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■今さら気づいた副題。
「脇役が主人公を差し置いて異世界トリップしたようです」
…まぁ私にトリップものは、これが限界ですきっと( ̄▽ ̄;
《今のは、どうしてもとお望みの人間以外には発揮しない性能ですが。常に外見を変更していては逆に人々の混乱を招きますから ―― 私は都市管理の任務上、この都市の機能全てとリンクし、それらを自在に操る権限を与えられており、且つ“人の心”をも備えた“最も人間に近い人工生命”としてプロジェクトの遂行役を仰せつかっております。尤もプロジェクトに不要な“感情”は省かれている様ですが……怠惰や寂寥といった感情は有った所で害にしかなりませんので》
「おい……ブルー。一体何がどーなってる話なんだ?? よく解らねーぞ」
「後で説明し直してやるから待ってろ。俺にも割と難しい内容だからな」
「割とって、何気に“結構解ってるぞ俺”アピールしてんじゃねぇっ」
少女 ―― ティリアの説明は確かに、およそ類似した文明を持たない世界の住人であるスバノン達には理解しにくいものだったろう。それでもどうにか既知の情報との摺り合わせを図りつつ話を聞いているブルーに、やや不機嫌になりつつもスバノンが日頃の「じゃれ合いコース」に入らなかったのは、やはりこの世界の情報が欲しいとの思いの方が優先されているのかも知れない。
従って、それ以上会話が中断する事はないままに、更なる説明をブルーが求める。
「プロジェクトってのは、具体的にどういうものなんだ? それに、それを君が遂行するって事は、他の人間は別の作業に就いてる感じなのか?」
《いえ。現在、この都市内に起きて活動している人間はいません。シュティグ住民はその全員が『冷凍睡眠装置』にて就寝中です。―― この世界は今から96年前、世界的な戦争による深刻な放射能汚染で地上はほぼ壊滅状態に陥りました。人類もその大半が死滅する中、事態を憂えた生存者達は地下10kmの深さにこの地底都市を築き上げ、そして再び地上で生活出来る日を夢見つつ、1000年後まで冷凍睡眠にて生き永らえる道を選択したのです。それが現在進行中の『スリーピング・シティ』プロジェクトです》
「眠って生き延びる? そんな真似、可能なのかブルー?」
「呪術と魔法を組み合わせての永続睡眠魔法を使った場合でも、身体はそんな長期間は保たないな……俺達の世界なら。あれは実質、相手を眠ったまま死に追いやる呪いな訳だし。同様に、氷結呪文で凍らせた所でそれは単に凍死へ一直線でしかない。まぁ、そう言う問題はこの世界に於いてはクリアできてるって事だろう ―― ところで、」
一応、基本情報は得られたと判断したか、そこでブルーは目下の最重要事項を口にした。
「この世界に、転移魔法陣……ある2つの地点を繋いで瞬時に移動する技術ってあるかな? 似た様な技術があるなら、或いはそれで俺達も自分の世界に帰れるかも知れない」
《都市内の各所へ移動する為の『転送ターミナル』でしたら、存在します。利用には都市住民である証明・IDコードが必須ですが、それは私の権限で何とか出来るでしょう。しかし……》
「―― しかし?」
《先刻、貴方達が突然イースト・エリアに現れた直後、恐らくは貴方達と同じ時空からやって来たと思われる多数の“侵入者”により、貴方達が通ってきたのであろうターミナルは破壊されてしまいました。かの“侵入者”は他の地域へも侵攻を続けており、現在私は『第一級防衛システム』を稼働中です。しかしながら、彼らは想定以上の不可思議な力で各地のシステムを破壊し続けている為、私はプロジェクトの根幹に関わるシステム及びエリアの防衛を最優先に動かざるを得ません……つまり、貴方達の帰還の為の、ターミナルの修復は現在不可能と言う事です》
「て、そんな大変な事が起こってるんなら、もっと早く言ってくれよっ。侵入者ってつまり、モンスターなんだろ? だったら俺達がサクッと退治して来てやるからさ」
《センシングは彼らの出現時点で済んでいますが、少なくとも私が保有するデータには、彼らの特徴と一致する外見・能力を備えた種族は存在しませんでした。従って、貴方の今の問いに即答は出来かねますが……モンスターとは、貴方達の力で排除可能な存在ですか?》
話が急に身近な感じになったせいか、普段の調子でスバノンが元気に宣言する。けれど、あくまで冷静にそう問い返すティリアへ、ブルーは慎重な返事を返そうとした様だったが。
「相手にもよるとは思う。下手をしてフォルスみたいな奴がこっちに紛れ込んでたりしたら、それは幾ら何でも2人じゃきつすぎ ―――― 」
「大丈夫、任せとけ! 例え魔王が来てたとしたって、きっちり討伐して来てみせるぜっ!」
「……お前、本気で馬鹿かおいっ!!」
あまりの安請け合いに思わず、と言った風にブルーがツッコむ。が、スバノンは本当に本気でその宣言を実行する気でいるようだ。―― せめてストラウスに屯していた連中程度で済みます様に、と心中密かに祈ってそうなブルーの眼前で、ティリアは相変わらず無表情のまま考え込んでいる様だったが、やがてその口が開かれ。
《あの“異分子”を全て排除可能と言うのであれば、この中央制御室から私も全面的にバックアップさせて頂きます。現在、侵入者は東西南北の各エリア末端にて破壊活動中です。ここからでしたら今でも、各エリアのターミナルへ飛ぶ事は可能……無事に“異分子”が排除できれば、順次クリーン化したエリアのターミナル同士を再接続も可能でしょう。―― この部屋以外で移動を行う際に備え、貴方達には一時的に、全てのターミナル及び主要機能へのアクセスが認可される様、シュティグの最高責任者・エルフィン博士のIDコードを貸与する事とします》
「―― は? 今、なんつったお前……エルフィンって聞こえたよーな??」
そこでスバノンが呆けた様な声になったのも無理はない。ブルーにした所が呆気にとられた、と言わんばかりの表情だ。
「しかも『博士』とか、ついてた気がするが……この世界、君だけじゃなくエルフィンちゃんのそっくりさんまで存在してるって事か?」
そんな彼らの前で、電子妖精なる少女は初めて微笑を浮かべる。―― それは、如何にもその人物について語るのが嬉しく、また誇らしいと言った風の笑顔だった。
《エルフィン博士はこの地底都市を設計、及び冷凍睡眠装置を完成させプロジェクトを実現させた、人類の救世主……そして史上最高の“人工知的生命体”である私の創造主でもあります。偉大なるプロフェッサー・エルフィンの存在なくして今日のシュティグは語れません ―― 私は、博士の期待に応える為にも必ず、この都市と住民達を守り抜かねばならないのです。プロジェクトの最終日……人々が目覚め再び地上へと降り立つその日まで》




