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聖樹にまつわる交響曲  作者: ファル
― fifth Mov. 滅風の追走曲 ―
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 こちらは主に本編5章・6章辺りと関わるお話。

 4章で存在は出てきた、先代勇者さんのお話です。

 彼の親友については本編で詳細が語られてますが……、

 名前がその後本編で出てくるものと違うのは、

 そもそも時代が違うから、と言う事で……(‥


 ※言っている事が良く解らんのはネタバレ防止のあがき? 故です。

「おまえなぁ……喧嘩するなたぁ言わんが、手加減ってものは覚えろ? エガオン」


 ―― それはぶっちゃけ、かなり聞き飽きた小言だった。


「や、してるってば。だけど、あいつら諦めわりぃんだもんよ……そりゃ無抵抗のヤツに殴りかかっちゃまずいだろうけど、あっちがしかけてくるモンを迎え撃ってるだけなら立派な『正当防衛』だろ? 俺を怒る前に、あいつらに引き際てーもの教えてやった方が早いぜ、きっと」

「だからって何も、回復魔法でなきゃ治せん程痛めつける事はなかろうと……あちこち謝って歩かにゃならん親の身にもなれ」


 これ見よがしに溜息なんぞついてる親父の言葉も、まぁ解らんこたぁない。ないけど……売られた喧嘩はなるべく高く買ってやる・やられたら10倍返し、が俺の主義なんで仕方ない。


「まぁ、おまえもギメルの男だし、勇ましいのは良い事なんだが……せめてもう少し、あれだよなぁ……ウォート君と足して2で割った位の性格ならきっと丁度良いんだが」

「あなた、それはちょっと言い過ぎですよ」


 ……うん、さすがにそりゃちょっと酷い。すかさず止めてくれる辺りは流石お袋だ。


「こんなのと混ぜちゃったら、ウォート君にもご両親にも申し訳が立たないじゃないですか」


 ―― そ……そっちかっ!!? そっちなのかぁぁぁぁっ!?


 我が親ながら、あまりに容赦がなさすぎる……思わず何を喚いたかは血が上りすぎて覚えちゃいなかったが、ともかく滅茶苦茶怒鳴っておいて一気に家を飛び出してしまった。


─…‥・‥…─…‥・‥…─…‥・‥…─


「あはは、中々言うよねぇ。エガオンの母さんも」

「って、お前が言うなお前がっ!」

「痛っ! ……だ、だからさ、そのすぐ手が出る所を直せば怒られずに済むんじゃないのか?」

「そんなのは最早、俺じゃねぇ!」

「……胸張って言う事じゃないぞ……」


 ―― あんな騒動の後に転がり込むのがコイツの家ってのも、我ながらどうかしてる気もするが。とりあえず落ち着いて話が出来るし、かつ八つ当たりもしまくれるってな一石二鳥の狙える相手が他に思いつかないんだからしょうがない。


「私は寧ろ、歓迎するけどね。ウォートの場合、謙虚はいいんだが控えめ過ぎるのが気になるから。半分までじゃなくても、少しくらい君の勢いを足しても良いとは思うよ」

「おぉ、さすがウォートの親父さんは話解るなっ」


 ここらが学者と武器屋の、頭の差ってヤツなんだろうか。や、多分元来の性格の差だな、うん。


 性格と言や、ウォートも多分この親父さんのそれを受け継いでるんだろう。

 まだ11……いや12になったか? とにかくその程度の歳にしちゃ、あまりにどっしり落ち着きすぎてる。それでいて、剣を握らせたらギメルどころかセレンの正規兵でも敵わないんじゃないか? て位の強さだったりもする。見た目はいかにも学者の子供らしく細っこくて大人しいから、バカにしてかかってたらしい近所の悪ガキどもが、地下遺跡の闘技場にコイツを誘って模擬試合(と銘打った喧嘩)を吹っ掛けた事があったが……そいつらの誰ひとり勝てない、どころか散々叩きのめされて半泣き状態で降参してたのは今思い出しても笑える話だ。

 

 もっともウォートの場合、相手を「魔法でなくちゃ回復不能」って程までには痛めつけないのが俺との違いってヤツだが。


「まぁ、ある程度落ち着いたら、今日は家に帰りなよエガオン。いつもなら泊っていってもいいけど……明日は父さんも俺も出かけなくっちゃいけないんだ」

「あ? また発掘調査の付き合いか?」

「うん。でも今回は、本格的な調査じゃないから10日くらいで戻るかな? デスヒルズの端っこに、何か貴重な遺跡らしい痕跡があるって、母さんのチームが見つけてね。その確認程度だよ」


 ウォートの親は、両親揃って考古学者だ。一旦調査が本格化すると、半年や一年帰ってこないなんてのもざらだから、コイツも結構苦労してはいる訳だが……それでもお袋さんの方は3,4年前までは子供の為に家には居て、書類だけで仕事をしていた様だった。だが今じゃ、ウォートもちょっとした冒険家より役に立つ程強くなってるし、だから親の調査旅行に護衛よろしく付いていく事も増えてきている。


「ちぇ……ま、仕方ねぇか。だが戻ってきたら、この前の約束守れよっ」

「遺跡での特訓? それは勿論、付き合うけど……エガオンの腕なら、俺みたいな子供より自警団の人達との訓練の方が得るものが多いんじゃないか?」

「お前、そーゆートコがいっそ皮肉だっつーの。今じゃお前の方が絶対、あの連中より強いって」


 ついでに言えば、自警団の連中は荒っぽすぎて子供相手だからと手加減なんぞしちゃくれない。そして、大事な所は口で教えてなんかくれなかったりする。その点コイツなら悪い点はちゃんと指摘してくれるから、特訓相手としちゃかなりいい。俺だってウォートを除けば、ギメルの子供の中じゃ多分負けないだろうとは思っちゃいるが、まだまだ足らない部分はある訳で。単に大人しいだけじゃなく、言うべき事は言ってくれる上に腕も確かなウォートとの訓練は、時々ちょいとムカつきはするが楽しいし、ためにもなる貴重なひと時だ。


 それに……自警団の奴らと手合せした場合。もし上手い事こっちの攻撃が通って、うっかり連中をボコり倒しなんぞした日には将来に響くじゃないか ―― 俺は堅苦しいのが嫌だからセレンに仕官する気はないが、いわゆる都市国家なギメルの軍とも言える自警団に入る気ではいるんだから。


「あはは、まぁそれはどうか知らないけど。じゃ、戻ってきたらエガオンの家に行くよ」

「おうっ。さっさと来なかったらデザートレイドだからな?」

「もうそんな技覚えたんだ? ……と言うか、必殺技で出迎えるのは止めてくれ……」


 どこか冷汗顔なウォート、それに親父さんと挨拶を交わし家を出る。だが ―― この人好きのする親父さんと会うのがこれで最後になるなんて、この時はまるで思っちゃいなかった。

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