ロシア消滅
◇ ◇ 国家情報局 ◇ ◇
「なかなか強情ですね。ロシア……」
「グリモアの力、知ってると思うんだけどな……」
瑞穂(この世界の日本)政府には、
ロシアから、一方的な要求が来ていた。
==アカシックレコードを渡せ==
もちろん、飲むつもりはない。
全てに於いて、外交カードになりうる存在を、渡す訳がない。
そして、渡す必要も、感じない。
グリモアを凌駕する力は、その世界に存在しないからだ。
こんな不毛な外交交渉が、
一か月以上続いていた。
そして結局、
交渉は決裂した。
◇ ◇ ロシア 某所 ◇ ◇
ロシア連邦保安庁に、
ロシアが世界に誇る暗殺部隊があった。
そこで、大統領からの命令が、開封されたのだが……
・県立葛城高校 普通科1B 明石晶の殺害。
・彼女の持っている、不思議な本の回収。
※本の詳細は不明だが、如何なる攻撃にも耐える
全く、理解出来ない。
こんな、子供のおつかいのような仕事を?
しかし「※本の詳細は不明」という一文が、
不気味さをただよわせていた。
作戦を立案した……
以下のAで失敗したらBを……という4段構えの作戦だ。
作戦A:アルファ:消音狙撃銃による狙撃
作戦B:ブラボー:短機関銃による包囲攻撃
作戦C:チャーリー:擲弾発射器による強襲
作戦D:デルタ:超小型核爆弾設置、誘導、爆破
いずれも、女子高生1人を殺すには、オーバーキルすぎる。
少なくとも作戦Aの段階で、無力化出来ると考えていた。
だから、作戦B以降を担当する隊員たちは、少し、残念そうだった。
我が国は、無敵でなければならない。
故に失敗は許されない。
◇ ◇ 作戦 当日 ◇ ◇
晶は、今日、ロシアの工作員に狙われる事を知っていた。
だが、まわりを巻き込みたくないので、単独で行動していた。
国家情報局の水瀬さんや、圭佑には、別なお願いをしていた。
「まわりに、巻き込まれそうな人がいたら、別な場所に誘導して……」
そして、晶は、人気のない公園を、選んで下校した。
◇ ◇ 暗殺部隊 ◇ ◇
==こちらアルファ1、ターゲット確認!==
通信が、状況を知らせ始めた。
いよいよ、子供の使いのような作戦が始まった。
公園の付近には、3階建ての古い空き家があった。
狙撃部隊は、そこに身を潜めた。
スコープで狙いを定める。
頭を狙う。
その時、爆音なのに低速で走る車が間を通り過ぎた。
チャンスだ。引き金を引く。
しかし……ターゲットには、損害が見られない。
1発。
2発。
3発。
しかし――
ターゲットには何の変化もなかった。
スコープの中で確認したが、原因はわからなかった。
==アルファ1より各位へ、作戦失敗、作戦2の開始を求む==
==ブラボー1、了解!==
作戦2を行うチームは、木陰で身を隠していた。
==ブラボー1、ターゲット確認!==
至近距離まで近づいたので、
ブラボーチームは、一斉に、彼女の前に、飛び出した。
短機関銃で、一斉に斉射開始。
連射音が、周囲にこだまする。
だが……
弾丸が消えていく。
「え?」
そして、そのまま、近づいて来る。
「うわぁぁぁ……」
百戦錬磨の隊員たちが「意味がわからない」現象に恐怖した。
そして、作戦2の続行を断念した。
==ブラボー1より各位へ、作戦失敗、作戦3の開始を求む==
==チャーリー1、了解!==
チャーリーチームは、弾道を予想し、彼女に、照準を定めた。
今度こそ終わりだ。。
攻撃を開始した……。
だが……
弾丸が消えていく。
まさか、作戦3でも、ダメだとは……。
==チャーリー1より各位へ、作戦失敗、作戦4の開始を求む==
==デルタ1、了解!==
デルタチームを担当するのは、工兵たちだ。
彼女の進路上に、超小型の核爆弾を設置。
観測用のドローンを残し、一斉に退避した。
==デルタ1、設置完了、各員、至急、撤退せよ==
今回も、攻撃が消えていくだけで、終わるハズだった。
しかし、予定外の事故が、起こってしまった。
「お姉ちゃん!」
めぐみが、この場に来てしまった。
圭佑が、しきりに誘導しようとするが、言う事を聞かない。
==デルタ1、起爆開始==
そこに、核爆弾が、爆発した。
強烈な閃光の後、周囲を溶かすほどの熱、強烈な爆風……。
言葉で示すには、強力する事象が発生し、
あたりが、焼け野原になった。
==デルタ1、起爆成功==
晶は、めぐみが巻き込まれた事に、怒りを覚えていた。
「許さない……」
晶が、そう言った瞬間、ふと「世界」が、
まるっと変わってしまうような感覚を覚えた。
そして……
――焼け野原が、元の状態に戻った――
状況を察した、圭介が、晶をひじで小突いた。
「やりすぎだ……」
「ごめん……」
金髪の人と、晶が、そんな会話をしていた。
「めぐみが、攻撃されたのを見たら、我慢出来なくて……」
「まったく、妹に甘いヤツだ……」
そういって金髪の人が、晶を抱きしめる。
今度は、振り切られる事なく、腕の中で、静かにしていた。
めぐみは、その様子を見て、ひとりニヤニヤとしていた。
その時は、誰も気付かなかった。
晶が怒った代償が、どれほど大きかったのかを――
その瞬間、この世界から、ロシアという国が消えていた事に……。
国土が消えた訳ではない。
国民が消えた訳ではない。
ただ、国が……消えたのだ…。
だけど、その異変に気付いた者は、まだ誰もいなかった。
ロシアという国が、最初から存在しなかった事になっている事を――
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