その頃、王都にて(4)
「突然すまないね、君とどうしても話がしたくてな。就任式を終えたばかりだが、勘弁してほしい。」
「いいえ・・・そんな・・・」
なんか困惑しすぎて自分自身の発言がだんだんおかしくなっている気がする。俺が俺を見失うって、完全にアホすぎるだろ。
同期や兵士長相手ならヅカヅカ踏み込めるんだけど、完全に今の俺は、生まれて初めて外の世界を見た小鹿じゃんかよ。
こんな姿、家族には見せられないな、特に妹であるコンには。
でもコンも、山の中で倒れている兵士長を見つけた時も、こんな感情だったのかもしれない。
にも関わらず、戸惑いから抜け出せない中でも、兵士長をしっかり助けたコンは、やっぱり偉い。兵士長が妹を気に入ったのも頷ける。
コンは昔から、困っている相手が例え里の住民であろうと動物であろうと、放っておけない性格だったからな。
まだコンが小さい時、何度も何度も家に傷を負った鳥を持ち込んでたな。成長しても、その性格は健全みたいだ。
そんな妹の兄である俺が、こんな状況を飲み込む事ができないなんて、恥ずかしいにも程がある。コンにバカにされてもしょうがない。
「まず、我が王都の兵士としての就任、おめでとう。私としても、驚いている節がある。
まだ君は若干18歳、まだその歳では座学を覚えるだけでも精一杯な筈。だが初回の遠征で我々を驚かせ
る結果を出した。
人間よりも優れた体力と持久力を持ち合わせる人獣である事も一因だが、この結果は君の日頃から絶え
間なく続ける努力がもたらした結果に他ならない。
君の頑張りは、君の横に立つ兵士長が評価している。彼は私としても信用に値する存在だ、君の成長
は、彼も楽しげに報告しているんだぞ。」
「でっ、殿下・・・」
兵士長は、ちょっと慌てふためきながらも、確実に照れを隠していた。そしてその反応を楽しんでいるアン殿下。
さすが兵士長、陛下のみならず、殿下ともこれほど信頼を繋いでいるなんて、そこら辺の兵士とはやっぱり格が違う。
俺はしばらく置いてけぼり状態だったけど、互いのやり取りは、第三者である俺が見ていても、微笑ましい光景だった。
信頼は、決して形では表現できない上に、目に見えない分厄介でもある。
でも互いに『良い関係』という意識を持つだけでも、信頼を得るのは、それほど難しい事はではないのかもしれない。
・・・まぁ、やっぱり相手にもよるんだけど。多分、殿下と兵士長は、そんなに短い付き合いではないんだろうな。




