驚愕する大人たち
私が「グリモア」を読んでいた時、それを見ていた大人たちは、驚愕していたようで…
「アカシア…!?」
「よ、読んでいる…」
「間違いない、アカシアの後継者だ。」
「あの子は、一体、誰なんだ。」
…みたいな声が、聞こえてくる。
通夜の途中だし、皆、とても小さな声で話しているんだけど、なぜか、とてもハッキリ聞こえてしまう。
なんだか、不思議なくらいに、耳が、とてもよくなったみたい。
急に耳が良くなるなんて事はあり得ないし、きっと、この式場が、とても静かで、音が響くから…とか、そういう事なのだろう。
「アカシア」って何?。
「読んでいる」って言ってたから、この本「グリモア」の事なのかな?。
ふと、そのうちの一人と、目があった。
私と目があったおじさんが、ニッコリ笑って、私のところにやってきた。
すると、他の大人たち(テレビでしか見ないような有名な人たち)も、それに続いて、わらわらと、私のところにやってきた。
でも、おじいちゃんにでも、お父さんにでも、お母さんにでもなく、なぜ、私に…。
おじいちゃん、お父さん、お母さんとは、面識があるけど、私だけ、面識ないから?。
最初に目があった人が、まだ学生の小さな私に、ものすごく低姿勢で敬語を使って話しかけて来た。
「明石 逢花様には、大変お世話になっておりました。
私、この国の内閣総理大臣を務めさせていただいております「綾部 総一郎」と申す者でございます。
誠に恐れ入りますが、差し支えなければ、お名前をお聞かせいただけますでしょうか。」
おじいちゃんに、視線で「助けて…」と訴えてみるも、おじいちゃんは、ただ微笑むだけだった。
仕方なく、名前を告げる。
「ご丁寧にありがとうございます。明石 晶です。」
「今後何かお困りのことがございましたら、どうぞご遠慮なくお頼りくださいませ。」
そう言って、名刺を渡された。え?。総理大臣が、名刺…?。
「どのようなことでも構いませんので、微力ではございますが、少しでも晶様のお力になれましたら幸いに存じます。」
いや、なんでよ?。私のような子供に様付け?。ホント、何を言ってるの?
そして、そういう人たちが、次々と、挨拶にやってきて、皆、同じような事を言っていった。
なんだかよくわからないまま、挨拶の集団が去るっていった後、名刺が山のようになっていた。
もう、いろんな事がいっぱいありすぎて、頭がパンクしそう…
…なのだけど、なぜだろう?、不思議と、今、来たすべての人の顔と名前を、しっかり記憶出来ていた。
どんな仕事してる人か、電話番号や、メールアドレスに至るまで、名刺を見ずに言えてしまうくらいに…。
なんだろう、急に記憶力が良くなったみたい。
最後に一番若そうな人20代前半くらいの女の人が、やってきた。
170cm以上ありそうな高身長で、胸も大きく、体格もいい人だ。髪はポニーテールにしている。
「あの…、私は、あまり敬語が得意ではないので、少しくだけた話し方になってしまう事をお許しください。」
と話しはじめたので…
「私も敬語で話されるのは慣れていないので、普通に話して頂けた方が助かります。」
「ありがとうござます。では、失礼して…。私、水瀬 愛唯と申します。
私、歳は22歳と若い方ですけど、国家情報局というところに勤めていますので、あちこちに、顔が利きます。
気軽に呼び捨てにして頂いて構いません。なんでも頼ってもらえると、ありがたく思います。」
そう言って、名刺を手渡ししてきた。
さすがに、年上の人を呼び捨て?…はしないけど…。
国家情報局?、いや、そんなところに頼る事は、ないと思うんだけど…。
でも、まぁ、とりあえず、さっきから気になってた事を聞いてみた。
「あの、ひとつ、聞いてもいいですか?」
「はい、何でも、お聞きください。」
「アカシアって何ですか?」
「晶様が、手にされている、その本の事です。私共の方では、そのように読んでおります。」
私が「グリモア」って名付けた本に、ちゃんとした名前があったのか…。
「そういう名前の本だったのですね。タイトルがわからなかったので、私は「グリモア」と勝手に名付けてました。」
「そういう事でしたら、今後は私共も「グリモア」と呼ぶ事に致します。」
「早速、関係各部門に、周知徹底致します。」
「いや、何でよ?」
「お嫌ですか?」
「嫌ではないですけど、元々、ちゃんとした名前があるなら、それでいいと思うのだけど…」
「晶様の意思が重要ですので…。」
「これ、何かすごいシロモノなのですか?」
「その本「グリモア」は「本自身」が「読み手」を選ぶといわれる不思議な「本」です。
そこには「世界の全て」が記されており「本」を開く度に必要とする情報が閲覧出来ると言われております。」
「そんなスゴイ本なら、もっとちゃんとした人に使ってもらった方がいいですよね?」
私が、そう言って、この本を差し出すと
「いえ、先ほども申し上げましたように、
「グリモア」の方が「読み手」を選ぶものなので「グリモア」を譲渡する事は出来ません。」
そう言って彼女は「グリモア」に触れようとして、手がすりぬていく様を見せた。
「ほら、このように…」
なんだか、とっても、とんでもないモノを譲ってもらったみたいだ。
「私、おばあちゃんに、譲ってもらったみたいなんだけど…」
「それは「グリモア」の意思を理解された上で、先代様がそのようにお伝えしたのだと思います。」
…と、話をしながら、いつの間にか「アカシア」だったものが「グリモア」として話が進んでいく。
「何にしても「グリモア」自身が「読み手」として選ばないと手にする事も出来ませんので…。」
「そうなんだ…」




