私を襲いに来た敵が仲間になった
白人が世界の中心である世界を、取り戻そうとする結社があった。
だが皮肉なことに、そこで活動しているのは白人だけではなかった。
彼らが求めるアーティファクトも、その解読者も、白人以外の人間に依存していたからだ。
結果だけが重要で、過程を重要としてない人にとっては、それで良いのかもしれないが…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その結社で、ルイス・ホークスという名前で活動している男がいた。
本名は、鷹村 圭佑 (たかむら けいすけ)だが……
この結社の中では、白人と同じ様な名前以外を、使う事が許されていない。
母が瑞穂(この世界における日本)系の二世で、風貌は金髪、青眼、白い肌。
普段から、サングラスを常用している。
彼には不治の病を患った妹がいた。
その治療法を求めて結社に加わった。
そういうのが治療出来る「アーティファクト」があるかもしれないと…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今回のミッションは、瑞穂の女子高校生が持っている「特殊な本」を強奪する事。
なんて、カンタンな依頼だ……と思った。
彼女が、本を置いて、席を離れた時に、
それに触れようとしたが、なぜか触れる事すら出来なかった。
手で、モノを介して……、いずれも、すり抜けてしまう。
結局、1週間以上、失敗が続いている。
依頼の期限は「明日」だ。
そこで、正攻法?に出る事にした。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「明石晶だな。その本を渡してもらおうか」
ルイスは、晶の首元にナイフを突きつける。
しかし、彼女は、何も動じる事なく、堂々としている。
俺が、人をケガさせたり、
殺めたりする事が出来ない人間だと、
「あらかじめ知ってた」かのように…。
「出来ないわ。だって、この本、私以外、触れる事すら出来ないんだもの」
「あぁ、それは知っている」
「なるほど、ここ数日、私のノートが無くなったりしてたのは、あなたの仕業だったのね」
「あぁ、そうだ」
「この本は、よくわからない何かで、私と一体化してるらしいの。
だから、この本を手に入れたいのなら、私ごと攫うしかないわ。
でも、それでは、あなたの願いは叶わない」
「何?…」
「だって、あなたの所属してる結社は、
集めた『アーティファクト』を使うつもりがないのだから。
ましてや純血の白人以外に、使うつもりなんて欠片もない」
「何を知っている…?」
「白人以外をこの世から消し去る行動に出る時まで、
集めた『アーティファクト』を温存するつもりなの」
「………」
「ねぇ、私と取り引きをしない?
私は、この本の力で、あなたの妹さんを治せるかもしれない。
その代わり、影ながら、出来る範囲で、私を守って…。
最近、なんか、よくわからない人たちから、攻撃されたりして困ってるんだ。
更に、必要なら、あなたと結社の関係を、完全に断ち切る事も出来るけど…。」
「おまえ、どこまで知って…」
「とりあえず、試しに、
私を妹さんのところに連れてって……
返事は、そのあとでいいよ」
「いいだろう。付いて来てくれ」
……と、ここまで堂々としたやり取りを「演じていた」晶だったが……。
本当は心臓がバクバクだった。
ナイフも怖かったけど……、
何よりルイスは、晶にとって、見た目が、どストライクだった。
密着されたまま平然としている演技を続けるのは、かなり大変だった。
ちょっと変な子って、思われたかな?。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ルイスによって、連れて来られたのは、セキュリティが優れた事で有名な「新築のタワーマンション」だった。
凄いところに住んでるな……と思いながら、部屋に入ると、とても衰弱しきって青い顔をした女の子が、ベットに横たわっていた。
晶は、彼女に向かって「グリモア」をかざした。
グリモアは、すぐに原因を示した。
「あなたが原因じゃない!」
「え?」
「あなたが、発掘された『アーティファクト』に触れた時に、
古代の何か特殊な病原菌を拾って、妹さんに感染させたみたい」
「俺、何ともないぞ…」
「どんな病でも、感染してもピンピンしてる人っているでしょ。そういうものかも?」
晶は「グリモア」を通じて、
彼女から、病原菌を無くす事を祈る。
すると、彼女の体と、
その周辺が光りはじめ、
彼女の顔色は、急速に改善した。
「彼女の体内と周辺から菌を消し去ったけど、
これまでの病気で、衰弱してるから、
しばらくはクスリを飲んでもらう事になるかな……」
そして、空中で、何もない空間に、クスリを調合。
それを、胸に入れていた、使ってないハンカチで包んで、ルイスに渡した。
「1回5g。毎食後に…。
念の為、1か月分作ったよ。
計量は、申し訳ないけど、自分でやって……」
「あ、あぁ…あ、ありがとう」
ルイスは涙目になっている。
ルイスは、目の前で起こる不思議な出来事の連続で、
理解がついていかず、頭がまわらない状態だ。
けれど、妹の容態が、あきらかに良くなったのは確かだ…。
彼女の力は、本物だ…。
ルイスは、この時より、晶に仕える事を決めた。
「これからは、あなたに仕えていきたいと思う。
あなたを守り、サポートしてく事を誓う」
「ありがとう……。
結社の方は、私の方で、除名しちゃって構わない?」
「出来るのか?」
「もちろん!」
晶はグリモアの力を使った。
「ルイスに関する情報と記憶を消したわ。
これより、
結社には、ルイスという人はいなかったし、
会っても初対面の人としか思わない」
「それで、これから…あなたの事は、何と呼べば……?」
「結社で使っていた『ルイス』はコードネームなので、
それは、ちょっと避けたいかな。
本名が『鷹村圭佑』だから
『圭佑』と呼び捨てで構わない」
いきなり、名前呼び!?
「わかったわ。け…けい…すけ……」
名前を呼ぶだけなのに、妙に恥ずかしかった。
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