第31話 ボッチ的には一番傷つく奴なんだって!
「A卓、チョコパンケーキ1、マカダミアパンケーキ2、タピオカミルクティー3入りました」
「B卓は、肉巻きおにぎり串4、みたらし団子2で!」
「「「あいよ!」」」
我がクラスの出し物のコンカフェは、活況の様相を呈していた。
コンカフェの癖に妙に料理の品揃えが豊富なのが謎だが、食い物には手を抜かないというのが、叡山高校の文化祭だ。
なお、文化祭に全力過ぎて、3年生の浪人率が高い事を俺は入学した後に知った。
浪人って、俺の家庭事情的に出来るんだろうか……。
「パンケーキあがり! 肉巻きおにぎり串は焼きあと1分だから、追いタレつけるの誰かお願い!」
「おお! 九条、手際イイな」
「助かるわ」
叡桜女子高との合同文化祭の関係で、ほとんどクラスの出し物には関与できなかったからな。
せめて、当日くらいは人一倍動かないと。
「は~い。チェキは1人300円ですぞ~。はい、魔法少女に女隊士のセットは800円になります~」
ようやく裏方のキッチンからホールの方に出ると、凛奈と愛梨は大人気なようだ。
さっきからキッチンにも聞こえてくるが、愛梨と凛奈は給仕すらしてなくて、有料撮影会ばっかりしているようだ。
「盛況だな」
「おお、九条殿。あの2人のおかげでお客さんがひっきりなしでござるよ。あ、吾輩も入れた3人セットですか? 1,000円になるでござる~」
撮影の仕切りは中條さんが取り仕切っているようだが随分と忙しそうである。
なんでも、夏と冬のオタクの祭典で慣れているらしいから、中條さんがまさに適任なのだろう。
「まったく……。なんで、我がこんな事を……」
「折角の文化祭なんだから一緒に楽しみましょ。後で、才斗が何でも奢ってくれるから」
ぶつくさ文句を言う愛梨を、凛奈が俺の財布を勝手に生け贄にして励ましている。
「そもそも、なんで我が魔法少女の格好なのじゃ痴女お嬢!」
「だって、愛梨ちゃん似合ってるから」
愛梨が着ている衣装は、凛奈がコスプレ専門店でついでに買った衣装を、中條さんが仕立て直してくれたものだ。
頼むから、今、自分が着ている衣装を凛奈が着て俺を誘惑してきた事には気づかないでくれよ……。
愛梨がバーサクモードで暴れ出したら、収拾がつかなくなるからな。
「我も、もっと大人らしいのが良かったのじゃ」
「いやいや、愛梨殿。この魔法少女姿がこんなに似合う子は中々いないでござるよ。誇っていいでござる」
「……それ、褒めておるのか?」
「大きなお友達の客層まで呼び込めているのは、完全に望外の喜びでござるよ。愛梨殿のおかげで、売上も想定よりうなぎ上り。これなら、文化祭後の打上げも派手に行けそうでござるな~。あ、いらっしゃいませ~」
ちょろっと雑談をした程度で、またお客さんが入って来た。
その後も客はほとんど途切れることは無く、俺もキッチンでひたすらパンケーキや焼き肉おにぎりを焼くのに忙殺された。
◇◇◇◆◇◇◇
叡山高校文化祭は午後の部に入った。
ちなみに、クラスの出し物の出勤シフトについては、1日を午前の部と午後の部で分けて、1日目、2日目共にどちらかは出勤する事になっている。
だが、俺や凛奈は明日の叡桜女子高との合同演劇の準備等もあるので、1日目に出勤を集中させているダブルヘッダーとなっている。
そして午後の部なのだが。
「あの、中條さん。午後の部は、午前とは打って変わってお客さんが居なくて閑古鳥が鳴いてるんだけど」
「そうですな。だって、ホールに男子しか出てないですからな」
そうなのだ。
午前の部は、愛梨と凛奈たちを筆頭にして、クラスの女子たちに鼻の下を伸ばした男客が溢れていたのに、今は店内が閑散としている。
なぜなら、ホールには俺と同様に男子生徒しかいないのだから。
「あと、何で俺以外は皆、執事服に着替えてるの? 俺の分は?」
執事喫茶の中に、一人だけ大正浪漫活劇の剣士が紛れてるから、俺だけ場違い感が半端ない。
なお、中條さんも合わせてか、午前の部のゲームキャラではなく、シックなメイド姿へ変更していた。
「ああ、これは当初からの作戦通りなのですよ。九条殿は叡桜女子高との折衝が忙しそうで服の採寸が出来なかったので無しでござる」
「何それイジメ!? 別に昼休みとかに声かけてくれれば良かったじゃん!」
こういうので一人だけハブにされるのが、ボッチ的には一番傷つく奴なんだって!
「だって九条殿は最近の昼休みは、西野殿と従者の草鹿先輩と一緒にイチャイチャお弁当食べたりしてたじゃないですかぁ。吾輩たち衣装担当には、そんなピンクな現場にズカズカ入って行く度胸は無いでござるよ」
「ぐ……」
それは確かに、一理あるか……。
「ちなみに、草鹿先輩には執事服とメイド服のデザイン監修として手伝っていただたいたでござる」
「転校してきたばっかりの先輩に声かける度胸があるなら、俺にも声かけれたじゃん!」
やっぱり、わざとだろ畜生!
「あと、草鹿先輩からも、九条殿だけは大正浪漫剣士の格好のままの方が良いとアドバイスされたでござる。その方が面白……目立つからと」
「この格好、前腕に着けてるアームカバーが妙に重いのと、腰に下げてる模造刀が重いんだよ。下のモンペを脱がないと何故か外せないし」
どうやら、俺だけ浮いている今の格好は、草鹿さんからの日頃の報復が兼ねられている様子。
表立って反抗できないからって、こんな陰湿な事をしてくるなんて。
それもこれも、元を質せば剛史兄ぃが草鹿さんを揶揄っているストレスのせいだろ。
今日も文化祭当日だって言うのに、ほとんど姿を見せないとか……。
学校の教師も、九条家の暗部もどちらも首になるぞ。
「まぁまぁまぁ九条殿。そろそろ、お客さんたちがいらっしゃいますからな」
「そろそろ?」
メイドらしく懐中時計で時間を確認していた中條さんが、俺に準備を促す。
はて?
閑古鳥が鳴いているのに、なぜそろそろ客が来ると分かるんだ?
不思議に思っていると。
「ここがコンカフェですか」
「ほう……。中々に衣装も凝ってますわね」
「うちの家のバトラーと似たデザインの燕尾服ですわ」
ガヤガヤと店前が騒がしくなる。
「「「うぉぉぉおお! 叡山桜女子高の皆さんだ!」」」
「スタッフの皆さん。紳士でござるよ紳士に」
執事服の男子生徒たちが俄かにテンションを爆上げするのを、メイド長の中條さんが窘める。
成程。
午後は、叡桜女子高の生徒がこっちの学校の文化祭に参加する日だったのか。
そのために、女子ウケを狙って執事服で固めたって訳か。
随分と思い切った戦略を立てたな中條さんは。
ん? そう言えば、叡桜女子高の面々が来たという事は……。
「こちらです玲様」
「やっほぉ~才斗。遊びに来たよ」
他の高校の文化祭でも関係なし。
とっても目立つ、女子高の王子様の登場であった。
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