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地味な読書少女と、世界を綴る本 ~静かに始まる小さな奇跡  作者: 秋月心文


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16/20

ロシア消滅

 ◇ ◇ 国家情報局 ◇ ◇


「なかなか強情ですね。ロシア……」


「グリモアの力、知ってると思うんだけどな……」


 瑞穂(この世界の日本)政府には、

 ロシアから、一方的な要求が来ていた。



 ==アカシックレコードを渡せ==



 もちろん、飲むつもりはない。

 全てに於いて、外交カードになりうる存在を、渡す訳がない。


 そして、渡す必要も、感じない。

 グリモアを凌駕する力は、その世界に存在しないからだ。


 こんな不毛な外交交渉が、

 一か月以上続いていた。


 そして結局、

 交渉は決裂した。



 ◇ ◇ ロシア 某所 ◇ ◇


 ロシア連邦保安庁に、

 ロシアが世界に誇る暗殺部隊があった。


 そこで、大統領からの命令が、開封されたのだが……



 ・県立葛城高校 普通科1B 明石晶の殺害。


 ・彼女の持っている、不思議な本の回収。


  ※本の詳細は不明だが、如何なる攻撃にも耐える


 全く、理解出来ない。


 こんな、子供のおつかいのような仕事を?


 しかし「※本の詳細は不明」という一文が、

 不気味さをただよわせていた。



 作戦を立案した……

 以下のAで失敗したらBを……という4段構えの作戦だ。


 作戦A:アルファ:消音狙撃銃による狙撃


 作戦B:ブラボー:短機関銃による包囲攻撃


 作戦C:チャーリー:擲弾発射器による強襲


 作戦D:デルタ:超小型核爆弾設置、誘導、爆破

 

 いずれも、女子高生1人を殺すには、オーバーキルすぎる。

 少なくとも作戦Aの段階で、無力化出来ると考えていた。


 だから、作戦B以降を担当する隊員たちは、少し、残念そうだった。


 我が国は、無敵でなければならない。


 故に失敗は許されない。



 ◇ ◇ 作戦 当日 ◇ ◇


 晶は、今日、ロシアの工作員に狙われる事を知っていた。

 だが、まわりを巻き込みたくないので、単独で行動していた。



 国家情報局の水瀬さんや、圭佑には、別なお願いをしていた。

「まわりに、巻き込まれそうな人がいたら、別な場所に誘導して……」



 そして、晶は、人気のない公園を、選んで下校した。


 

 ◇ ◇ 暗殺部隊 ◇ ◇


==こちらアルファ1、ターゲット確認!==


 通信が、状況を知らせ始めた。

 

 いよいよ、子供の使いのような作戦が始まった。


 公園の付近には、3階建ての古い空き家があった。

 狙撃部隊は、そこに身を潜めた。


 スコープで狙いを定める。

 頭を狙う。


 その時、爆音なのに低速で走る車が間を通り過ぎた。


 チャンスだ。引き金を引く。


 しかし……ターゲットには、損害が見られない。


 1発。


 2発。


 3発。


 しかし――

 ターゲットには何の変化もなかった。


 スコープの中で確認したが、原因はわからなかった。


==アルファ1より各位へ、作戦失敗、作戦2の開始を求む==


==ブラボー1、了解!==


 作戦2を行うチームは、木陰で身を隠していた。


==ブラボー1、ターゲット確認!==


 至近距離まで近づいたので、

 ブラボーチームは、一斉に、彼女の前に、飛び出した。


 短機関銃で、一斉に斉射開始。

 連射音が、周囲にこだまする。


 だが……

 弾丸が消えていく。


「え?」


 そして、そのまま、近づいて来る。


「うわぁぁぁ……」


 百戦錬磨の隊員たちが「意味がわからない」現象に恐怖した。

 そして、作戦2の続行を断念した。


==ブラボー1より各位へ、作戦失敗、作戦3の開始を求む==


==チャーリー1、了解!==


 チャーリーチームは、弾道を予想し、彼女に、照準を定めた。


 今度こそ終わりだ。。


 攻撃を開始した……。


 だが……

 弾丸が消えていく。


 まさか、作戦3でも、ダメだとは……。


==チャーリー1より各位へ、作戦失敗、作戦4の開始を求む==


==デルタ1、了解!==


 デルタチームを担当するのは、工兵たちだ。


 彼女の進路上に、超小型の核爆弾を設置。

 観測用のドローンを残し、一斉に退避した。


==デルタ1、設置完了、各員、至急、撤退せよ==


 今回も、攻撃が消えていくだけで、終わるハズだった。



 しかし、予定外の事故が、起こってしまった。


「お姉ちゃん!」


 めぐみが、この場に来てしまった。

 圭佑が、しきりに誘導しようとするが、言う事を聞かない。


==デルタ1、起爆開始==


 そこに、核爆弾が、爆発した。

 

 強烈な閃光の後、周囲を溶かすほどの熱、強烈な爆風……。

 言葉で示すには、強力する事象が発生し、

 あたりが、焼け野原になった。


==デルタ1、起爆成功==


 晶は、めぐみが巻き込まれた事に、怒りを覚えていた。


「許さない……」


 晶が、そう言った瞬間、ふと「世界」が、

 まるっと変わってしまうような感覚を覚えた。


 そして……


――焼け野原が、元の状態に戻った――



 状況を察した、圭介が、晶をひじで小突いた。

「やりすぎだ……」


「ごめん……」

 金髪の人と、晶が、そんな会話をしていた。


「めぐみが、攻撃されたのを見たら、我慢出来なくて……」


「まったく、妹に甘いヤツだ……」

 そういって金髪の人が、晶を抱きしめる。

 今度は、振り切られる事なく、腕の中で、静かにしていた。


 めぐみは、その様子を見て、ひとりニヤニヤとしていた。


 その時は、誰も気付かなかった。


 晶が怒った代償が、どれほど大きかったのかを――


 その瞬間、この世界から、ロシアという国が消えていた事に……。


 国土が消えた訳ではない。

 国民が消えた訳ではない。

 ただ、国が……消えたのだ…。


 だけど、その異変に気付いた者は、まだ誰もいなかった。


 ロシアという国が、最初から存在しなかった事になっている事を――

 お読みいただき、ありがとうございます!


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