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地味な読書少女と、世界を綴る本 ~静かに始まる小さな奇跡  作者: 秋月心文


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綾部総理大臣邸訪問

「お母さん、明日、綾部さんとこに行ってくるから…」


「綾部さん?」


「うん、いつも学園トップの子。一緒に勉強会するの。送り迎えの車も出してくれるって…」


「車?」


「綾部さんのお父さん、総理大臣してるから…」


「え?、え?、え?」

お母さんは、口をパクパクさせていたが、たぶん、話は伝わったのだろう。まぁ、いいとしよう。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


総理大臣「綾部あやべ 総一郎そういちろう」は、久しぶりに家族と夕食を取っていた時に、

娘から、明日、同じ学校の「明石あかし あきら」さんを、家に呼んだから…と聞かされた。

まさか「読み手」の「明石あかし あきら」が、娘の友人だったとは…。


何人かの要人と共に、その日の公務をキャンセルし、

彼女の訪問の為、通る道や、屋敷の周りに、さりげなさを装った私服警官を配置しつつ、有事に備えてた。


綾部邸内も、さりげなさを装いつつも、最大級のおもてなしをすべく、とても慌ただしい準備に追われていた。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


明石家の前に、ものすごく高そうな黒い車がやってきた。

後部座席は、少し低い位置に、とても大きな電動スライドドアが設けられていて、乗り降りがしやすい。

これに対し、運転席は小さなドアになっている。


ピンポン…


「あ、来たみたい。それじゃあ、お母さん、行ってきます。」


迎えに来たのは、国家情報局の水瀬管理官だった。

彼女は、お母さんに頭を下げ、

「それじゃあ、娘さんをお預かりします。6時までには、こちらにお送りする予定です。」


「娘をよろしくお願いします。」

彼女にエスコートされて、車の後部座席に案内された。


さすが高級車。シートが、とても気持ちの良い感じにふかふかで、手触りもいい。

見た目は、少し車高が高い感じの普通の車だったけど、中は、かなり特殊な構造になっていた。


運転手が乗る前部座席は、後部座席より高い位置にあり、座席は真ん中のみで、左右に席はない。

左右いずれの方向からも乗り込む事が出来るように、シートは左右に動くが、運転時は中央に移動するらしい。


後部座席は、中央には、運転席より、少し狭いくらいの幅の大きなひじ掛け兼テーブルのような空間があり、その左右に1人づつ座る広い幅のシートがあり、後部座席の前には座席がない構造になっている。

だから、後部座席からでも、前方の景色が良く見えるし、足を存分に伸ばす事が出来るような構造になっている。

左右個別にリクライニングが可能で、なんなら、ベットのように水平にリクライニングし、ベットのように寝る事も出来るようになっているらしい。


プライバシーを保ちたい時には、運転席と後部座席の間のカーテンで、シートの周りを囲む事が出来るようになっているそうだが、とりあえず、景色を楽しむ事にした。


移動してきた道の左右には、私服なのに、なぜか「警察官」とわかる人たちが配置されていた。

「もしかして、今日の為に、警備の方を配置されたのですか?」


「え?。不自然でしたか?。なるべく自然な感じを装うようにしてもらっていたつもりなのですが…」


「私もよくわからないのですけど、なぜだか「警察」の方だと感じたので…」


「なるほど。それは「グリモア」が教えてくれたのだと思います。それにしても、わかってしまいますか…。はぁ…。」

彼女は、少し頭を抱えていた。たぶん、絶対にバレないようにしてたハズだったのだろう。


余計な事を言ってしまったな…と、少し申し訳ない気持ちになった。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


高い塀で囲まれた場所が見えてきた。

かなり広い範囲が塀で囲まれているらしく、どこまでの範囲が囲まれているのか、把握する事が出来ない。


さすがは、総理大臣の邸宅だ。


こういう邸宅は、高い木が色々と植えられているイメージがあったが、

セキュリティを考えての事だろうか、

塀の中に入ると、塀の周りは砂利が敷き詰めてあった。

誰かがそこを踏むと音が出てしまうつくりのようだ。


そして、その中は高い木などはなく、

かなり広い空間が、花、芝生、石、滝、小川、池などで構成されていた。


侵入者があったら、カンタンに見つかってしまうだろう。

代わりに、屋敷の中には、とても広い中庭があるそうで、そこには、様々な木々が植わっているとの事。


そして、少し、先に、地上3階建て(地下は不明)のとても巨大な邸宅が見えて来た。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


屋敷の玄関は、まるで高級ホテルのロビーを思わせる広さと豪華さだ。

とても、一個人の屋敷とは思えない。


屋敷に着くと玄関ロビーで、綾瀬さんが待っていた。

表情からは、とても待ち望んでいた…とでも、言いたげな表情が伝わってくる。


いや…、そこまで熱望されても、困ってしまうのだけど…。


早速、綾瀬さんの部屋に…と思ったが、セキュリティの関係なのか、応接室のようなところに通された。

とても広い場所の中で、綾瀬さんと二人だけというのは、なんとも、不思議な感覚だった。

とはいえ、そうなる事は、前日のうちに「グリモア」が見せてくれる物語の中で知っていたので、平静を保つ事が出来た。


「じゃ、早速始めましょうか」

私は、早速用事を済ませる事にした。


「え、えぇ、よろしくお願いします」

綾瀬さんの方が、戸惑っている感じだった。なんだか、不思議…。彼女の家なのにね。


私は「グリモア」が見せてくれた「試験勉強に励む女の子の物語」を綾瀬さんに語り始めた。

「グリモア」の不思議の力のせいか、一字一句記憶出来ている。

だけど、記憶だけで語るのはちょっと不自然な気がしたので「グリモア」を読んでいるフリをしながら、それを行っていた。


綾瀬さんは「速記」というのを学んいるそうで、

とても速い速度で、私が語る「試験勉強に励む女の子の物語」を書き残していった。

とてもスゴイ能力だと思う。


語っているのをメモしたいと言われた時は

「書くのが追い付かなくて何度も話をしなおす覚悟」をしていたのだけれど、

私の語り聞かせの方が、彼女の記述よりも、遅いくらいだった。


綾瀬さんは、感情がでやすいタイプらしく、時々、目に涙をうかべたり、クスっと笑ったりしていた。

それでも、記録が止まったり、遅くなったりしないのは、流石だと感じた。


「グリモア」の話で感動するのが、私だけでないのを知って、ちょっと、うれしかった。

語り聞かせが終わった頃には、私は綾瀬さんの事を「同士」と感じ、とても親近感を覚えていた。


私の語り聞かせが終わると…

「これ、とても面白いわ。

 これを出版したら、きっとベストセラー間違いなしね。ものすごく楽しみながら勉強出来たもの」

そう言って、私の手を両手で覆って…

「次の試験前にも勉強会というテイで、全教科の語り聞かせをお願いしたいのだけど、ダメかしら?」


「え?、えぇ…」

語り聞かせに数日かかりそうだけど、たぶん、私もどこかで読むだろうし、どこで、読んでも一緒よね…。


「それで、卒業までの語り聞かせメモが溜まったら、それを出版してみたいのだけど、ダメかしら?」


「版権?とかいうのは、よくわからないけど、たぶん…、構わないと思います」

私には「グリモア」が見せてくれる話に「版権」というものが存在しているのか、わからなかったけど「グリモア」に出会うまで、こういう物語を見た事はなかったし…。

何より「グリモア」から「問題」という「意思」も感じなかったので…。

もっとも「意思」というものがあるのかどうかもわかっていないのだけど…。


「やった!ありがとう」


こうして、出版の手続きも進めていく事になったが、流石に、女子高生が「本名」を出すのは、問題ありそうだ…という事で、後日二人のチームの名前ペンネームを考える事にした。

出版は卒業後と言っていたし、まぁ、それまで考えておけばいいよね。


このシリーズ本は、後日、大ベストセラーになり、一大ブームを巻き起こす事になるのだけど、それは、まぁ、後の話だ。

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