その頃、王都にて(3)
「アン殿下、お連れしました。」
「おぉ、入ってくれ。」
「・・・・・
・・・あ・・・あ???」
ついつい、口から声にならない音が出てしまった。
一瞬自分の耳を疑ったけど、部屋の先で待っていたのは、紛れもなく、『アン殿下』であった。
この国を統治する王族の名前くらい、座学で教わった。というか、それくらいは覚えていないと、兵士になる資格なんて持てない。
この場所は簡単に『王都』と括って言われているけど、正式には〈オオヒモト帝国〉という、俺達の住んでいる『島国』の中心地。
そしてこのオオヒモト帝国を太古の昔から支配しているのが、〈ワコン一族〉である。
ワコン一族は、この国を長年治め続けた、由緒正しき一族であり、俺達兵士の最高指揮官。
国で起きた幾度の災害や事件にも深く関わっている、国と共に歴史が深い一族でもある。
詳細については、俺もそんなに深くは理解していないけど、この帝国を治める人間は、ワコン一族の人間でないといけないのは、それほどワコン一族が国全体から信頼されている証でもある。
そして、次期国王でもあり、第一王子の名前、それが
『アン殿下』
俺に関しては、ついさっき会ったばかりだ。兵士就任式で、国王から直々に鎧を贈呈された時、国王の隣に座っていたのは、紛れもなくアン殿下。
間近で見る王族の気風と威厳には、何とも言えない恐ろしさがあった。
あの感覚は、初めて里の山を見た時の様な、鳥肌が自然と逆立つ様な迫力。
同じ人間の筈なのに、何故あれほどの威厳を纏う事ができるのか、興味はあるけど恐怖の方が勝る。
他の王族や貴族が、ワコン一族に口を出せないのにも納得できる。
あれが数千年続いた一族故の威厳なのか・・・と、改めて自分の置かれている身がどれほど重いのかを実感した。
ワコン一族と共に生き抜いたこの国を守り、支える兵士になる・・・という事が、どれほど誉れ高い事なのか、どれほど鼻が高い事なのかを。
自分の鍛錬にしか意識を置いていなかった俺としては、正直一族に申し訳ない気持ちがする。
そして、この一大事の幕を開けた人物こそ
『次期王』である、アン殿下であった




