いろいろ出来るらしい
「この本について知っている事を教えてもらっていいですか?」
「私の知っている限りですと、
「グリモア」は「読み手」が手にした瞬間から「読み手」と一体化するそうです。
故に「グリモア」の「重さ」が感じなくなるようで、
先代様も「とても軽く感じる」とおっしゃってました。」
「また「グリモア」を、どこかに置き忘れても
「読み手」が読もうとすると何事もなかったように手元にやって来るそうです。」
「あ、ちょっと待って、メモをするから…」
「いえ、それは、出来ません。」
「機密事項とか、そういう事?。」
「いえ「グリモア」について記述を行おうとすると、すべて消えてしまうので…」
「え、何それ?」
「こんな風に…」
彼女はメモ帳を取り出し、そこに「何か」を書いてみせた。
ペン先は、メモ帳の上を移動しているのに、メモ帳には何も書かれていないし、筆跡すら残っていない。
どうやら「グリモア」の事を書いてみせてくれているらしい。
「故に「グリモア」については、口頭伝達のみで伝えられて来ております。」
「そうなんだ…。」
「ですが「読み手」の方は「グリモア」と繋がっている為、
全ての事は「グリモア」が記憶してくれるので、
絶対に忘れないし、どんな些細な事でも思い出せるとお聞きしています。」
そういえば、さっき、名刺もらった時もそうだったっけ…。
「あと「グリモア」は「読み手」の意思に応じて「見た目」や「大きさ」も変えられるそうです。
例えば、教科書とか、週刊誌とかに偽装したりする事も出来るんじゃないかと思います。」
何、それ?。面白そう。後でやってみよう。
…て、思ってたら、いつも間にか「グリモア」が「数Ⅰ」の教科書になっていた。
見た目も大きさもそのものだ。
教科書に書いていた私の名前はもちろん、表紙の汚れやヨレ具合まで、忠実再現されている。
なんか、面白い。
それを見ていた彼女も、それに感動していた。
「すごい、ホントに変えられるんですね…。
実際に目にするのは初めてで、とても驚きました。
教科書そっくり…。私の時と、同じ表紙で、ちょっと懐かしいです。
開いてるページの中身も教科書そのものなんですね。」
…と言っていたが、私には「本」の中身は「教科書」には見えない。
いつもの「グリモア」のままだ、
「本」の中身は、人によって、見え方が違うらしい。
「このコ、他には、どんな事が出来るの?」
「そうですね。銃弾をはじくとか、切ったり、燃やしたり出来ないと聞いた事があります。」
「この「グリモア」を盾に使えるって事?」
「いえ、晶様は既に「グリモア」と一体化していますから、
盾として使わなくても、そういう存在になっているらしいです。」
「素手で、銃弾が防げるって事?」
「いえ、体のどこに銃弾を浴びても、おそらくはじいでしまうと思います。」
「え?、私、そんなに無敵なの?」
「はい、誰も試した事はないので確かではないですが、
おそらく核攻撃さえも、無効化するのではないかと言われています。」
…私、とんでもなく、無敵な存在になってしまったらしい。
「あとは、毒や病原菌を無効化するという話も聞いた事があります。」
…今後、お医者さんの世話になる事もないらしい。
「でも、先代様のように、老衰では亡くなるので、完全無敵という訳ではないですよ。」
「たしかに…。」
「あと、言い伝えでは、大陸を沈めたりする事が出来るらしいです。」
「え?」
「過去に、アトランティス大陸にあった大国が、
「読み手」のいる国に戦争を仕掛けたせいで「読み手」の怒りを買い、
その国は、アトランティス大陸ごと、消えてなくなったという伝説がございます。
ムー大陸の消失にも係わっているらしいと言われています。」
「これ、そんなに怖いものなの?」
「そのような使い方さえ、なさらなければ良いので、大丈夫です。」
いや、何が大丈夫なんだか…
「あと、こんな事が知りたいって思って「グリモア」を開くだけで、
必要な事は何でも教えてくれるそうです。
もう、スマホで検索する必要がなくなりますね。」
「へぇ、便利だね。」
「但し「グリモア」が教えてくれるのは「世界の真実」なので、
他の人に伝える時には、注意してくださいね。」
「どうして?」
「我々、人類には、まだ未解明な事が、多々ございます。
それ故に、間違って伝えられている事もありますが、
あえて、隠されて、事実とは異なる内容で、伝えられている事なども、ございます。
「世界の真実」では、そういう事を飛び越えて、本当の真実を伝えてしまうので、
学校で教えられている「現代の常識」とは違っている場合があるからです。
もしも、学校の勉強で、わからない事が出た時には、
「真実」ではなく「学校で教えられている事」を教えてと、思う必要があります。」
「なるほど…」
…人類がまだ知らない「世界の謎」も、知る事が出来てしまうらしい。
なんだか、すごく興味が沸いてきた。
「スマホみたいに…って事だったけど、このコで電車に乗ったり、支払いが出来たりするの?」
「確かに「世界の全て」とも言われていますから「グリモア」で、
それが出来る可能性はあるかもしれません。
ですが、誰も試した事がないので、わかりませ‥」
…と、言いかけたところで…
彼女は何か、思い出したらしく、少し、大きな声を出した。
「あ…あぁっ!!。」
「す、すみません、すっかり忘れてました。」
彼女は、カバンの中から、防犯ブザーみたいな大きなのものと、
スーツの内ポケットに入れていた財布から取り出した1枚の真っ黒いカードと一緒に、私に差し出した。
「晶様は、この世界で唯一の「読み手」でいらっしゃいますが、
「読み手」がいる国は、基本的に他国から攻撃を受ける事はありません。
先ほどのアトランティス大陸の言い伝えがありますので…。
晶様がおられるだけで、とんでもなくスゴイ外交カードとなり得るのです。
故に、晶様は、この国が、全力で保護する事になっております。
ですので、何か、必要な時に、これをお使いください。」
「この端末は、我々、国家情報局に直接伝わる衛星電話機です。
直接伝わるのでスイッチは1つしかありません。
スイッチを入れて、この平たい方を耳元に当ててもらえば、通話出来ます。
スイッチの部分に、生体認証を仕込んでおりますので、
晶様以外が使う事は出来ないようになっています。
全てのキャリア、全ての衛星通信網、全てのWiFiルータを、
強制的に優先使用するようになっておりますので、絶対に繋がります。」
このブザーみたいなの、電話だったんだ。スライドスイッチみたいなのがついている。
端末のあちこちに穴があり、それらが全てマイクになっているらしい。
「完全防水で、50mくらいまでなら、水に沈めても大丈夫ですし、
叩きつけても、象が踏んでも壊れない構造になっています。
特殊な電池で動いていて、5年以上は電池交換不要で何度でも使えます。
電池が切れる前に、新しい端末をお持ちしますので、充電や電池交換は考えなくて結構です。」
なんだか、よくわからないけど、とても丈夫なシロモノらしい。
「こういうのをお渡しする理由は、
晶様は「読み手」なので、他国の者から狙われる危険があるからです。
何者かに狙われた時など、助けが必要な時、躊躇なくお使いください。」
え?。私、狙われる事があるんだ。何だか怖いな…。でも、まぁ、一応、無敵らしいから、心配しなくてもいいかな…。
「音声情報も、位置情報も、全て暗号化されて伝わりますので、他の者に傍受される心配はありません。
24時間、数人の担当女性スタッフが待機しております。
おじさん連中では、話にくい事もあるでしょうから、基本的に、私が対応致しますが、
私が出られない時には、他と同じくらいの年代の女性スタッフが対応する事になっています。」
「そして、このカードは、晶様専用のクレジットカードです。
プライベートな内容に使ってもらって構いません。費用は、すべてこちらで持ちます。」
「なんか、お母さんに知られたら、どっちも取り上げされてしまいそうだけど…」
「そこも、心配ありません。今、我々の者が、お母様とお話しておりますので…」
お母さんの方を見ると、何やら、数人の黒服の大人たちから、説明を受けているみたい。
あ…、通夜だから、そもそも、みんな黒服なんだけど…ね。
いつも、凛としているお母さんが、なんだか、
とても、ビミョウな表情をして、口をパクパクさせてたのが、少し、おもしろかった。




