古竜
SIDEーージュリオ
「ジュリオ様、レクス!大変だ!」
一人の男が慌てた声を上げて、俺とレクスの名を呼びながらこっちに向かって走って来た。
「どうした?何があった⁉︎」
レクスはやって来た男に事情を聞いた。
「はぁはぁ…王都の上空にドラゴンが徘徊している。数は一体のみ、その鱗に紋様が確認されていて、恐らく古竜と思われる。」
「「「古竜⁉︎」だと」」
レオを除いて、俺達三人は驚き、揃えたように声を発した。
「……」
隣にいるレオは眉を皺め、考え込んだ。
「君、現在の状況をもっと詳しく話せ!」
俺は言う。
「ギュァーーーー」
二度目の雄叫びが響く。
「早くしろ!」
俺は二度目の雄叫びを聞き、男を催促した。
「はっはい!ドラゴンの鱗から推測して、そのドラゴンは火属性の古竜と思われます。攻撃は未だされて居ませんが、ドラゴンは未だ王都上空に徘徊しています。ドラゴンは雄叫びを上げ、攻撃の意志はあると推定し、標的が空にあるから大至急に魔法師の増援要請が出されています!」
「それを早く言わんか!レオ、これから俺とレクスはその要請に応じて、古竜との戦いに参加する、お前は城に戻れ!クリス!君は陛下をお守りしろ!行くぞ、レクス!」
俺はこの場にいる全員に其々の指示を出して移動しようとした。
「はい、父さん!」
「…君は私を弱者扱いするのか?ジュリオ。」
レオが何処か悲しい声で俺に言う。
「…そんなつもりはない!」
俺はレオを叱った。
「お父様、わたしも行きます!」
「君では力不足だ!今は陛下を護る事に専念しろ!」
着いてこようとするクリスに俺は怒鳴る。
「ギシャーーーー」
再びドラゴンの雄叫びを上げ、大地を揺らす。
「急ぐぞ、レクス。」
「はい、父さん。」
俺は焦り、レクスを連れて走り出そうとする。
「あっあのちょっと待ってください!」
さっきの男が俺達を止めた。
「なんだ、未だ何かあるのか?後にして貰えないか?今急いでいる事は君にもわかる筈だ。」
急がなければならない時に止めてくるその男を見て、俺は機嫌が悪くなり、眉を皺めだ。
「はい!分かっています、ですが今さっき魔法による連絡が入って、古竜は攻撃をした模様です!」
「わかった、直ぐに行く!」
「あっあの、未だ!」
もう一度出発しようとする俺にあの男はまたしても止めに来た。
「なんだ!要件を一度に全部話せ!」
もじもじとしてるあの男に俺は機嫌が悪いのを取り越し、怒りを覚えた。
「はっ!古竜は攻撃を開始した模様です、しかし一人の青年により王都は無傷です。あの青年は空を駆け巡り、ドラゴンと対峙し、今現在ドラゴンの動きが停止したのを確認しました!以上です!」
俺の不機嫌を感じ取り、あの男はやや早口で、正確に状況を俺達に伝えだ。
「何だと⁉︎古竜が動きを止めただと⁉︎何がどうなってる!」
流石の俺も男の言葉にさっき以上の驚きを感じた。
俺は単独でドラゴンを撃退した事がある。撃退とは言え成体のフレイアドラゴンを相手に単独でそれを成し遂げた。
今なら状況際許せは、成体のフレイアドラゴンを相手に単独で撃退じゃなく単独で撃破することが出来るようになった。
だが古竜は違う。何が違うと言うと、格が 次元が違い過ぎる。
単純なドラゴンはそれ程高い知性を持っていないし、上級魔法を使えるが言葉は話せない。
しかし古竜は最上級魔法を使える上に人並みに いや それ以上に高い知性を持ち、人の言語だけでなく古竜の言語 をも操り、最強種であるドラゴン中で比類なき強さを持つ存在だ。
そんな古竜の攻撃を単独で受け止めた事に俺は驚いた。
「はっ、えっと、ぞっ」
「えい、焦ったい!もういい自分の目で確かめる。」
古竜の襲来と言う緊急事態に未だもじもじしてる男に痺れを切らした俺は練武場から出た。
SIDEーーリオン
オレは空の上を走り、数秒も経たない内に探していた‘知り合い’を視認した。
人間であるオレより百倍以上に大きな体、無類な強靭さを誇る四肢の先端に鋭く磨き上げた爪、力強い尻尾に大きな翼、腹以外の部分を覆い被る真紅の鱗、その鱗に黒い線が走り、まるで身分を示すような紋様を描く。更にどんなものでも噛み砕く顎に全てのものを喰いちぎる牙、頭の両側には極太の真っ黒な対の角が山羊のように前へ伸びて行く。
その全てがあいつの存在を強調し、それらを見た者全部を威圧する。
一言では言えない存在感を放ち、しかし敢えて一言で其の存在を形容するならば 竜 と言う一文字だ、正確には 古竜 だ。
記憶通りである知り合いの姿を見てオレは更に速度を上げ、あいつに近付いていく。
向こうも近付いていくオレに気付き、首をオレの方に向き、オレと目が合った。
感動的…じゃなく、久しぶりの再会に喜ぶオレだが…
「ギュァーーーー」
向こうはオレを見た途端に雄叫びを上げた。
雄叫びの音が増すに連れ、あいつの体から赤いオーラが溢れ出し、全身を覆いように纏い付いた。
「竜の怒り!?」
今のあいつを見て、オレは自分自身の記憶を探り、該当するものを探し当てた。
今のあいつの状態に驚きを感じたオレ、しかし向こうはその時間を与えずに躊躇なく攻めて来た。
あいつは翼を力強く羽ばたいて巨体に似合わずで物凄い速度でオレの方に向ってくる。数秒も掛からない内にオレとの距離が百数メートルしかない所まで詰めてきて、前進の勢いを殺さずに頭の角でオレを狙う。
オレはあいつの進行ルートを見切りをつけ、空を蹴ってギリギリの一線でそれを躱す。
しかしオレに攻撃を躱されたことにあいつは即座に反応し、翼をより強く羽ばたいて前進の勢いを完全に殺した上にオレの方に向けて息を吐くように炎を吐いた。
竜の息だ。
他ならないあいつの竜の息は良く知っている、避ける必要がないと思った。
だからオレは避けずにあいつの炎の息を直面し、腰にある剣を鞘から抜き、両手で剣の柄に添え剣を持ち上げ、上段に構えた。
空中で踏ん張りがどうとか今のオレとっては関係の無い事だ。
左足で空を蹴り体を前へ押し出しながら右足を滑るように踏み出し体を引っ張るように力を入れる。
そしてそれらの力を体を通して両手にまで伝導させ、更にその合間で 腰 と 背 の部分の力を加え、肩から肘へそして肘から手首へとそれらの力を合わし、一気呵成の如く勢いでそれらの動き 力の移動 をこなし、剣で縦に描かれた直線よりも真っ直ぐな一閃を放った。
放たれた剣閃が竜の息を真っ二つに斬り裂き、剣圧でその炎を消し去った。
竜の息がオレの剣によって斬られた事であいつから一瞬の隙を見つけ出した。その隙をオレは見逃さず追い討ちを掛ける。
オレは空を蹴り一瞬であいつの背後を取り、足を止めずに更なる速度を出して、あいつのとある鱗を狙い、思いっきり剣の柄で叩いた。
「ギシャ----」
オレの一撃にあいつは雄叫びを上げ、時が経つに連れ声が小さくなり、あいつも大人しくなって行った。




