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「おや? おかえり、2人とも。心配してたけど……さすが、ちゃんと戻ってこられたね」
「おー、リンさん! 何か久しぶりな気がするぜっ」
ティリアの助力は完璧だったらしく、少々不安だった転送もどうやら無事に済んだ様だ。ただ、その出口は何故か彼らが踏み込んだ魔法陣ではなく、リンは大きな部屋の片隅で何やら書物を読んでいた。
「良く1人で無事でしたね……ん。それって……お目当ての、この遺跡の情報って奴ですか? リンさん」
「うん、そうだよ。あ、でも手伝いは要らないさ。ちょっと分量多いし、古文書だから解読は僕かレディアがやる方がいいだろうから、君達は少し休憩するといいよ ―― 戻るのにかかった時間からすると、結構疲れてそうだしね」
リンはそう言いながら、2人の斜め後ろを指差す。そこには古びてはいるが、まだしっかりしていそうな寝台が幾つも置いてあった。どうやら、かつての仮眠所でもあるらしい。
「あ~確かにかなり疲れたよな……じゃ遠慮なく、少し眠らせてもらうよ」
一も二も無く頷くと、早速その寝台に潜り込むスバノンだが……目を閉じかけた時、その横で上体を起こしたまま何か考えている風のブルーに気づく。
「ん、どーした。何か忘れ物でもしてきたのか?」
「いや……少し気になってな。あの世界にいる時にも一度、ちょっと思ったんだが……」
「なにを?」
「俺達の、この世界って……まさか、あっちのエルフィンちゃんが見てる“夢”なのか? ってな」
その発言に、意味が良く解らんと言った感じで目を瞬かせるスバノンに、ブルーが更に続ける。
「もしそうなら、こっちの世界でもエルフィンちゃんが中心的な役割を持って動いてるのも解るしな、何たって夢を見てる本人なんだし。それに、彼女の一番の親友がアスティちゃんなのも、あっちと同じ訳だろ? ……いや、幾ら不安定な魔法陣でも、ああもかけ離れた世界に繋がるって所がちょっと気になって。“共通点”については前に言ったが、それがそもそも今言った理由からだとしたら……」
語りつつ、その表情が段々暗さを増してゆく。……自分が単なる「誰かの夢の世界」の住民、その1人でしかないとしたら ―― その仮定は実際、相当の言い知れぬ恐怖心を呼び覚まされる物だろう。
しかし、スバノンの返事はそんなブルーの暗雲を一挙に吹き飛ばす様なものだった。
「いいじゃん、別にそーだとしても」
「……どこがいいんだ? お前、ちゃんと意味解って言ってるのかそれ?」
「いちいちバカにするなっ。―― もしそうでも、俺たち“救世主”なエルフィンに『頼りにされてる』ポジションに居るんだぞ? 他の、おまけな登場人物よりよっぽどラッキーじゃねーか」
「――……お前……いっそ、その能天気思考はお裾分けが欲しい位羨ましいぞ」
「お前が人一倍、いや十倍くらい暗すぎなんだ!! ……ま、疲れてるせいもあんだろーな。さっさと寝ろ」
一瞬だけ怒ってみせるが、後は如何にも疲労から「力尽きた」と言う風に目の力が抜け。あっさり横になるや寝息を立ててしまうスバノンに、ブルーが呆れた様な視線を向けた。
が……やがて、確かに悩んでも仕方ない事柄か、と、思いを巡らせるのを止めたらしい彼もまた、布団を引き揚げ横たわる。『魔王退治を目指すパーティ』……その一員である事が果たして、ラッキーなのかどうかの判断はつかぬままであったが。
その答えは何れ、そう遠くはない未来に、エルフィンと共に見つける事も出来るだろう ―― そう、ひっそり考えつつ。




