表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味な読書少女と、世界を綴る本 ~静かに始まる小さな奇跡  作者: 秋月心文


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/9

明石晶は本に愛されている

私、明石あかし あきらは、本が大好きだ。

本は私の知らなかった世界を教えてくれる。

本は私では想像も出来なかった発想を提示して、私の心を豊かにしてくれる。

本を読むだけで、様々な世界を体験してきたような気持ちになれる。


私は普段、あまり表情が顔に出ないと言われるけど、

本を読むときだけは、心の底からのめり込んでいるらしく、

表情がころころ変わり、とても楽しそうに本を読んでいるらしい。


それは、ある種の才能だと、おばあちゃんも言っていた。

あきらが本を読んでいる時の顔を見ていると、こっちまで楽しくて幸せな気持ちになってくる。

…なんて、赤面しそうな言葉をしれっと放ってきた。


人が心底楽しんでいる様を見ると、それを見ている人にも、その気持ちが伝播すると言うけれど…。


思い出してみると、私が本を読んでいると「何ていう本ですか?」と話しかけてくる人が多い気がする。


それを知ってか、本屋で働いている友達(もしくは本屋のおじさん)は、時々、バイトと称して、私に立ち読みをさせる。

売れ残っている本があるので、その本が売れるように、その本の良さをPOPにしてくれと言うのだ…。


読んでみると、少しクセのある文体だったが、いつものように、読んでいるうちに本の世界に引き込まれていった。

しばらく、本の世界に没頭し、読み終えてから、ハッとした。

そうだった、この本の良さをPOPに書き出さないといけなんだった。


すると、本屋のおじさんは、私の肩を叩き、こう言った。

「ご苦労さん、おかげで、この本は完売だ」

「え?、でも、私、これからPOPを…」


ふと見ると、山のように積まれていたはずの本は全て売り切れて、ポッカリと何もない空間が広がっていた。

「え?、え?、えぇ?」


私が立ち読みしている間に、本は全て売り切れて、POPの必要がなくなっていたのだ。


そういえば、本屋で立ち読みしていると、立ち読みしていた本が、いつの間にか売り切れてた事もあった気がする。


「君は本に愛されているんだな」

「いいえ、私が、本を愛しているの」

「うらやましいな。相思相愛じゃないか。」

そう言われて、私は何だか、とっても嬉しくなった。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


あきらは、高校1年ながら、身長146cmと小柄な女の子だが、実のところ、かなり可愛らしい見た目だ。

つい、足を止めてみてしまうほどに…。

そんな子が、とても面白そうに、あまりにもコロコロと表情を変え、とても感動しながら読んでいる。


周りで見てる者たちにとって、その本は、どんなに面白い本なのだろうと、興味をそそられずにはいられない。


だから、誰もが、その本を、手にしてしまう。

こうして、本がとぶように売れていくのだが、あきらは、その事に気づいていない。


結果、その本が、その人にとって面白くなかったとしても、

その本を読んでいた時の晶の表情を思い出す事が出来るアイテムとして、価値のあるものになっている事も、あきらは気づいていない。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


私の家は、母子家庭だ。

お父さんは、存命だけど、リストラされた事で、お母さんが離婚を申し出たので、別居中だ。


お母さんは、結構大きな会社に勤めている上に、そこで管理職についているから、かなり給料高いらしい。

無職のお父さんを含めて養う事も出来るハズだけど、お母さんは、とてもプライドが高く、過剰なまでにメンツを気にする。

元々、お父さんが、自分より収入が低いのを、それをずっと気にして、毎日のように愚痴をぶつけてきた。

だから、お父さんが、無収入になって、なかなか次の仕事も決まらない状態になっていた為、お母さんが別れ話を切り出した。


お父さんの事が好きで結婚したんじゃないの?って思ってしまうが、お母さんにとっては、メンツの方が大事らしい。


私も、妹も、どちらかというと、お母さんより、お父さんの方が好きなので、お父さんについていく事も出来たハズだけど、「収入もない人に、娘たちは預けられません」と強く主張する、強引なお母さんに引っ張られて来てしまった。



お母さんは、とても心配性で、学校を終えて友達と遊んでいると、すぐに帰って来いと呼び戻される。

家にいて、何かする訳でもないのに…。


持たされているケータイも、位置情報が常にお母さんのところに送られていて、

その設定は、私では解除出来ないようになっている。

お母さんは、その情報を逐一チェックしていて、学校以外のところにいると、呼び戻そうとするのだ。


おかげで、親しく遊ぶトモダチもいなくなった。

付き合い悪いから、当然だよね。


ただ、立ち読みバイトの書店や、図書館にいる時だけは、呼び出しがない。

…というより、実際は呼びつけているらしいのだけど、本に没頭しているから、気が付かないので諦めたみたい。

だから、いつも学校を終えたら、図書館か、おじさんの書店に通うようになった。


結局、本だけが、私のトモダチ…。


でも、本はいい。


色んな世界を見せてくれる。


色んな経験をさせてくれる。


本さえあれば、私は幸せだ。


私には、夢も、なりたいものもない。

私は、本以外は何もいらない。本だけを読んでいたい!。


いつも、強く…深く…そう願っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ