本を読んでいただけで優勝した
◇ ◇ 学園祭が近づいていた ◇ ◇
学園祭では、歴史研究会が「ロシア帝国」という架空国家について展示するらしい。
「昔の架空戦記によく出てくる国なんだって」
「設定が細かすぎて笑えるよね」
クラスのみんなは笑っていた。
そんな国、あるはずないのに……。
なぜか私は、その話が少しだけ現実味を帯びて聞こえた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
クラスの出し物では、喫茶店をやる事になった。
明石さん、なんでも、出来そうだしと料理担当を任されるも、
晶は、料理が壊滅的に下手くそだった。
切ったり、混ぜたりするのは、問題ないが、火加減、味加減が、おかしかった。
生焼けだったかと思えば、黒焦げ。
だけど、砂糖の代わりに、塩を入れてしまった、パンケーキが、なぜか大うけだった。
でも、晶には、2度と、同じものが作れなかった。
あまりに好評だったため、クラスの子たちが再現に挑戦した。
最終的に「塩パンケーキ」という不思議な名物が誕生した。
なんだかなぁ……。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
グリモアに頼れば、何とかなったのかもしれない。
だけど、料理くらいは出来る女の子でありたいと思い、意地をはっていた。
だから、何度もグリモアが提示してきた、料理の話は、読んでなかった。
でも、あんまり、失敗しすぎて、さすがに凹んで来た。
晶は、当日前夜になってから、グリモアの料理の話をいっぱい読んだ。
◇ ◇ ◇ 学園祭 当日 ◇ ◇ ◇
当日、料理するつもりでいたが、
これまでの結果が酷すぎたので、接客を担当する事になった……。
結局、グリモアで得た知識を、披露する機会はなかった。
でも、ここで、新たな問題に直面しました。
晶は、極度なコミ障だったのです。
人見知りが、はげしく、うまく話せません。
「えーと、あの…」
「い、いら……いら……」
みたいな感じで、挨拶すら出来ず、接客にならない。
見かねたクラスの子が、フォローに入ってくれた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「接客無理だから、そこ座ってて」
「う、うん……」
教室の前には、入口と張り紙をした机が置いてあった。
晶は、そこで、本を読みはじめた。
それだけだった。
だが気付くと、
「あの子かわいくない?」
「とても楽しそう」
「なんか、すごい気になる」
……という声が聞こえ始めた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
クラスの子に、体を揺すられて、呼び止められた。
「ちょっと、明石さん、これ何?」
本を読むのをやめて、周囲を見ると……
教室前からの長い列が、廊下の端まで伸びていた。
隣のクラスの呼び込みしてた子が、迷惑そうに、こっちを見ていた。
「何? これ?」
「いや、あたしが聞いてるんだけど……」
「何もしてないよ?」
こうして、うちのクラスは、学園祭最優秀賞をもらう事になった。
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