少しビックリした。
「初めていらっしゃる方ですね。何かを探しなものはあるのでしょうか?必要であればわたくし達がご案内いたします。」
カウンターの中で一人の女性が綺麗な笑顔を見せ、親切な対応をしてくれた。
「オレは別に買い物をしにきた訳じゃない。」
オレは正直にその女性に返事をする。
「えっ...買い物、しない?」
その女性は固まり、綺麗と感じた笑顔が一気に固まった感じで前と少ししか変わらないが何故か違いがあるとオレは思った。
「あぁ、オレは買い取って貰いたいものがあるから此処に来たんだ。」
オレはそう説明を付け加える。
「そう、ですか、失礼しました。す、直ぐにその関係者を呼びますから、脇にて少々お待ちください。」
女性の顔にあった固い感じが少し消え、しかし何故か少し慌てた感じで急ぎ足でその場から離れた。
なんだろう とオレは判らないまま道を塞がらないように一歩横に下がり、去って行くあの女性が何かを呟いているのが見えた。
「あわわ、ケチを付けに来た人だと思ったのにまさかお客様だなんて、失敗しじゃったな~。」
あの女性はそう呟き、声が大きすぎたか、自然とオレの耳の中に届いた。
オレは聞かない事にしてその場で大人しく待っていた。
そして待つ事になって数分もしない内さっきの女性がもう一人の女性を連れて来た。
「じゃわたくしがこの場を引き受けるから、貴方は職場に戻りなさい。...わたくしがこの ルーアス商会本店 の買取を担当するもので サキナ と言います、宜しくお願いします。貴方様が買い取って欲しいものがあると言い出した方ですね。」
もう一人の女性 サキナ があの女性に指示を出しあの女性は素直に最初に居た場所に戻り、サキナと名乗る女性はオレに向って確認した。
「あぁ、オレはリオンだ。買い取って貰いたい と言ったのはオレで合ってる。」
オレは返事する。
「そうですか、ではリオンさん、その 品 を持って来たのでしょうか?先に見せて頂ければより正確なお値段を提供する事が出来ます。」
サキナは直ぐに商売の話をし始めた。
「あぁ、持っては居る、見せるのも問題ない。」
オレは簡潔に答える。
「では、そうするようにお願いします。」
サキナはオレを催促する。
「それなりの量のものがあるが、この場で良いのか?」
オレはサキナに聞く。
「そんなにあるのですか?...でしたら場所を変えます、こちらに来て下さい。」
サキナはオレに聞き、オレは直ぐに頷いた。
サキナは先で案内をして、オレはその後を追うようについって行った。




