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地味な読書少女と、世界を綴る本 ~静かに始まる小さな奇跡  作者: 秋月心文


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6/9

前期中間考査

おばあちゃんのお通夜、お葬式を終え、家に戻ってきた。


そろそろ前期中間考査なので、明日から、試験勉強、はじめないと…。

明日、学校に行くための準備を始める。


いつものように教科書、ノート、それから・・・・。

「グリモア」と「直通電話」もカバンに入れ、財布には例の「黒いクレジットカード」も入れておいた。


「グリモア」はノートの姿に偽装しておいた。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


学校では、いつもと同じように授業を受けていたのだけど、

いつもより、授業の内容が頭に入っていっている気がした。

少しだけ、頭が良くなったような感覚を感じていた。


いつもボソボソとしゃべって聞こえにくい為、

とても眠くなる事で有名な数学担当の「真倉まくら先生」の授業でも、

不思議とハッキリ聞き取る事が出来て、今日は、眠らずに授業を終える事が出来た。


先生の話し方が変わったのかな?…と思い、

周りを見ると、教室の7割以上の生徒が、眠気に勝てずに寝てしまってたので、

いつもの「真倉まくら先生」の授業だったんだな…と思った。


今日から、授業の内容が頭に入ってきた…といっても、私の成績は、いつも、中の中くらい。

極めて平凡な成績の私が、そんな変化くらいで、何かが変わるとは思えない。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


休み時間は、ノートに偽装された「グリモア」を読んでいた。


本は大好きだけど「グリモア」の話は「普通の本」と比べて、バツグンに面白い。

活字で表現されているのに、とてもリアルで、実体験をしているかのように、没入出来る。

飽きさせない工夫が随所に見られて、ず~っと読んでいたいという気にさせる。


ふと、私は、周りの視線が気になった。

私は、本を読んでいる時、表情が、ものすごく変わってしまうらしい。


いつもは、単行本を読みながら、それをしているので、まだ良いのだが、

今日は、自分のノートに偽装した「グリモア」を読んでいる。

周りから見たら、自分のノートを見ながら、ニヤニヤしている変なヤツに見えてたかも?。


ノートに偽装させるのは、ちょっと「無理」があったかな。

これからは、単行本に偽装させる事にしよう。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


放課後、私の居場所は、いつも通り図書館だった。

でも、今は図書館の本よりも「グリモア」に夢中だ。


今は、いつも読んでいる小説の単行本の姿をさせている。


家でも読めるのだが、お母さんが煩いので図書館に来てしまう。

それに図書館は、大好きな本の香りに囲まれて、落ち着くのだ。


「グリモア」の中の話は、試験勉強をする少女の話になっていた。


数学では、話の中で、主人公の少女は試験勉強をしているが、

あるある的な失敗をやらかしながら、解決策を自ら見つけ出し、

理解を深めていくというという内容だった。


歴史では、過去の史実を実体験していった。


物理や化学では、実際に、様々な実験をしていきながら、

公式を生み出すまでの過程を実体験していった。


…というような感じで「グリモア」の話は、とてもリアルで、自分が実体験したように感じていた。

だから、どんな参考書よりも、わかりやすく頭に入ってきた。


それでいて、実際に体験するよりも、非常に短時間で、それを読み終えていた。

だから、あれも、これも、勉強する事が出来た。


一度にたくさん詰め込むと、頭がパンクしそうになる気がするが、

不思議と、頭の中はスッキリしていて、いくらでも読めそうだ。


そして、不思議と、それは、今度の試験範囲に合致していた。


だから、試験前でも「グリモア」だけを読んでいた。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


試験当日。

今回は、いつもより、ちょっとだけ出来た気がした。

いつも、中の中くらいだけど、今回は、中の上くらいに、なってるかも…。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


数日後、試験結果が、壁に貼り出された。

うちの学校では、答案が返される前に、試験順位と合計点数が貼りだされる。

いつも、学年の真ん中くらいという平凡な順位の私にとって、順位など興味がない事だ。


だけど、今日は、皆が、なんだか、騒いでいた。

「えっ?。あれって、うちのクラスの明石さん?」

「明石さん、すごっ…」

…とか、聞こえてくる。え?。私、何かやらかした?。


普段、本ばかり読んでいる私に、話かけてくる人なんて、殆どいないのだが、この日は違っていた。

「明石さん、明石さん、すごい事になってるよ。」

「明石さん、あんた、どうしたの?。」


「え?」


「ちょっと来て、来て…。」

試験順位が、貼りだされているところまで、連れてこられた。


「見て、見て、あんた、1番になってるよ?」


「え?、えぇ…!?」

え、学年トップ?


「グリモア」で勉強した「前期中間考査」は、信じられない成績になった。

あれ?、全教科満点?。私だけ?。

何だか、2位の人と大差をつけて、ブッチギリの1番になっていた。

あれぇ…!?


「あんた、一体どうしたの?」


「えーっと、今回、いつもと、勉強方法を変えたからかな…。」


ふと視線を感じて、振り向くと、中学の頃から、常に学年トップの才女「綾部あやべ 希美のぞみ」さんが、怖いくらい悔しそうな目で、私を見ていた。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


綾部あやべ 希美のぞみ」は、総理大臣「綾部あやべ 総一郎そういちろう」を父親に持ち、自分も総理大臣になる事を夢見ている。

その為、常に、何でも1番になる事に、とても、こだわりを持っていた。


スポーツ万能、容姿端麗、成績優秀で常に学園トップ…を維持し続けてきたのだが、今回の前期中間考査では「明石あかし あきら」に負けた。それも大差で…。


今回の試験は、とても難しかった。特に数学が…。


数学担当の「真倉まくら先生」は、いつもボソボソとしゃべって聞こえにくい授業をする為、とても眠りを誘う事で有名で、生徒たちからは「眠りの真倉まくら」と呼ばれている。

たぶん、まともに授業を受けれてた子は少ない。


その上、ちゃんと聞いていても、先生の授業はわかりにくいので、

塾に通うか、家庭教師でもつけない限り、数学の点数は期待出来ないと言われている。

なので「綾部あやべ 希美のぞみ」も家庭教師に教えてもらって、補完していた。


だけど、今回は、それ以上に、問題の難易度が高かった。


なぜなら、数学の「真倉まくら先生」は、普段の授業でも、自分がどこまで教えたのか忘れてる事が多く、ほぼ毎回のように、いつも、生徒に「今日は、どこからかね?」と聞いてくる。

テスト問題も、どこまでの範囲から出題するか、よく把握してない状態でテキトーに作成する事が多いらしく、時々、教えてない範囲から出題してくるから注意してね‥と先輩たちから聞いていた。


だから、それに備えて、少し先のところまで予習するようにしていたのだが…。

今回出題されたのは、年度末くらいにやるような先の範囲のものが混じっていた。


結果、殆どの子が成績を落とした。ホントに勘弁してほしい。


だけど、そんな問題が出ていた数学も「明石あかし あきら」は、満点だった。


明石あかし あきら」の事は、中学から知っていた。

同じ学校で、同じクラスだった事もある。中学でも、学年の真ん中くらいだったと思う。

少なくとも、学年上位50位に入る事などは1度もなかった。極めて「普通の子」だった。


そんな子が、全教科満点…!?。


何か勉強方法を変えたに違いない。どこの塾?。どこの家庭教師?。知りたい…。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


ふと、綾部さんと、目があった。


すると、綾部さんは、ズカズカと大股で、こちらに向かってきた。

「ちょっと明石さんに、お伺いしたい事があるんだけど…」


「何?」


「さっき、勉強法を変えたって言ってるのが聞こえたのんだけど、

 私にも、それ、教えてくれない?。私、何が何でも、1番でありたいの。」

彼女は、私の目をしっかり見つめて聞いてくる。

コミ障の私には、こんなに見つめられて話をされるのは、ちょっとツライ。

だけど、彼女の目から「どうしても知りたい」という強い意志が伝わってくる。

でも「グリモア」の事を言っても信じてもらえないだろうな…、何て言おうか…。


「ちょっと言いにくいんだけど、私、本好きで、いつも活字と向き合っていて…」

綾部さんは、真剣なまなざしで、私の目をしっかりと見つめ、私の話に聞きいっている。


「今回は、小説仕立てで書かれている参考書を譲ってもらったので、それを読んでみたんです。

 挿絵も図解もない本なので、私みたいな本好きでないと、逆にしんどいかもしれないです。」

…と、やんわりと、かわしてみたつもりだったけど…


「それ、私も読んでみたいわ。」

うーん「グリモア」は、貸したりする事が出来ないみたいだし、他の子では「読めない」らしいし…。

活字ビッシリの、今回読んだ話を、一部だけでも、書き写してみせたら、諦めてくれるかな!?。


「形見として譲られた本なので、貸してあげる事は出来ないんだけど…

 試しに一部分だけでも、書き写してみましょうか?。」


「コピーしてくれるの?」


「いえ、ちょっと事情があって、コピーとか出来ないので、

 私が、文字として、書き写す事になるんですが…」


「そこまでしてもらうのは、申し訳ないわ。

 明石さんに、音読してもらって、それを私が書き写すとかいう事は出来ないかしら?。

 出来れば、今度の日曜にでも、私の家で…。送り迎えの車も出すわ。」


「車?」


「私のお父さん、総理大臣してるから、歩いて登下校すると、

 誘拐される危険があるから…って、いつも車での送り迎えなの。」


そういえば、綾部さんは、この前、通夜であった総理大臣と、同じ名字だ。


「じゃあ、今週の日曜に…。迎えに行くので、住所教えて…。」

何だか、ものすごくグイグイ来る子だ…。

熱意に負けて、住所を教え、今度の日曜に、彼女の家に行く事にした。

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