d-6
「なっ!? ちょい待てエルフィン、お前何を言い出し ―――― 」
驚愕覚めやらぬ内に為された、とんでもない宣告にスバノンが慌てて止めに入るが。
【ターゲット確認。周辺設備への影響を最小限に留める為、Bランク自衛システムを作動。シュティグへの敵対者抹消に入ります】
例の硬質な機械音声が告げると同時、スバノン、それにブルーへも強烈な「光の矢」が降り注いだ。焦りつつも、どちらも上手く攻撃をかわしたのは流石にレベルの高い冒険者だ。
「何だこれ……光魔法? いや神聖魔法か?? どっちにしても、かなり威力が高そうだぞ!」
「てか“敵対者”って何だよ一体! そっか、アイツさては偽者だな!? よりによってエルフィンに化けるとか許さねーからなっ!!」
「いや、ちょっと待てスバノンっ」
続く光線攻撃も、時にぎりぎりながら避け続ける中、憤ったスバノンが、やや離れた位置に佇む少女に向かって斬りかかろうとするのをブルーが止める。
「何でだよっ? ありゃ、どー見ても偽者だろーが!!」
「確かに“俺達の世界のエルフィンちゃん”では絶対ない、それは俺だって判る! だが……アスティちゃんの例を思い出せ、もしかしたら、こっちのエルフィンちゃんはああいう性格なのかも知れないじゃないかっ。その場合、彼女を殺したらこの世界が再び危機に陥るかもしれないんだぞ!」
「…っ! でも、あんなのが『もう1人のエルフィン』とか考えたくもねぇぞ!?」
「可能性としては有り得る以上、もう少し様子を見ろと言ってるんだ!」
【 ―― 熱線兵器の有効性、かなり低数値と判断。電磁投射砲、及びパララサス・アタックへ攻撃手段を移行。他手段も準備を開始】
回避しつつも激しく言い合う、その直中を流れる機械音声は不穏な単語を並べ立てる。直後、彼らには理屈が解りかねる奇妙な物理攻撃が襲ってきた。更に、うっかり片足を謎の光線に掠められたブルーがその場に倒れ込む。そこへ降り注ぐ攻撃は、だがスバノンが特殊スキルによる防御でどうにか防いでみせた。
「どーした、何もないとこで転ぶとかドジすぎるぞ!」
「違うっ、あの光線スタン効果があるんだ! どっちかって毒による麻痺に近いか ―― おい案内機械っ、いい加減攻撃を止めろ! 今までの俺達の行動、知ってる筈だろうが!?」
「無駄よ、貴方達の、私の代理人としての権限は剥奪済みだから。今やシュティグの全機能は私の意思の下に還っている。他の誰にも勝手には、システムへの命令は不可能です」
これ以上動けない状態ではまずい、と荷物の中にあった治療薬・レストポーションを使いながらブルーが叫ぶが……その無意味さを説くエルフィンは、ぞっとする程の冷笑を浮かべている。
その顔に戦慄しつつ ―― 何かに思い至った様に、ブルーが再び高い声を上げた。
「アスティ、じゃないティリアちゃん! ここに来てくれ、確か都市内のどこにでも出現できるとか言ってたよなっ? あの博士とやらを止めてくれ!!」
「それも無駄。電子妖精は私が作った私の忠実な部下よ? 呼び出した所で貴方には従わない」
《―― それは果たして、どうでしょうか》
「っ!! ティリア、お前反応早いなっ」
冷酷に言い放つエルフィンと、未だ防戦一方のブルー達の間に突如、今ひとりの彼らの仲間が現れる。……否、スバノンが言う通り、それはこの世界で最初に出逢ったあの妖精だった。




