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聖樹にまつわる交響曲  作者: ファル
― fourth Mov. 異空に於ける変奏曲 ―
19/35

d-2

「何だ、ここ? 城で言う玉座の間とか? にしても広すぎだよな」

「今までにも増して奇妙な音がしてるな。1つひとつは小さいが……それに周囲がやたら光ってる。あっちは ―― どこかの地図にも見えるが、記憶にない地形だな……」


 言いつつ、その地図がある壁へと近寄ったブルーだが、それは彼らの故郷がある小大陸や島国とも、彼らの知識にある範囲での洞窟や遺跡のものとも異なっていた。ついでに言えば、所々に記された文字はブルーでも解読できない代物で、故にこれがどこを示した地図なのか判断がつかない。


【―― 走査結果、武器の携帯が認められるが攻撃性はほぼ皆無。人間ではあるが都市住民の誰ともデータ一致せず……出現の突発性及び出現ポイントより、先刻の“侵入者”同様の出自と予測されます】


「なっ……誰だ!?」


 唐突に耳に届いた声に、スバノンがすかさず誰何する。だが、それはどうにも奇怪な声だった。人と言うより、魔物が魔力による音声変換でも行った様な ―― ブルーが思ったその時。


 彼らの眼前に突如、現れたその人影に……2人が思わず声を揃えた。


「アスティちゃん?」

「お前 ―― 何で、お前までここに来てるんだ? アスティ」


《“アスティ”……登録データに、その様な名の持ち主は存在しません。私を見ての発言である以上、容姿は私に酷似しているのでしょうが、生憎この容姿に近しい人間もここには居ない筈です》


 どこからどう見ても、彼らの仲間の一人にしか見えない姿が、彼女とは似ても似つかぬ言葉遣いで告げる。その為スバノンは軽く混乱状態に陥った様だったが、ブルーは暫し考えた後。


「どうやら、あの魔法陣……本気で“異空間”に俺達を飛ばしてくれたみたいだな……いや。どっちかって、これは“並行時空”に近いか? アスティちゃ ―― いや違うんだっけ。良かったら、ここはどんな世界で君が誰か、どんな立ち位置にいるのか、辺りを説明してくれないか?」

《状況判断速度はかなりのものですね。貴方なら、この都市の人間として存在していれば確実に、プロジェクトチームの一員となっていた事でしょう》


 アスティ擬きの少女は、本物の彼女であれば有り得ない感情の見えぬ顔色と声音で、けれど一応ブルーを称賛したらしかった。それ故か、スバノンの表情が微妙なものになる中……。


《ここは『地底都市・シュティグ』の中央制御室<セントラル>……私はこの都市の管理を一任されている『電子妖精』ティリアと申します》


「電子、妖精? 精霊みたいなものか?」


《精霊……それに似た存在なのかは判りかねます。簡単に言えば、人間の脳内神経回路を精密に再現した人工知能を搭載した“人工知的生命体”です。ちなみに、貴方達の前に在る姿は人間が認識しやすい様、との配慮からプログラムされた容姿データに基づき構成されているホログラム……3D映像の仮想肉体です。私の本体は、プロジェクトの開始に先立ち劣化防止の為、とある場所に保管されております。今の本体と言えるのは頭脳部分が組み込まれた、ここ中央制御室内のスーパーコンピュータなので恐らく、貴方達には“意思疎通可能な相手”として認識しづらいでしょう》


「ホログラム……コンピュータ? 言ってる内容からすれば、後半のは……エーテルタワーの『魔法力制御装置』みたいなものかな? 確かに、装置が生きてて普通に会話が出来るってのは違和感あるな」

《ホログラムは、シュティグ内であれば何処にでも出現させられます。別の容姿がお望みでしたら変更も可能です ―― この様に》


 説明の途中、その姿が急に幻覚の様に揺らいだと思うと、少女の姿は瞬時にブルーのそれへと変化した。当人はもとよりスバノンも仰天する中、電子妖精は再び本来の外見へと還ってみせる。


「よ、要するに変化魔法に似た様なものかな、今のは……仮想肉体ってのは多分、精霊の半実体と同じ様に考えれば良さそうか」

 未知の技術による現象に軽く動揺はしているらしいが、それでもブルーの方は受け答えを続けている。その様子に、解説続行は可能と見て取ったらしい少女も言葉を繋いだ。

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