予想外と午後の稽古
SIDEーーリオン
大将から話を聞かされて、オレの予想は見事に外れたのだ。
外の看板で書かれている オガタ の三文字、そして大将の姓もおがたであった事からオレは 緒方一刀流の開祖 緒方 一心 師との縁者だと思い込んだ。
しかし昔の誰かが言ったように 事実と言うものは 伝説や物語 よりもドラマチックなのである と。
全くその通りだ。
大将はかの 緒方 一心 師の縁者じゃない、いや、縁はあると言って良いかもしれない。
大将の祖先はかの緒方師に教えを請え、そしてかの緒方師から多くのものを学んだと言う。しかし大将の祖先は剣に関して一切学ばずに、そもそも最初からそう言ったものの類を学ぶつもりもなくただかの緒方師が 地球 と言う異世界の食文化を知り学ぶ為に教えを請ったと言うのだ。
結果大将の祖先は見事に 緒方師 が齎す地球の料理の作り方を全部覚えて、更にアレンジを重ねこの世界の色も混ざり込み独自のレシピを作り上げた。
そんな祖先がある日、店を開こうとした。それで自分自身の店の名前を決めるときに 緒方 にしようと言い出し、なんどか緒方師から許可を貰うた。
だから店の看板に オガタ が書かれていて、大将の姓の方は数代に渡りこの店を大将の曾曾お爺さんから受け継いた曾お爺さんがかの緒方師をあやかって使ったものだ。
中々に複雑な気分だ、この話を聞いた後は。
正に想像が追いつけない物語に書かれたもののようだった。
その大将の話を聞き終わった頃にはオレもレクスもそしてクリス際も出されたものを食べ終わったのだ。
「なぁ、レクス。」
大将は空になった食器を片付け、それらをキッチンの中へ持って行き、オレは隣で美味しい食事に満足な顔を浮かべてるレクスを呼ぶ。
「うん?どうした?」
「これのどこが 大将の事だから俺の口から話すのは野暮と言うものだ だ。」
オレはレクスを睨み付けて聞いた。
「そんな事言ったが俺?まぁ、それでも一様他人の先祖と関わってるし、俺の口から話すのはやばいのは確かだろう?」
レクスは 俺はそんな事言ったのかな と頭を掻きながら記憶を探る。
「確かそうなんだがな...」
レクスの言ってる事も一理がある とオレは思う。
「それよりどうよ、此処の料理は?美味いだろう!」
レクスはドヤ顔でオレとクリスに聞く。
「あぁ、美味かった この一言に限るそれ以外の言葉が浮かび上がらないくらいにな。」
オレはオレの感想を述べる、隣で聞いてるレクスは自分事のように そうだろうそうだろう と頷く。
「確かに此処の料理は美味しいものばかりだわ。」
クリスは意味有り気に料理の方を強調した。
前に此処に来た時一体何があったんだろう……
「まぁ、これでお互いのお腹を満たす事が出来ただろう。そろそろ戻って稽古を再開にするぞ。」
オレは切りのいいだと思い言い出した。
「もうなのか?未だ食べ終わったばかりだろう、急ぎ過ぎじゃないか、リオン?」
レクスは不満そうに聞き返す。
「別に無理強いはしないが、一様言って置くぞ。体作りはあくまでも最初の一歩でその先に行くには必須だ。それが出来ていないとその先のものは教えないし、教えても中途半端なものになるだけだ。それでも良いって言うなら止めはしない。」
オレは質問したレクスとそして隣にいるクリスにもそう説明した。
「元々そうしようと思ってるから、わたしは行く。」
どうやらクリスは最初からそうするつもりだったようだ。
「あぁもう、それならやるしか無いじゃないか!行けば良いだろ、行けば。大将!お勘定!」
クリスの言葉を聞いたからかレクスは少しやけになり、大きな声を出して大将を呼び付けた。
「いつもの値段で銅貨三十枚で合ってるよな、大将。」
レクスは財布を取り出し、その中から更に一回り小さいのを取り出して大将に渡した。
どうやら本当に奢ってくれるみたいだ。
「あぁ、固定のが二つで銅貨十八枚と日替りのが一つで十二枚、合わせて全部で銅貨三十枚だ。確かに頂いた、気が向いたらまた来るといい。」
大将はレクスから銅貨の入ってる袋を受け取り、中身を確認せずに仕舞った。
「もちろんまた来るぜ、大将。気が向くか向かずか関係なく俺は来るぜ、なんだって未だ完全制覇して無いからな!」
レクスは宣言する。
「そう言えば、そうだったな。リオンも気が向いたら顔出に来てくれ、お前とは色々話が合いそうだ。」
「あぁ、そうさせて貰う。じゃな、大将。」
「じゃな、大将。」
「御機嫌よう、大将さん。」
オレとレクスそしてクリスは大将に別れの挨拶をした。
「あぁ、じゃな、お前達。」
大将も短く挨拶を返して、オレ達はそのままこの オガタ を後にした。
□■□■□
「じゃ、始めるぞ、レクス、クリス。」
「おぉ!」「はい!」
兵舎の練武場へ戻ったオレ達はすぐに稽古を再開した。オレが発した開始の言葉に二人は勢いが良く返事を返した。
二人のやってる事は午前中にやったものと同じで、違いがあるなら、その量とそしてオレも二人と一緒に同じ鍛練をしたと言う事くらいだ。
もっともやってる内容は同じだが強度まで同じじゃない。
それも又当然なのだ。彼等は未だ体作りの最中で、オレは遠にその段階を超えていて、今は 体の強化 で段階だ。
この段階に置いて終わりは無い、常に体に 耐える から 耐えられない のギリギリの一線でひたすら鍛練を重なり続く事だ。以前 聖天の谷 に居る時はずっとそうだった。
そんなオレも一緒に鍛練を始めた事に二人はあんまり影響を受けずにただ自分自身の鍛練に没頭した。
そうやって数時間が経過した。
運が良いことにオレ達の鍛練は何にも邪魔されずに最後まで続く事が出来た。そして今はその休憩に入っている。
「はぁはぁはぁくっはぁはぁ、リっリオン、お前未だやり続けるつもりか?」
この練武場の隅に先に休憩に入っているクリスは緩やかな寝息が立っている。体が冷えたりしないようにオレとレクスはクリスに毛布を掛けた。
レクスの方は休憩に入った途端にバッタリと練武場の木造りの床へ座り込み、これまでない程に息を荒くして、オレが前の時に教えた方法が思い出せないくらい疲れて居る。
そんなレクスが二人よりもハードな鍛練を二人より長くやって居るオレに聞く。
「あぁ、もう少しやらつもりだ。」
オレは止まらずに簡潔な返答だけを返した。
「なぁ、りっ」
「後少しだから、終わってからにしてくれ。」
言葉が発する前にオレは先に釘を刺した。
そこから更に二時間近く経過した。
「で長えわ!」
ずっと黙って見ていたレクスは叫ぶ。
「……どうしたレクス、そんな大声を出して。あっ、クリスを起こした。」
オレは最後に一振りして、木刀を仕舞いながらレクスに聞こうとして途中クリスが起きた事に気付いた。
「どうしたじゃねぇ!どんだけやり続けるつもりだ、お前!」
レクスはなんだかキレ気味だ。
「どうだけ てたっだ今終わってるんだけど。どうかしたのか?」
オレは どうした で疑問を感じる顔をしながらレクスに聞く。
「どうかしましたのです、お兄様?」
クリスは立ち上がり掛けた毛布を丁寧に折畳みして片手に持ち、オレ達の所へ向かって来る。
「だからリオンかなずっとあのペースなままでつい先までやっていたんだ、しかも終わった今は息一つ乱れていないと来てるもんだ。」
レクスは起きたばかりのクリスに説明する。
「別に驚く事はない、いずれ君達も出来るようになる。」
オレは言う。
「出来る気がしねぇ。」
レクスは珍しく弱気な発言をした。
「まぁ、鍛練を積めば嫌でもこれくらいは出来るようになる。それよりも、クリス。」
オレは 時間は掛かるがだが と後から足し加えて、クリスを呼んだ。
「どうかしましたの?」
クリスは返事した。
「そろそろ屋敷に戻ろう、大分暗くなって来たしな。」
「うん…そうね。では帰ることにしましょう。」
クリスはあるものを取り出し、何かを確認するように それを見詰めながら言う。
その あるもの は魔道具である事はオレも知っている、あの人 マギウスさん も似たようなものがあるからな。それは とけい と言った時間の確認が出来る魔道具だ。
「あぁ、じゃレクス。悪いが今日はこれくらいで、また明日の朝で来る。だから今夜はしっかり体を休め。」
「あぁ、そうするつもりだ。また明日な、二人とも。」
レクスはオレとクリスに別れの挨拶をして、オレも 明日な と返した。
「ねぇ、お兄様。」
「どうした、クリス。」
「わっ、わたし達と一緒に久し振りに屋敷に戻らない?明日も稽古があるし。」
クリスは少し聞き辛そうにレクスに聞いた。
「……悪いな、クリス、俺は帰らない…違うな、俺は未だ帰れない。あいつを殺した奴等を見つけ出し、けりをつけるまでな。」
レクスは静かに声を発し、その紡いだ言葉から答えとその訳を知った。
「そっ、そう、ですか。分かりましたわ…ではお兄様、また明日の朝で。」
クリスの声が少し小さくなり、嫌々で頷いて居るのが判る。しかしそれでもクリスはレクスと別れの挨拶を交わす。
「…あぁ、また明日だ。」
二人とも挨拶を交わしたと判り、オレとクリスは練武場から出て兵舎を後にした。
兵舎の大門を出て、オレは直ぐクリスに近付き今朝、来る時のようにクリスを抱き上げようとした。
「じゃクリス、いっ」
「待って、リオン。」
オレの言葉が最後まで聞かずにクリスはさっきのしんみりとした感じが一切しないくらいはっきりとオレを止めた。
「どうした、クリス?」
オレは聞く。
「リオン、貴方また今朝のようにしようとしましたのね。」
クリスはまるで 確信あって犯罪者を現行犯で捕まえてた ようにオレの次の行動を見切った。
「帰るならそうした方が早いだろう。」
「結構よ!ちゃんと馬車があるのだからそれにするわ!」
クリスは声を荒くしてオレを待たずに先に歩き出した。
「どうしたんだろ、クリス。」
オレはそう呟き、しかし先を歩いて居るクリスに届く事無くオレの独り言で終わった。
どんどん離れて行くクリスの背中が少しずつ小さくなり、オレは少し速度を上げ急ぎ足でクリスの後を追う。
脚力で圧倒的に有利なオレはすぐクリスに追いつく事が出来だ。しかしオレ達の間に会話がないまま王都の城門に辿り着き、城門付近にある馬車を乗って屋敷へと向かった。
当然その間も会話らしい会話はしなかった。




