25、共に生きること
ヘラもついでだからと参列することになり、奥のスペースに戻った。
式が再開されると、アスがローダのパーツを外し、背中を開いた。
BISを収めるハッチを開くと、今度は専用の器具でBISを外しにかかった。朝から慌ただしかったのはこのBISを付け外しするための器具を持ってくるためだったのである。
「さようなら、ローダ。」
BISを外して、村の奥から運んできた空き瓶の中に入れ、祈った。
「彼と一番近しかったのは君だ。好きなようにするといい。」
周りのプラモたちも、フリーに同意する。
「ありがとうございます。」
アスは、ローダのパーツを外し、自分の体にくっつけた。
頭に装甲のパーツを付け、腕にも装甲パーツをいくつかつける。胴体にも少しずつ、装甲板を付けた。
「あれ? 変わるのって、怖いんじゃ……?」
リルの思わず漏らした疑問に、フリーが小声で答える。ノイズ交じりの小声を聞き分けるのは少し骨が折れたが、機械の耳ならどうにかなる。
「ああ、それは、入れ替えて自分のパーツで生活する誰かがいるときさ。今はそうじゃない。彼女は彼女だけのものだ。」
アスが元のパーツと彼のパーツを混ぜていくのを見ながら続ける。
「彼女は、ほんの少し変わったんだ。僕らのパーツは、一番大切な人からの贈り物。でも、同じくらい大切な相手ができたんだ。」
ヘラは彼女を、食い入るように見つめていた。
「パーツを付ければ、一緒に生きていける。居なくなっても、傍に感じられるんだ。彼女も、他の近しい者たちもね。」
よく見ると、アス以外にも地の色とミスマッチなパーツを付けたプラモが何人かいる。彼らもそうして
パーツを受け継いだのだろう。
「一緒に……」
「まぁ、好きな相手と人生を共有したいのさ。君も、わかるかい?」
フリーはヘラの右腕を見ていった。
ヘラは右腕を抱く。
「まぁ、少しはわかります。」
ヘラ自身、顔も知らないがシザーの事は憎からず思っている。彼と景色を共有するというのは悪い気はしない。ずっと一緒にいた相手ともっと一緒の景色を見ていたいのは自然だろうと思った。
「ねぇ、リルと、そのお友達さん。」
おもむろに彼女呼ばれて、二人は彼女に近づく。
「お邪魔でなければ、彼を外に連れて行ってあげて。」
そういって、アスはローダのパーツのいくつかを差し出してきた。
「え、でも……」
躊躇する二人に、彼女は懇願する。
「お願いよ。彼にもう一度、外の景色を、人間とみる景色を、見せてあげたいの。」
「じゃあ……」
「そうさせてもらいます。」
二人は黄土色の装甲パーツといくつかの武装を受け取った。そして、自分のジョイントカバーを外す。
BCG系は素肌のように見える部分にも、ジョイント用の穴にカバーをかぶせている箇所がある。普段はPVCが結合して滑らかに見えるのだ。
ヘラは左腕の肘から先にタイヤに似たガトリングを付けた。銃身の先端をゴムタイヤで縁取りしたような感じだ。そして、ガトリングの根元に銃身を覆うような大きなシールドを付ける。
リルは足首のジョイントを開き、廃材だったというプラ棒などのパーツを借り、足の横にホイールを付けた。
「今度ランナちゃんに頼んでホイールを切り替えできるようにしてもらおう。」
足の横につけたはいいが、まっすぐ立つのが難しくなり、いささか邪魔であった。
「じゃあ、もっと組み立てを上手くなってもらわないとダメですね。」
そういうヘラも、ガトリングをうまく取り付けられていない。噛み合わせが悪く、このままでは回転できない。
チギルと仲直りして、手直ししてもらえたらとヘラは思った。
そうして、ローダのパーツがあらかた皆に渡り、ガラクタ村の葬式は終わった。
「さて、それじゃ今度こそ帰りますよ。ランナさんも外で待ってます。」
入口から出ようとするヘラとリルに、葬式のために集まった住人たちがそのまま見送りに来たので、結構大げさな見送りになってしまっている。
「えっと、みなさん、大変お世話になりました。」
リルが頭を下げると、足につけたホイールのせいで前につんのめった。
「なぁに、またいつでも遊びに来るといいさ。」
「あなたたちのマスターと、元気でね。」
村の皆に手を振りながら、、二人は外に出た。
コンテナの上を歩き、手すりの支柱が抜けた階段に飛び移り、彼女たちは倉庫を後にした。




