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地味な読書少女と、世界を綴る本 ~静かに始まる小さな奇跡  作者: 秋月心文


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おばあちゃんの本

不思議な夢を見た。

なぜ不思議かというと、夢から覚めた時、なぜかわからないけど、それが夢ではないと感じてたからだ。


夢の中で、何年も会っていなかった桜井のおばあちゃんに会った。

父方のおばあちゃんで、桜井という地に家があるので、桜井のおばあちゃんと呼んでいる。

私のように、本が大好きで、おばあちゃんの家に行く度に、おばあちゃんとは、本の話で盛り上がったものだ。


そして、おばあちゃんに、

あきらは、本が本当に好きなんだね。それなら、私の本をあきらに託すよ…」

…と言われた。


夢は、そこで終わった。

なんだか、とてもリアルな夢だった。


次の朝、今日は日曜日だというのに、早朝から、家の中がバタバタしていて、目が覚めた。

まだ、朝の5時だ。

茶の間に行くと、お母さんが、慌ただしく、電話で色々な確認を取り合っていた。

「何かあったの?」


「桜井のおばあちゃんが、亡くなったのよ!。今日、お通夜だって!」


「えぇ!?」

私の一番の理解者で、大好きだったおばあちゃん。

もう会えないなんて。。。。思わず、涙がこみ上げて来る。


私は、夢の事も、気になっていたし、おばあちゃんに、ちゃんとお別れもしたかった。

「私、行きたい。おばあちゃんに、ちゃんとお別れしたい」


「そういえば、あんた、桜井のおばあちゃんの事、好きだったわね。

 でも、あたし、今、離婚してるし、別居中だから、行きにくいのよね。

 だから、あんた、私の代わりにいってくれない?」

お母さんは、兎にも角にも非常に「メンツ」というものを気にする。とても面倒な性格だ。


父方のおばあちゃんの家だし、別居中の父も来るだろう。

「いいよ。お父さんも来るだろうし、代わりは、任せておいて…」


すると、急に、お母さんの目が変わる。

「そうね、あの人も来るわよね」


失言だった…。お父さんの事を言うと、この人、食いついてくるんだった…。


「やっぱり、私も行くわ」

あぁ、すっかり、女の目になっている。

なんだかんだ言いつつも、この女は、お父さんの事が大好きなのだ。


お父さんの事が、そんなに好きなら、くだらないメンツにこだわって、離婚なんてせず、一緒にいればいいのに。。。。

全く、この女は素直じゃない。


あばあちゃんの家は、とても遠い。

物理的な距離もあるが、飛行機や、電車の接続が、あまりよくない事もあり、とにかく時間がかかる。

今から出ないと、今夜のお通夜に間に合わないだろう。

私も急いで支度をした。服は…学校の制服が黒だから、制服でいいだろう。


結局、私は、お母さんと二人で、おばあちゃんの家に向かうことになった。

まだ寝ている妹に、書置きを残し、一人家に残して。。。


妹は、お父さんの事が、とても大好きだ。

だから、本当は、連れていってあげたいのだけど、連れて行くと、妹は、間違いなくお父さんに甘える。

そして、お母さんが、それを見て、とても機嫌を悪くして、手が付けられなくなる。

お母さん抜きでなら、叩き起こしてでも、連れていってあげたかったんだけど…。

ごめんね…。


ちなみに、お母さんは、いつも忙しい人なので、ごはんの作り置きが、冷蔵庫にたくさんストックされてて、いつも、私と、妹は、それを温めて食べている。

だから、妹が食べ物に困る事はないだろう。


何時間も電車に揺られながら、おばあちゃんの家に向かっている。

おばあちゃんの家は、とても遠いので、滅多に行く事は出来なかった。


おばあちゃんが亡くなって、おじいちゃんは、大丈夫かな…。

そんな心配をしながらも、早朝から移動始めたので、少し眠たくなってきた。

電車の揺れで、更に眠気を誘う。

その中で、おばあちゃんとの想い出を、ひとつ、ひとつ思い出していた。

おばあちゃんは、とにかく本が好きな人だった。

親戚の中で、唯一、本好きの私と話が合う人だったので、とても好きだった。


長い電車での移動を終え、桜井駅からは、タクシーで、おばあちゃんの家(お父さんの実家)に向かう。


おばあちゃんの家が見えてきたが、家の前には、なんだか、とても偉い人たちが乗るような、黒塗りの高級車がたくさん止まっていた。

全部で20台くらいだろうか、それだけの車を、家の前に止めるスペースがある桜井の家もすごいけれど…。


家に入ると、その車で来たのだろうか「テレビで見た事がある人」がいっぱいいた。

あの人、確か政治家だっけ。何かの大臣をしていた気がする。

あの人は、ノーベル賞とかいうのをもらった研究者の方だっけ…。

え、総理大臣まで…!?。

外国の方もいる。あの人も、どっかで見た事があるような…。

なんだか、すごい人のオンパレードになっていた。


おばあちゃん、こんなに多くの人たちと交流があったんだね。


私は、敬語や、礼儀作法が、苦手だ。

…というか、私は「コミ障」なので、礼儀以前に、話す事が苦手だ。

すごすぎる人たちばかりで、失礼な対応をしてしまわないか心配になってしまう。


一方で、ツンデレな性格のお母さんは、実家でお父さんに会うなり、捕まえて、人気のいない場所に連れ込んで「今日は、仕方なく仲のいい夫婦を演じるから合わせなさい」ともちかける。


でも、目は、すっかり「女の目」になっていて、とても嬉しそうだ。

何が、仕方なく…なんだか?。

心の底からラブラブな関係でいたいくせに、何か言い訳をしないと、それができない。

全く、この女は素直じゃない。


通夜が始まるまでの間、本を読んでいたら…おじいちゃんが…

「おまえは本当に本が好きだな…」

「ばあさんもおまえみたいに本が好きな子じゃった」

おばあちゃんの記憶が蘇り泣きそうになった。


おじいちゃんに、夢で見た話をしてみた。

「気に入った本があったら持っていくといい」

と言われ、おばあちゃんの書斎に案内された。


おばあちゃんの書斎には、

知らないタイトルの本がびっしりと並んでいた。


どれも読んでみたい本ではあったけれど、夢での事が気になっていたので、

「おばあちゃんが一番好きだった本はどれ?」

と聞いてみた。


おじいちゃんは、

「ばあさんはこの本が好きだった」

「何度も何度もこの本を読んでいた」

「本好きのおまえが読んでくれたら、きっとばあさんも喜ぶ」

「ありがとう、読んでみる、大事にするね」

私は、その本を手に取った。


その本は、とても不思議な本だった。


派手ではないが美しいレリーフが刻まれた立派な装丁。やや厚手の表装。

本のタイトルと思わしきところには、凹凸だけで刻まれた読めない記号のようなものが刻まれている、

そして、厚手で大きいのに、羽根のように軽い。

手触りが良い不思議な紙で作られていて、スムーズにページをめくる事が出来る。


読んでみて、また、驚かされた。

文章というものは、こんなに深く表現出来るものだったのか…。


文字だけで書かれているのに、まるで、その場にいると感じるほどにリアルな描写。

直観的に細部まで映像が浮かび、その場の音、香り、温度感、触感などが伝わってくる。

それでいて、簡潔で短い言葉だけで的確に表現されており、読んでいて全く疲れない。


文字による表現は、ここまで雄弁なのかと感動すら覚えた。

今までに見たどんな映画よりもリアルだった。

今までに体験したどんな現実よりもリアルに感じた。


それだけの情報を表現しながらも、文章は長すぎず、簡潔に抑えられ、大変読みやすく、

私は、すぐに、本の中の世界に没頭してしまった。

「すごい…」思わず声に出た。


私は、この名前の知らない不思議な本を「グリモア」と名付ける事にした。

「グリモア」を読むのに夢中になっていたら、ふと視線を感じて、辺りを見渡した。


すると、あの、すごそうな大人たちから、好奇な目が注がれていた。

いつものように表情がダダ漏れだったからかな?。

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