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《完結》女同士の狂騒曲、大魔王との狂詩曲  作者: ひより那
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第47話 学園祭

 『黄昏の塔(トワイライト・タワー)』での任務から数週間『アベレージ・ワン』は依頼と学業をこなしながら、いつものドタバタ劇を繰り広げていた。

 王都では、王国軍と魔王軍の睨み合いは続いているが、ディアブロたち魔王軍幹部が防衛ラインを完璧に再構築したことで、戦線は膠着状態に陥っていたのだ。


 そんな、嵐の前の静けさの中。王立学園に、唐突なアナウンスが流れた。


『――来週より三日間、延期していた恒例の『創立祭スクール・フェスティバル』を開催する! 生徒諸君は、日頃の鍛錬の成果を発表し、大いに英気を養うように!』


 それは、決戦を前にした学生たちの、ガス抜きであり、国威発揚のための、お祭りだった。だが、そんな大人の事情などお構いなしに、学園中が沸き立った。


 ◇


 放課後。一年生・総合クラスの教室。ホームルームでは、出し物を決めるための熱い議論が交わされていた。


「やっぱり『武闘大会』だろ! 俺たちの強さを見せつけるんだ!」

「バカね。女子もいるのよ? 『演劇』の方が平和でいいわ」

「いや、予算を考えるなら『展示』が一番安上がりだ」


 騎士科、魔術科、商業科の混成クラスであるため、意見がまとまらない。担任教師が困り顔で立つ中、一人の男子生徒が声を上げた。


「なぁ、ここは『アベレージ・ワン』の意見を聞こうぜ!」

「あ、確かに!」

「魔人幹部を撃退して、Aランク任務から生還した強運にあやかりたいもんな!」


 クラス中の視線が、教室の後方に座る四人――シノン、アリアナ、エルザ、リリィに集中した。


「えっ? わ、私ですか?」


 シノンが目を丸くする。


「……ふむ」


 リリィが、電卓を片手に立ち上がった。


「クラスの予算を最大化し、かつ全生徒の『特技』を活かせる出し物……。さらに、外部からの富裕層をターゲットにした高単価ビジネス……。結論は一つです」


 リリィは、黒板にチョークで大きく書いた。


『執事&メイド喫茶』


「き、喫茶店か……?」

「ですが、ただの喫茶店ではありません」


 リリィの眼鏡が光る。


「騎士科の男子は警備と力仕事、女子はホール。魔術科は演出と空調管理。商業科は宣伝と会計。そして……」


 リリィは、隣のアリアナを見た。


「総監督は、エインズワース家のアリアナさん。彼女の指導による『完璧な礼儀作法』を売りにした、王都一の高級店を目指します」

「わ、私!?」


 アリアナが驚くが、すぐに貴族の血が騒いだのか、スッと背筋を伸ばした。


「……悪くないわね。我がクラスの品位を示す、良い機会ですわ」

「おー! なんか面白そうだぞ! 私は何だ? 用心棒か?」


 エルザが身を乗り出す。


「エルザさんは……ウェイトレス兼、トラブル処理係ですね」

「おう! 任せろ!」


 こうして、クラスの出し物は、アベレージ・ワン主導による『高級・執事&メイド喫茶』に決定した。


 ◇


 それからの準備期間は、まさに戦場だった。だが、四人だけが戦っているわけではない。クラス全員が動いていた。


「そこの男子! 背筋が曲がっていてよ! お客様への礼は角度30度!」

「は、はいっ! アリアナ様!」


 アリアナが、鬼の教官となって男子生徒たちに所作を叩き込む。


「こらー! つまみ食いするな!」

「むー! 毒見だ、毒見!」


 エルザが、厨房から盗み食いしようとする男子を取り押さえている。


「資材搬入、こっちですぅ。……ふふふ、安く仕入れられましたね」


 リリィは、商業科の生徒たちを指揮し、マモン直伝の交渉術で、最高級の茶葉や食材を格安で調達していた。


 そして、シノンは。


「シノンちゃん! パンケーキの生地、もうなくなった!」

「追加、すぐ作ります! 『基礎』高速攪拌!」


 厨房で、他の料理担当の生徒たちと共に、信じられない速度で仕込みを行っていた。


「すげえ……。シノンちゃん、ハンドミキサーより速い……」


 クラスメイトたちが、畏敬の念を抱きながら作業を手伝う。忙しいけれど、充実した時間。シノンは、クラスのみんなと笑い合った。


 そんな準備の合間。四人は、休憩スペースに集まり、ひそひそ話をしていた。


「……で、招待状は送ったの?」


 アリアナが、顔を赤らめながら聞く。


「ええ。マモン様には『VIP席』の予約を入れておきました」


 リリィが手帳を見せる。


「師匠にも言っといたぞ! 『肉用意して待ってる』って!」


 エルザが笑う。


「シノンさんは?」

「あ、はい。……さっき、返信が来ました」


 シノンは、魔力石(コールストーン)を握りしめた。『ディアブロさん』へ送った、『私の作ったパンケーキ、食べに来てください』というメッセージ。


 その返信は、短く、しかし彼らしいものだった。 『……ほう。私の舌を満足させられると?  いいだろう。愛しい『恋人』の手料理だ。楽しみにしている』


「……来てくれる、みたいです」


 シノンが、はにかみながら報告する。


「よかったですね!」

「ふふふ。当日は、私たちで『特別席』を確保しておきましょう」


 リリィが、配置図の隅にある、衝立で仕切られた豪華な席を指差す。


「クラスのみんなには、『超・重要顧客』が来ると伝えてありますから」


 ◇


 そして、学園祭当日。快晴の空の下、王立学園の門が開かれた。


 1年総合クラスの模擬店『休息の剣(レスト・ソード)』は、開店と同時に長蛇の列ができていた。アリアナの指導による完璧な接客、リリィの仕入れによる高級食材、そしてシノンの『基礎』調理術による絶品スイーツ。評判が評判を呼び、店内は戦場のような忙しさだ。


「いらっしゃいませ!」


 シノンも、厨房からホールへ出て、配膳を手伝う。クラスメイトと連携し、オーダーをさばく。まさに、普通の学園祭だ。


 ――その時。  教室の入り口の空気が、ふわりと変わった。騒がしい喧騒が一瞬だけ遠のき、一種の『威圧(オーラ)』が流れ込んでくる。


「……ほう。ここか」


 受付をしていた男子生徒が、ガタガタと震え出した。


「ひ、ひぃ……! な、なんだこの人たちは……!?」


 入り口に立っていたのは、四人の男たちだった。先頭に立つのは、漆黒のジャケットをラフに着こなした、絶世の美青年(ディアブロ)。その脇には、白衣のインテリ風の男(グレイ)ワイルドな男(ゼスト)高級スーツの男(マモン)


「お、お客様、何名様で……」


 男子生徒が腰を抜かしそうになった時。


「――お待ちしておりました!」


 奥から、アリアナ、エルザ、リリィ、そしてシノンが駆け寄ってきた。


「ディアブロさん! みなさんも!」


 シノンの声に、ディアブロの纏う空気が、ふっと柔らかくなった。


「うむ。……来たぞ、シノン」

「えっ? シノンちゃんの知り合い?」

「あんなイケメン……」


 クラスメイトたちがざわめく中、リリィがパンと手を叩いた。


「皆さん! こちらが、例の『超・重要顧客(VIP)』様です!  粗相のないように!」


 その一言で、クラスの空気が引き締まった。彼らが何者かは分からない。だが、アベレージ・ワンが敬意を払う相手だ。タダモノではないことだけは理解した。


「こちらへどうぞ」


 四人の『VIP』は、クラスメイトたちの畏敬の眼差しの中、奥の特別席へと案内された。



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