プロローグ
ここは、今の日本と違う歴史を送った世界。
世界地図も、この世界と一緒だが、織田信長が、本能寺で討たれる事なく、天下を統一し、海外へ進出した結果、オーストラリア大陸をイギリスよりも先に発見するなど、完全に違う歴史を歩んでいた。
そんな世界で、日本は「瑞穂」と呼ばれていた。これは、そんな世界でのお話。
この世界には、不思議な「本」が存在していた。
それは「この世界」そのものが「本」という姿で顕現したもので、
人類の叡智などというレベルではない、この「世界の全て」が記されているという伝説の本。
その「本」は「この世界」の意思により、唯一無二の「読み手」を選び、その人以外は、触れる事すら出来ない(触れられずにすり抜ける)と言われている。
どうして、こういうものが存在しているのか、人類では説明不可能と言われている「本」。
この国「瑞穂」では、その不思議な「本」は「アカシア」と呼ばれていた。
過去に、アトランティス大陸にあった大国が、読み手のいる国に戦争を仕掛けたせいで「読み手」の怒りを買い、その国は、アトランティス大陸ごと、消えてなくなったという伝説がある。
ムー大陸の消失にも係わっているらしい。
それ故に世界のパワーバランスはもちろん、この世界自体を作り変える事も可能だろうと言われる。
「読み手」が、この「アカシア」を手にした瞬間から「読み手」と一体化し、「読み手」は、この世の理に縛られない存在になる為、如何なる攻撃も通用しない、無敵な存在になると言われている。
けれど「読み手」が生物である事までは、やめていないので、「アカシア」本体とは違い「読み手」は、他の人が触れても、すり抜ける事はないし、寿命を迎えると「読み手」は亡くなる。
「読み手」が亡くなると「アカシア」は消えてなくなり、次に、その資格を持つ者が現れると、再び、この世界に現出すると言われている。
「アカシア」について、どういうものなのかを記述しようとすると、それが、どのような媒体であっても、不思議な事に、記述した事自体がなかった事になり、すべての痕跡が消えてしまうという…。
故に、一部の国の重鎮などに、口伝のみでしか伝えられて来ただけで、詳しい事はあまり、知られていない。
私が、今、ここで記述している「この小説」も、もしかしたら、いつの間にか消えてしまうかも!?。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「アカシア」は、今、この国「瑞穂」にあったが、その「読み手:明石 逢花」は、高齢であり、老衰の為、たった今、息を引き取った。
先の大戦でも、他国は「読み手」からの報復を恐れ「瑞穂」の本土が攻撃を受ける事がなかった。それだけでなく、彼女は、この国に大きな貢献をしてくれていた。
これまで、とてもお世話になっていた国の重鎮たちは「読み手:明石 逢花」に、感謝の気持ちと、お別れを言う為、彼女の家に集まっていた。
それと同時に「読み手」亡き後の、今後について話し会う意味でも、集まる必要があった。
「読み手」亡き後、他国は、我が国に対し、これまでとは一変して、強気な外交をしてくるのではないか…と、懸念されていたからだ。
彼女が息を引き取っても「アカシア」は、彼女の書斎の本棚にあった。
消えるまでに、時間がかかるものなのかもしれない。
「アカシア」については、口伝のみの伝承に限られるので、詳しい事があまり、知られていない。
国の重鎮の一人が「アカシア」を、本棚から出そうと試みたが、やはり触れる事は出来なかった。
通夜には小柄な女子高生が来ていた。
どことなく「読み手:明石 逢花」の若かりし頃に、似ている気がした。
血縁者だろうか…。その時は、誰しも、彼女の事を、さほど気にしなかった。
「読み手:明石 逢花」の若い時から、交流のあった者は、その子を見て、当時の事を思い出し、なつかしさを感じていた。
しかし・・・
その子は、通夜の式場に、大きな本を持ち込み、とても楽しそうにその本を読んでいた。
それは、それは、とても面白そうに読んでいた。
表情をコロコロと変えながら、本を心の底から楽しんでいたようだった。
その表情に、見入ってしまうほど、引き込まれるものを感じていた。
叶う事なら自分たちも、その本を読んでみたいと思わせるほどに…。
だが、それは叶わなかった。よく見ると、その「本」は「アカシア」だった。
「読み手」以外、絶対に触れられないハズの「アカシア」を読んでいたのだ。
国の重鎮たちは、とても驚愕した。
「アカシア…!?」
「よ、読んでいる…」
「間違いない、アカシアの後継者だ。」
「あの子は、一体、誰なんだ。」
「確認してきます。」
今後も、この国が安泰であるだろうという安堵と共に、これからは、彼女の気持ち一つで、世界が変わってしまう事に、畏怖を感じずにはいられなかった。
「彼女は、明石 晶様。逢花様のお孫さんで、県立葛城高校に通う高校一年生だそうです。」
新たにとんでもない力を持ってしまった女子高生「明石 晶」が、ゆる~いレベルで、その力を使いつつ、世の中を変えていく、そんな物語が、ここから始まる。




