最強の魔法使いが心を折られた
カトリーヌ・ブラウンは、
子供の頃から、魔法では何をやっても1番だ。
「英国魔法協会」の中で、常に記録を塗り替えてきた。
周囲は常に彼女に期待した。
新たな記録を。
新たな伝説を。
だが、彼女自身は感じていた。
もう、自分の成長は限界に近いと。
そんな時「アカシックレコード」という、伝説の本の存在を耳にする。
その本は「読み手」が必要とする限り
「この世の中の究極の真理」でさえ知る事が出来るという。
その本さえ手に入れば、私はさらに高みへ行ける。
私が「読み手」になれさえすれば……。
つまり、私が、その本を「奪う」事が出来れば…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カトリーヌは、
当代の「読み手」明石晶の通う、県立葛城高校 普通科1Bに、
転校生:野木香織として潜入した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
彼女はアニメで、日本語を覚えた。
しかも、悪役令嬢ものだった。
その結果「わたくしは~ですわ」が、普通の日本語だと思い込んでいた。
結果、周囲は「中二病全開のこじらせ女子」と評価していた。
けれど、いつも「孤高」を気取っている彼女が、それを知る事はなかった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
一方、ターゲットの明石晶も、いつも本としか付き合いがないような女の子。
クラスの子と話をしてるのを見る事がない。
そんな感じで、同じクラスだというのに、
ターゲットには、近づく事が出来ないでいた。
明石晶は、いつも「何か」を読んでいる。
本だったり、ノートだったり。
時には笑い、時には泣き、まるで別世界に生きているようだった。
「英国魔法協会」に問い合わせたところ
「アカシックレコード」は
「読み手」の求める姿に変わる能力を持っているという。
明石晶が読んでいるものが「アカシックレコード」に違いない。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
カトリーヌは、強硬手段に出た。
明石晶が、トイレに立ったスキに、
彼女がさっきまで、読んでいた本を盗んだ。
あっさりと盗む事が出来た。
そして、それを読んだ。もう1度、読んだ。
……泣ける話だった。
話の中で、主人公が「伝説の古代魔法」使ってるけども……。
どう考えても普通のラノベだった。
しかも、この学校の図書室から、借りてる本だった。
図書室に返却したら、また借りしちゃダメと怒られた。
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カトリーヌは、さらに大胆な手段を選んだ。
明石晶の下校中に、催眠魔法で眠らせて奪う作戦だ。
完璧ですわ。
この国の人間は、魔法というものを、知りませんもの。
絶対に防げませんわ。
カトリーヌが現在持ちうる全ての技術を用いて魔法を放った。
魔法は、
並列の段数が多いほど、多方向から同時に魔法が撃てる。
多重の段数が多いほど、より高密度で強力な魔法が撃てる。
多重3段は、カトリーヌが思いつく限り、
この3次元世界では、これ以上はないという究極の段数だった。
並列5段、多重3段の魔法を、15分かけて詠唱し、彼女に向けて放った。
本を読みながら、顔をコロコロ変える明石晶の前に、
並列5段(たぶんこちらに合わせた)+多重50段以上の強烈な魔法陣が、
詠唱の素振りなく、一瞬で登場し、
カトリーヌの魔法をいともたやすくはじき返した。
「えっ?」
見た事もない濃密な魔法陣だった。これを詠唱もなく、一瞬で‥?。
「次元が違いすぎますわ。」
そう思いながら、跳ね返ってきた自分の魔法で眠ってしまった。
けれど(心は)目が覚めた。
自分は限界だと思っていた。
だが違った。
世界は、まだまだ広かった。
「魔方陣ってあんなに多重化出来るんですのね…。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
心は目が覚めたけど、体は眠っていた。
体が目を覚ました時、もう夜になっていた。
ハッ…クシュン。少し夜風に当たりすぎたようだ。
でも、名実共に、頭が冷えた。冷静になれた気がする。
夢か現実か、あの時に見た「多重50段」の美しい魔方陣が……
良くも悪くも、記憶にハッキリと焼き付いている。
あれをもう1度、目にしたい。自分の力で、あれを実現したい。
あれに少しでも近づきたい。
もっと精進しなくては…。
カトリーヌは英国に帰っていった。
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